【2巻発売中】TSしたから隠れてダンジョンに潜ってた僕がアイドルたちに身バレして有名配信者になる話。~ヘッドショットロリがダンジョンの秘密に迫る配信~   作:あずももも

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503話 せめて、次の世代だけでも

「……お爺様、夕食です。……コンビニのおにぎりくらいしかありませんが」

 

「良い。握り飯は活力の源よ」

 

近所のコンビニ店長――酒屋から転職し、苦労していた友人の顔を思い浮かべながらぺりりと外装を取り、ぱりりとほおばる。

 

――ちと小さいが、守るべき人間は多い。

 

老体にはちょうど良い量だの……医者からも高血圧で叱られておったから、ちょうど良い。

 

「……保存食は」

 

「はい。このフィールド――結界は、ちょうど、合併前のこの町の領域を囲むように展開。外には出られませんでした。中にはコンビニとスーパーが、合わせて20軒ほど――冷蔵庫が使えませんが、少なくとも明日までの食事には不足しないかと」

 

「車は、キーを持って避難してきた人たちから預かっています。いざというときには使ってほしいと」

 

「市役所、及び学校の保存食は――連絡が取れている範囲で、ざっと1週間。……水道が復旧しない場合、それが限度かと」

 

「相わかった。お前たちも休め」

 

四面楚歌……か。

 

国を焼いてきた南蛮の次は、まさかの妖怪の逆襲。

恐らくはそれが――儂の、最後の景色になるだろう。

 

しかし。

 

「それでも――女子供。より戦況が悪ければ、子供だけは。……なんとか、繋げたいのぅ」

 

子供さえ。

 

子供さえ生きていれば――必ずこの町は、国は――復活できる。

 

たかが子供とはいえ、中には聡い子供も居る。

親が居なくなれば、子供らは自然、大人となる。

 

その子らが――必ずや、この世界を元通りに立て直してくれる。

 

――そう、信じなければ。

 

この、剣を振り続けて岩のようになった掌は――なんのためにあったのか、分からなくなってしまうのだ。

 

 

 

 

――ずぅん。

 

「……敵襲か」

 

「お、お爺様……それが!」

「ま、まるで甲冑と槍で固めた軍隊のような……!」

 

「――面妖な」

 

朝、それとも深夜。

 

地響きに飛び出した儂らの前には――整列する歩兵の「軍団」が居った。

 

犬、猫、狸、狐――凡そ妖怪に近い存在が人間のように直立し、人間のように片手に槍を持ち、人間のように甲と甲冑を身に纏い――人間のように、大将に率いられている。

 

「――クハ。まさかこの歳で、よもや百鬼夜行を目にするとはな」

 

「コボルト、ケットシー……亜人系モンスターでしょうか」

「そして上空にはハーピーや鳥系モンスター……これは……」

 

上空には、死体をついばまんと待ち構えているよう。

 

目の前の軍団は、少なく見積もっても数百。

 

「……師匠としての、最後の命令ぞ。道場直下の防空壕跡へ、道場に避難している子供らを押し込めよ。余力があれば、他の避難所でも地下室や屋根裏――通気口。一人でも多くの、子供を。声を潜めるよう、言い含めてな」

 

「――――――畏まりました、お父様。いえ、我が師匠」

 

「師匠、どうかご無事で。……免許皆伝、僕はまだお爺様に頂いておりませんから」

 

――にぃ。

 

儂の口が、ひとりでに笑う。

 

「……子供らをこの後に遺せたら、あの世で渡してやろう。現物は渡せぬが――それで良かろう?」

 

「――はい。楽しみに、しております」

 

今生の別れを済ませた二人は、一目散。

 

……ああ。

 

儂の子孫は、立派な男子に育った。

 

それらを死なせてしまうのだけが、心残りではあるが――まぁ良い。

 

武人とは、そういう物よ。

 

「……さて、これでもう思い残すことはない」

 

儂は――どうやら老いぼれるも、妖怪にとって多少の脅威になる程度には鍛えられたらしい。

 

大通りの先で様子を見ている敵の指揮官――あれは獅子か――は、じっと大ぶりの鉈を構えつつ、部下に突撃を命じない。

 

「――名乗りの猶予を与えてくれたことに、感謝する」

 

そう声を張り上げると、雑兵どもが戸惑いの声を上げる。

 

「儂の名は――神威権造。貴様らが後少し遅ければ、前に立つこともなく灰となっていた老いぼれよ。さぁ――――――来るが良い」

 

 

 

 

乱戦。

 

指揮系統も何もなく――やはり妖怪はしょせん妖怪、名乗りも返さなんだわ――突撃してくるのに合わせ、よせというのに後ろから飛び出した門下生たちが、敵軍と衝突。

 

出来の良い者も悪い者も――老いて一振り二振りが限界な者、須くに儂が父から、先祖から教わった剣を振るう。

 

そして妖怪どもは予想よりも硬く、強力で――一方で、鎧や兜は貧弱。

 

しかも元は獣とあってか動きは鈍く、ためにたやすく討ち取ることができる。

 

――――――が。

 

「……そうか。刀は、せいぜいが数人が限度だったか。ならば」

 

父譲りの日本刀は、すっかり切れないなまくらと化し――投げ捨て、途中からは奴らの槍や刀を奪い、それらを使い捨てての戦闘。

 

……彼奴ら、妖怪のくせになかなかにいい獲物を持っているではないか。

 

「しかし……数が!」

「あれは召喚陣……やはり魔法での侵略か!」

 

序盤は圧倒的に優勢で、犠牲も少なく敵軍は壊滅――しかし次々と妖術により同じような弱さ、だが数が秒ごとに増えていき。

 

「……囲まれたか」

 

「ですが、少なくともこの周囲の避難は……!」

 

「! 小学校から照明弾。……お爺様の言いつけ通りの避難は――完了、したようです」

 

「……そうか」

 

増殖しきるも止まらない妖怪どもは、もはや大通りを埋め尽くし――あふれた個体は囲まれている儂らを無視して、さらに先へと進軍していく。

 

「……どうしますか」

「ふっ、決まっておろう」

 

儂は、懐の小刀を取り出す。

 

「1匹でも多く――道連れよ」

 

「お供します、お父様」

「お爺様。渡し船で――また、お会いしましょう」

 

最後の任務を終え、しかも戻ってきてくれた孫と息子が――まだ息のある門下生たちが、覚悟を決める声を上げる。

 

――――――願わくば。

 

願わくば――どうか。

 

人類の敵たる妖怪どもが、あれだけの加護を――悪魔からの、冥界からのそれを得ているのだから――せめて。

 

「――――――神々よ。我らに、加護を――」

 

そう――神仏に祈願をしようと、軽く目をつむる。

 

――そんなものは存在しない。

 

在ったらば――あのときに。

 

知り合いをことごとく焼いたあの地獄で、当に来てくれていた。

 

だが、居なかった。

 

居ないのだ。

 

無いのだ。

 

だが。

 

それでも――この身を、一匹でも多くの妖怪を屠るまで動かし続けるため、燃やし尽くすために。

 

儂は、祈った。

 

子供の頃以来に――――――祈った。

 

「……ふっ」

 

祈ったが、状況は変わらぬ。

 

当然だ、そんなものなどは――――――

 

「―――――だってよ! アルテ様っ! アレク、暴れるぞ!」

「うん!」

 

――唐突に聞こえた、子供の声。

 

それに、祈りのために閉じていた目を開けると――――――

 

「――――――――――な!?」

 

「子供」の声に、思わずで周囲を――いつの間にか、見たことのない――南国生まれと思しき、黒髪の少年と少女が居た。

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