【2巻発売中】TSしたから隠れてダンジョンに潜ってた僕がアイドルたちに身バレして有名配信者になる話。~ヘッドショットロリがダンジョンの秘密に迫る配信~ 作:あずももも
「ノームさまが飛び込ませた理由が、これなんだ……えーいっ!」
「な……な!?」
子供!?
何故ここに!?
この町の子供らは、全て万が一のために備えていた地下に匿ったはず――――――
「よっ……と。飛び出す直前にでかいリリからの土産だ爺さんたち!」
じゃらっ。
少年が――片腕で抱えていたらしい細長い何かを、ばらまく。
そのうちの一振りが儂に向けて投げつけられ――その鞘を、反射で受け取る。
「か、数は少ないですけど、深い迷宮でのものなので……使ってください!」
少女も同じように、十数の武器を足元へ投げて寄こす。
……今考えるべきことではないが……近ごろの子供は、ちぃとスカートが短すぎぬかのう……?
男子の方も、ズボンがやけに短いし……。
「な、何だ!?」
「剣や弓矢、狙撃銃……!?」
「た、助かる!」
「ま、待――――――――――」
「待て」と言う間もなく、その子らは儂らの足元を駆けて行く。
「あたしは左っ!」
「分かった!」
その二人は、儂が腕を伸ばす前に――
「キューっ!?」
「ニ゛ャッ!?」
――明らかに良すぎる切れ味の小刀で、最前に迫っていた妖怪どもを削り。
ひゅん、ひゅんっと、彼の腕が空を切るように――しかし確実に妖怪を倒していく。
後ろに控える彼女が――ひゅん、ひゅんっと、小さな弓――洋弓に幾本もの矢をつがえ、立て続けに放っていく。
「黒き炎!」
「黒き氷!」
「ワオン!?」
目を合わせることもせずに、同時に妖術――あるいは法術を、掛け声と共に発動。
……あれは、戦いに慣れ切った武人そのもの。
剣術、体術そのものは――素人。
しかしながら、身体能力――膂力、そして超常の力が尋常ではない。
そして、素人の動きを無理やりにその力で修正している。
――見た目通りの存在ではない。
あれは、正に神の遣わせし武威、そのものなのだ。
「あとは連打しつつ、まずはこいつら守らねぇとな!」
「い、位階――れべるだっけ、は、そんなに高くないみたいだからなんとかなるね……!」
彼ら――いや、その天の使いは、舞うように包囲を解かせていく。
「美しい……」
その姿は、神々が我らを鼓舞してか、美しい褐色の肌をした、短い髪と長い髪の少年少女の姿。
――これが「この世の物ではない」というものか。
「……すごい……」
「……俺たちも」
「ああ……!」
儂と同じように気を取られていた仲間たちも、次々と勇気を分け与えられ、配られた獲物に手を出す。
――儂らが必死に1匹を屠る時間で、10匹を無傷で。
まさに、一騎当千。
――成る程。
人は、見た目に依らない。
ましてや神々、天使をや、じゃな。
「――お爺様!」
「今が好機です!」
「……ああ」
――あれが、神仏の遣わせし存在。
きっと、そうに違いない。
ならば。
「――天は、我らを見放しては居らぬ!」
「「「ウォ――――――っ!!」」」
二人は息切れを起こすこともなく、まるでただ校庭を駆け回っているような顔で敵を捌いていく。
その方向が、町の外へ向いているのなら――。
「――避難所へ向け、転進! 救われたこの命、彼方で怯えているはずの守るべき命のために捧げ――――――」
そう、言おうとした。
しかし、上げていた声が――まるで窒息したように、止まる。
体が、重い。
魂が、重い。
まるで空気そのものが質量を持ったかのよう。
儂は、空を見上げる。
真っ暗だったはずの、空を。
「――――――――――――」
それは、畏怖。
畏敬。
存在。
それは、邪悪と真逆の存在。
神々。
仏。
それと同等の、天上の存在。
長い人生で数度だけ在った――あるときは試合で、あるときは山籠もりの最中に、あるときは異国の大地で修行しているときに、またあるときには洞窟の中で、一瞬だけ触れかけた存在。
それが――――――――――今は、上空に鎮座している。
いや――向こうから、近づいてきている。
「あ……あ……!」
かろうじて周囲の敵を追うと――奴らもまた、動きが止まっている。
「やっ! はっ!」
「やぁー!」
――その存在が遣わせし子らは、それらを平然と狩る。
――何故か、その瞬間から血と臓物ではなく、きらきら燦然と輝く宝石が宙に舞い始める。
宝石が、からからとアスファルトに叩きつけられる音が響く。
それ以外の音は、存在しない。
それ以外の動きは、存在しない。
――――――――――ああ。
空が、光る。
空が、割れる。
闇に包まれていた世界が――そうだ、茶飲み友達の和尚の寺にある掛け軸にあるように、天からの光に照らされている。
「あれが……神仏。人生の最後に、この国に住まうそれらの1柱だけでも――――――――――」
いや――2柱。
神が2柱も――この世に、地上に、降臨されたのだ。
敵は、それほどまでか。
「――ホーリー」
「――えびる」
空が、天が、声を奏でる。
涙が、勝手に頬を伝う。
魂が、全ての感情を震わせている。
それはまるで鈴が鳴るような――金と黒の鈴が、互いに共鳴するような――生まれてよかったと感激する音色。
「「――――――――――ジャッジメント」」
その光が無数に別れ――旭日の光のように、降り注ぐ。
それに触れた妖怪どもが――溶解していく。
――ああ。
ジャッジメント――「審判」。
「……ああ、ああ。……ああ……」
そうだったのか。
人同士の――醜くも世界にあふれている、意味のない戦争や殺戮などではなく。
ただの、地上の動物同士の生存競争は自然の摂理と、静かに見守り。
神々は――神々は、かつて神話から姿を消した妖怪や悪魔などから、人を守るためだけに――――――――――。
その瞬間、世界はことごとくに照らし出され――――――――――次に儂が目を開けたとき。
そのときには、妖怪どもは――ことごとくが輝くだけの、ただの石ころに変えられていた。