【2巻発売中】TSしたから隠れてダンジョンに潜ってた僕がアイドルたちに身バレして有名配信者になる話。~ヘッドショットロリがダンジョンの秘密に迫る配信~   作:あずももも

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524話 僕の奥底に沈んでる記憶 その7

「ここ、どこ……?」

 

「……るるちゃん。絶対にはぐれないようにね」

「う、うん……」

 

――僕は、理解した。

 

これは、災害でもテロでも天気の急変でも大地震でもない。

 

現代の科学文明に生まれ育ったからこそ否定してたつもりだった、超常の現象――神隠しか、それとも悪魔かなにかの襲撃か。

 

僕があまり読まない――ファンタジーとかバトルものの物語な展開。

 

それが、今、起きている。

 

――僕たちは、部屋ごと袋に放り込まれてシェイクされたような衝撃を受け――気がついたら、謎の巨大洞窟の中に居た。

 

2人だけで。

 

僕たちが必死に脚を掴んでいたはずのテーブルも、倒れてきていたはずのロッカーも――飲んでいたジュースの缶とかそこここに散らばってたはずのお菓子とかもなく、僕たち2人だけが何もない土の上に――うずくまり、抱き合っていた姿勢のままで居たんだ。

 

「広い洞窟。でも、真っ暗じゃない……壁自体が、光ってる?」

 

確認した事項を、声に出して確認する。

 

本で読んだ通りに――こういう場面になると動揺して震える手脚や声を無視して、冷静に観察し、認識する。

 

何しろ何も分からないんだ、せめて分かることだけでも声に出して再確認しないといけないんだ。

 

「あ、ほんとだ……」

 

「うん。じゃないと、真っ暗でなんにも見えなくって、もっと怖かったね」

「た、たしかに……」

 

「てことは、よく分からないけども、最悪の状況じゃないよね。最悪だったら、この広い洞窟でなんにも見えなくって怖かったはずだもん」

「……うんっ」

 

るるちゃんの声が、ちょっとだけ落ち着いてきた。

 

それに釣られ、僕の体もちょっとだけ落ち着いてきているのを感じる。

 

――うん、最悪じゃない。

 

だって、こんな場所にひとりぼっちでもなくって――この子もまた、ひとりぼっちで放り出されなかったんだから。

 

むしろ、幸運だ。

 

さて。

 

理由はともかく、ここに居るのは僕たちだけ。

 

年上で男で、頭でっかちで運動不足で目が悪いながらも中学生の僕と、年下の女の子で――「のろいさま」にいじめられているせいで僕なんかよりもずっと大変な数年を送っている子。

 

大人は、子供を守るもの。

男は、女を守るもの。

 

それは理屈とかはどうでも良い、「当たり前のこと」。

 

人間として、生物として当然のこと。

なら、今は僕がなんとかしなきゃいけない。

 

ひとまずは……うん。

 

「遭難したときは、あまり動かない方がいいってのが鉄則なんだけど……今回は例外だ」

 

「そうなの……?」

 

「うん。これが山とか森なら――山なら下じゃなく上に行かなきゃいけないとか、森なら足元が危険だって理解してる人じゃないと、その場から動くのは自殺行為なんだ。そういうときって怖いから動きたくなるけど、ぐっと我慢するんだ。覚えておいてね」

 

「う、うん……」

 

「で、僕たちが不思議な力で飛ばされたここには、他の人たちは居ない。しかも、どう見ても普通の場所じゃない」

 

見回せば見回すほどにスケール感と方向感覚が狂いそうな、巨大な洞窟。

 

なのにそこまで恐怖を覚えないのは、きっと、部屋の隅までがぼんやりとでも見えているから。

 

これが真っ暗だったり、隅の方が真っ黒になっていたら――本能的に怖くて動けなくなっていただろう。

 

「なら、疲れすぎたりこの場所が分からなくならない範囲で移動して、他の大人に合流しないと。……ほら、さっきの優しいおばさん、また会いたいでしょ? 僕たちがここに来たんだから、きっと彼女たちも近くに居るよ」

 

「……うんっ! お礼、まだ言ってなかったもん!」

「そうだね。さっきはありがとうって、ちゃんと言わないとね」

 

こういうときに何もすることがないと、不安ばかりが募る。

 

それも含めた上での判断だ。

 

……博打になるのかどうかなんて、誰にも分からない。

 

少なくとも子供2人――甘やかされて育った中学生が大人やるしかない状況よりは、ずっと良いはずだ。

 

タイムリミットは、これからさらに状況が悪くなるか、るるちゃんがパニックになっちゃうまで。

 

あとは――いや、今は動こう。

 

水と食料の問題は、その後の話だ。

 

「僕、ゲームとかは少しやるんだ。こういうときは、なるべく声を潜めて忍者みたいに抜き足差し足で、こそこそ行くんだよ」

 

「……なんかおもしろそう」

 

「だよね。よし、なら壁沿いに隠れながら移動してみよう。潜入ミッションだ」

「うんっ」

 

せっかく笑うようになってたのがまたへの字になっていた、彼女のお口。

 

それがまた――遊びになったからか、ちょっとだけ上向いていた。

 

 

 

 

「……スライム?」

「スライムだね」

 

「あっちは、ウサギさん?」

「うーん、角が生えてる気がする」

 

潜入ごっこをしてしばらく。

 

僕たちが最初に居た場所――大部屋とでも表現しよう――からは何本もの狭い通路が延びていた。

 

そのひとつに――道中で見つけたいい感じの手頃で握りやすい石を何個か2人で握りしめながら、こそこそと進んだ先。

 

通路の横に部屋があったから、こっそり覗いたけども。

 

「……これはあれだ。ゲームの世界みたいな感じだ」

 

「るる、知ってる。それ、ゲーム世界転移ってやつ」

 

「……小学生で流行ってるの?」

「? うん、みんなそういうマンガ見てるよ」

 

おおう。

 

異世界転生転移への憧れは、とうとうに現世の地球に生まれてから数年の小学生たちへも波及している。

 

まぁ子供の場合は単純な憧れで、大人たちのように諦観混じりでのそれじゃないだけマシなんだろうけども。

 

「じゃあ、るるたちは異世界に……?」

 

「ダンジョンかもね。問題は、どんな世界観のどんな難易度かってところだけども」

 

見た感じ、モンスターたちは――少なくともこうして部屋の入り口の外に居る僕たちには気がついていないらしい。

 

……願わくば、お気楽な世界観で理不尽でない難易度のダンジョンでありますように。

 

あ、もっとお願いして良いんなら、ぺーぺーの初心者でも脱出できる程度のそれでありますように。

 

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