【2巻発売中】TSしたから隠れてダンジョンに潜ってた僕がアイドルたちに身バレして有名配信者になる話。~ヘッドショットロリがダンジョンの秘密に迫る配信~ 作:あずももも
「よし、交代だ! しっかり休んでいてくれ!」
「スポーツドリンクとおにぎり、要る方はどうぞー!」
「しかしあの子供たちすごいよな……俺たちが数人がかりのを、豆腐を切るみたいに撫で切りにして回って……」
「なにしろ女神様の使徒様だからな」
「ロリジト目女神様! 慣れていない時期のものの方が価値が高いので、どうかサインを!」
数人でモンスターを囲んで安全に討伐、その傍らで待機を兼ねた休憩を十数人、その後ろにはごはんとか運んでる町の人たち。
これなら確かに大丈夫そうだね。
アリスさんとアレクくんも戦ってくれてるし、ノーネームさんも居るし、僕も居るし――万が一の心配は、とりあえずは無しかな。
あ、でも、いつの間にかどっから取りだしたらしい色紙はちょっと……。
【人外の上位存在にサインをねだる若者】
【これが今の世代か……】
【それは今の世代に対する風評被害です】
【いくらなんでも酷すぎる】
【訴訟も辞さない覚悟だ】
【草】
【ハルちゃんが穏やかで良かったね……】
【ハルちゃんは何も気にしないの間違いでは?】
【草】
【まぁハルちゃんは怒るときは怖いから……】
くいくい。
「はる」
「え? ノーネームさん?」
服を引っ張ってくる感覚と、あんまり名前を呼んでこない彼女の声が新鮮で、思わずに振り向く。
――そこに居たノーネームさんは……無表情の中に――悲しさ?
「さくてき」
「すきる」
「? 索敵? ONにしてますけど」
「はんい」
「せまい」
「え? いや、僕はこの体になってから――――――……、えっ」
――――――ぞくっ。
血の気の引く感覚。
久しぶりの感覚。
――幼女になってから、無意識でも超広範囲に発動できるようになってた、索敵のスキル。
それはもう、初日あたりから僕を中心に町全体を――数キロくらいは余裕で見ることができていたし、ダンジョンに潜ったりし続けて羽が生えてちょっと大きくなってたときは、地平線の彼方まで把握できてた。
なのに。
「……1キロくらいしか、観測してなかった? え? その外から、すごく強いのが来てる……?」
「ん」
「……ボスとかですか?」
「ぼす」
「でも、なんで僕……見えて……?」
【!?】
【ふぁっ!?】
【ハルちゃんって索敵の鬼だった気が】
【だよな……?】
【ダンジョンでも下の階層とか余裕だったし】
【異世界のダンジョンとかでもすごく下まで見てたよな……?】
【ああ、下の階まで光る矢で攻撃したりすごかったのに……】
【ノーネームちゃん……? ハルちゃん、どうしちゃったの……?】
……ぐっと力を入れて――かつてはメガネなしだとよく見えないものを見ようと目を細めてたあの感じにして、ようやくに町全体が確認できた。
けども、力を――魔力を込めないと、とたんにこの学校から歩いて15分20分くらいまでしか、見えていない。
――それに、この瞬間も校門に向かって突撃してきてるらしい強いやつも、どのくらい強いのかが今までみたいにはっきりとは分からない。
「………………………………?」
わきわき。
なんとなくでにぎにぎしてみた僕の両手は――なんだかちょっと、小さく見えた。
◇
「ボスモンスターが来たぞー!」
「女神様たちによると、こいつを倒せば直にここは通常の空間に戻る! 非戦闘員は校舎の上の階へ避難しろ!」
「遠距離攻撃や魔法が使える人は2階の、安全なところから――」
――ずしん、ずしん。
「GAAAAA――――!!!」
「……トカゲ?」
「とかげ」
校門まで来て――めきょりんちょと鉄製の柵を踏み抜いたのは、鎧を着て二足歩行で、刀と鎧を着けている――。
「イモリ?」
「いもり」
「それともヤモリ?」
「やもり」
「どっちなんでしょう」
「すみびやき」
「? ノーネームさん、お腹空いたんですか?」
【朗報・ノーネームちゃんが炭火焼きをご所望】
【速報・スーパーに人が殺到し始める】
【悲報・うなぎ屋、在庫がない】
【草】
【草】
【もしかして:ノーネームちゃん、Gにお怒り】
【そらなぁ】
【ハルちゃんを攫って子供を……うぅ……】
【胸が痛い】
【苦しい】
【まるで愛する家族が蛮族に襲われているような気分だ……】
【おのれ爬虫類!】
【草】
【魔王戦の残滓で草】
【ずいぶん前のことでそこまで凹むなよ草】
【未遂だったしなぁ】
【ノーネームちゃんが助けに入ったからね】
【ずいぶん前(1年数ヶ月前】
【あっ】
【おろろろろろろ】
【この1年半、お前らはなにしてた?】
【え、ずっとハルちゃん見てたけど?】
【もちろんそうだろ?】
【当然だよね?】
【その程度じゃメンタルに影響はない、下がってろ焼きイモリ】
【草】
ずしん、ずしん。
「……でっかいですね」
「でかい」
「ほえー」
「ほええ」
それは、校舎の2階に届く背丈。
……あー、なるほど。
普段はダンジョンだから感じないけど、モンスターたちってそもそも大きいもんね。
普段は人工物がないから分かんなかったけども、こうして町中だとよく分かる。
「……よし、行くかアレク」
「うんっ……!」
「わ、私たちはバリケードから避難! あんなのゾンビじゃないもん! 上からの戦闘は指揮するわ!」
「儂らも、露払いなら役に立てるかのう?」
「ええ、破壊された校門からなだれ込んでくるその他の個体を!」
――そうして、ボス戦が始まる。
……あれ?
そういやリリさん、どこ行ったんだろ?
あの子、最近神出鬼没な面があるからなぁ。
いや、どっちかって言うと、ずいぶん前に別れてから久しぶりに会ったらなんかはっちゃけてるって言うか……ほら、すんすんってのも前に比べたら遠慮とかなくなってるし……。
まぁいいけどさ。
どうせみんな嗅いでくるんだから。
「……すんすん」
僕、そんなに臭いかなぁ。
この体、なんか甘い匂いするだけなんだけどなぁ……。
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