【2巻発売中】TSしたから隠れてダンジョンに潜ってた僕がアイドルたちに身バレして有名配信者になる話。~ヘッドショットロリがダンジョンの秘密に迫る配信~   作:あずももも

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21章 11年前とおばあさんたちin合衆国
523話 僕の奥底に沈んでる記憶 その6


――るるちゃんを元気づけてたら、すっかり懐かれた僕は――気がついたら1時間くらい話を聞いていた。

 

学校でのこと、家でのこと……良いことも悪いことも。

 

たぶん、普段は話せないんだろうな。

 

それにどうせ遅刻は確定してるし、1時間サボるのと2時間サボるのはそんなに変わらないし。

 

とりあえず、僕の携帯に学校か――それとも真面目なだけが取り柄だったはずの息子がサボってるって聞いて怒り狂った母さんからの電話がかかってくるまでは、もうこのままでいいや。

 

それに、なんか生暖かすぎる目を向けてきてたおばちゃんとかおじいさんたちが――なんかもう貢ぎ物みたいに僕たちへジュースとかお菓子をくれるようになってたし。

 

だから、僕も珍しく初対面の相手と話し込んでいたんだ。

 

そうしたら――空が、変わった。

 

「な、なんだ!?」

「何が起きているの!?」

 

「み、見ろ、空が……!」

「ねぇ、スマホ繋がんないんだけど!?」

 

「……はる……」

「大丈夫だよ、るるちゃん。僕がついてるから」

 

もはや親戚の子みたいな感覚になったるるちゃんを――震えながらしがみついてくる彼女を抱き返しながら、慌てざわめく人々を観察する。

 

「……こわい……」

「大丈夫。大丈夫だから」

 

――見た感じ、みんなのスマホが使えなくなっている.

 

つまり、通信が途絶している。

最寄りの基地局だけか、それとももっと先までか。

 

電車も気がつけば行き来が止まっていて、構内でのアナウンスが――途中から止まり、駅構内の電気も消えている。

 

……発電所になにかあったか、それともテロか。

 

特に揺れとかもなかったし、アラームとかも鳴ったりしなかった。

 

そして、駅周辺では「空が暗くなるまで、何も異変を知らせるものがなかった」――つまりこれは、たった今起きたことのはず。

 

「………………………………」

 

空が、どす黒く染まっている。

 

まるでゲリラ豪雨直前になって空を一面に覆ってくるような、真っ黒で低い雲。

 

見るだけで本能的な恐怖を覚えるし、冷たい風も吹き付けてきて雷とかを降らせてくるもの。

 

そんな感じになっている。

 

……これのせい――とは限らないけども、関係はあるだろう。

 

「……るるちゃん、駅に入るよ。頑丈な建物の中に避難。避難訓練とかで、習ったよね?」

「う、うん……っ」

 

僕は彼女の手を引き、バスターミナルから歩き出す。

 

――けど、これは一体何が起きてるんだろう。

 

ちらりと見た僕のスマホも――電波を受信していなかった。

 

「電気、水道、ガス、ネットが全滅だと……!?」

「何!? 何が起きてるの!?」

 

「落ち着け!」

「空もあんな感じで、まるで夜だしな……」

 

状況は、悪くなるばかり。

 

いや、状況が悪いっていう事実を確認しただけだ。

 

「落ち着きな! ……子供も居るんだよ。気持ちは分かるけど、せめて叫ぶのだけはやめな」

 

――すべての人が、混乱している。

 

それはそうだ、なにしろこの状況は――まず、未曾有の事態。

 

緊急アラームとかすら来ず、駅の人たちですら非常用の通信設備が使えないときている。

 

「……おばさん。働いてる人用のバックヤードとかありますか」

 

「! そうだね、お兄さんとお嬢ちゃんはこっちに来な」

 

――大人といっても、中身は僕たち中学生とそんなに変わらないという。

 

ただただ、年月を重ねて経験を積んで、あと疲れやすくなるからちょっと大人になった気がするだけ。

 

そういうのを本で読んだし、創作物でもこういう非常時には誰だってパニックになる。

 

……そうだと知っていても、僕だって心穏やかじゃない。

 

きっとみんな、同じなんだ。

 

「……はるぅ……」

 

ただ、僕には。

 

すがりついてくる――なんの取り柄もない平均的な中学生男子の僕よりも弱い子が、怖がりながら助けを求めてくるから。

 

だから、このオバサンと同じく――この子に心を支えられているだけなんだ。

 

 

 

 

駅の2階、狭い一室。

 

ロッカーとかテーブルとか、ドラマで観たような感じの場所。

 

ドアを閉めれば、完全ではなくても下みたいに混乱する人々の――パニックになる人とかの声が、ほとんど聞こえない。

 

静かな空間。

 

「ちょっと落ち着いた?」

「うん……」

 

――電気が消えたといっても、直前まで温められていたものは、すぐには冷えない。

 

「あったかい……」

「急に冷えたもんね。たくさんあるからゆっくり飲んで」

 

るるちゃんにはあったかいジュースを、僕はちょっと見栄を張って熱いコーヒーを。

 

おばちゃんが「いいのいいの、大事ならみんなに配っていいって言われてるし、そうじゃなかったらおばちゃんがおごったげるから!」って、飲みものにお菓子をいくつか置いて行ってくれたんだ。

 

途中で駅の人たちもいろいろ持ってきてくれたし――みんな、弱い存在を見つけると、とたんに強くなれるんだ。

 

「……たぶん、急に発達した雲が発電所のある方向で、ここより前に雷でも落としたんだと思う。送電網が複数箇所で遮断――電気が来なくなって、だから電気もスマホも使えないんだ」

 

「そうなの……?」

「そうかもね」

 

分からないなりに、それっぽい原因を考えて話す。

 

人は、理解できないものほど恐れるもの。

だから「それらしい原因」が分かれば、とりあえずは落ち着けるもの。

 

……こんなことになるんなら、積ん読してる本の中にあった「都会で災害に巻き込まれたときにどうするか」って感じの本を読んでおくか、持ってくれば良かったな。

 

まぁいいや、家に帰ればあるんだから。

 

確かここは……っていうか、そもそも地図アプリが開けないから人に聞きながらになっちゃうけども、数時間歩けば家には帰ることができるはずなんだ。

 

理想はもうすぐにでも電気が復旧して事態が分かれば良いんだけどね。

 

「……はる」

「……テーブルの下に潜るよ。避難訓練と一緒だ」

 

かたかたと震えだした、部屋の中の小さなものから大きなもの。

 

……地震が原因なら、下で待ってた方が良かったかな。

 

やがて地響きとともに部屋中をひっくり返したような衝撃で、もう何も聞こえない。

 

――この駅は比較的新しいし、ロッカーだって当たったら痛い程度のはず。

 

だから僕は――この子を抱きしめていれば、最悪でもこの子だけはなんとかなるんだ。

 

 

 

 

そうして、次に気がついた僕らは――謎の洞窟の中に。

 

「ここ……どこ……?」

「………………………………」

 

僕たち2人だけで――うずくまっていたのを、発見した。

 

 

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