【2巻発売中】TSしたから隠れてダンジョンに潜ってた僕がアイドルたちに身バレして有名配信者になる話。~ヘッドショットロリがダンジョンの秘密に迫る配信~   作:あずももも

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525話 僕の奥底に沈んでる記憶 その8

ひゅんっ――びしゅっ。

 

「………………………………」

 

「すごいすごいっ! はるってすごい!」

「僕……投げるのとか下手だったはずなのになぁ」

 

いくつか部屋を調べたけども、どこもなにかしらのモンスターが居る。

 

そして――そういう部屋には、遠目だから分からなかったけど、何かの物体が落ちていた。

 

……もしここがゲームみたいな世界なら。

 

そう思って――素手の人間が持てる、唯一の武器である石を投げてみることにしたんだけども。

 

「どう?」

「うん、ここは1匹だけみたい。入ってみよう」

 

たまたまスライムが1匹しか居なかったから、試しに攻撃をしてみた――本当はスライムってのは危険な存在だからやめようと思ったんだけども、るるちゃんが乗り気だったから。

 

結構経ったけども、どこからも人の声はしない。

つまりは、自力で水と食料を調達しないといけない。

 

できなければ――水分がないだけで明日には動けなくなり、3日後には。

 

そう思っての、かなりの博打。

 

その戦果は。

 

「……お水だ」

「うん、ペットボトル。ラベルはないけども……」

 

フタをかちっと外し、口に含んでみる。

 

「……たぶん、普通の水。味も匂いもしない」

「じゃあ!」

 

「そうだね。るるちゃんも飲んで。あ、少しだけだよ。長持ちさせようね」

 

洞窟の中に落ちていて、明らかに新品のペットボトル。

 

……怪しすぎるけども、たとえ毒でも飲まないと死んじゃうのが人間だ。

 

「んくっ……ぷはっ」

 

それに――ひゅんっ。

 

僕が、そこまで力を入れないで投げた石は――部屋の反対側の壁の、狙った場所に激突。

 

砲丸投げとか最下位レベルだったはずの僕が、こんなことができているんだ。

 

これはもう、ゲームの世界そのもの――るるちゃんが言ってたような認識で良いはず。

 

そもそもモンスターとかが居るんだ、科学的にどうこうとか考えても仕方ないもんね。

 

「じゃあ、モンスターが少なかった部屋から攻略してみよう。次はるるちゃんも石、投げてみよっか」

「! うん!」

 

 

 

 

「……なんかダメだったね」

 

「うん。やっぱり話してたみたいに、人それぞれにスキルとかあるのかもね」

 

るるちゃんは――普段の僕の砲丸投げよりも遠くまで投げてたのを見て心臓がきゅってなったけども、モンスターに1発で当てることはできず、ようやく当たっても1発で倒せたりはしなかった。

 

「んー。力は普段より出る気がするんだけど」

 

「てことは、別の攻撃手段が合うのかもね。ほら、ちょうど宝箱が出たし」

「宝箱!」

 

モンスターを――合計で10匹くらい倒したところ、モンスターが倒れた場所に音も何もなく、気がつけば存在していた宝箱。

 

……これがゲームじゃなくってなんだって言うんだろうね。

 

まぁおかげで僕の、無駄に理屈をこねくり回しがちな脳みそもようやくに切り替えられたわけだけども。

 

「……剣だ!」

 

「重くない?」

「重い……はずだけど」

 

ぶんっ。

 

彼女は――小学生女子のはずの彼女が、50センチくらいの金属製の剣を、片手で振り回している。

 

しかも……僕に剣筋とか分からないけども、傍目には綺麗に流れるような振り方だ。

 

「るるちゃんには剣士の才能があるみたいだね」

「やった! かっこいい!」

 

「けど、モンスターの目の前に行くのは……よし、次の部屋で試してみよう」

 

 

 

 

ひゅんっ。

 

「ぴきっ?」

 

部屋の入り口から、僕が――石を、部屋の奥の壁に当てて音を立てる。

 

それに吊られてモンスターが後ろを向いた、その瞬間。

 

「今だよ」

「うん! ……えーいっ!」

 

たたっと――明らかに小学生女子が出せる速度を超えて詰め寄り、

剣が風切り音を奏でる。

 

「……やった! 倒せた、倒せたよ、はる!」

 

ぴょんぴょんっと、くせっ毛を揺らしながら跳びはねる彼女。

 

「うん。僕の攻撃と同じく、弱いのなら1回で倒せるんだね」

 

「おもしろいね! レベルアップとかするのかな?」

「するかもね。それでも反撃を食らったらすっごく痛いだろうから、慎重に倒して回ろう」

 

「~♪」

 

僕の前に立って――なんでも、「剣士なんだから前衛だもん!」ってことらしい――るんるんと足を進めていく、るるちゃん。

 

けども調子に乗って向こう見ずになることもなく、僕と離れすぎない程度で――剣をぶぉんぶぉんと、どう考えても数歳の子供が出せないだろうはずの音を楽しんでいる。

 

――目標があることは、生存に直結する。

 

ましてやここが、本当にゲームみたいな場所なら彼女みたいに楽しみながらレベリングをし、ドロップアイテムを集めて回るのが大正解。

 

つまりはこうして、なんにも考えずに上手くやれることだけを楽しみながらやるのが最短ルートってことで。

 

「……僕も、もう歳なのかなぁ……」

 

「? はるはまだ中学生なんだよね?」

 

「つまりはるるちゃんよりもたくさん歳を取ってるんだよ」

「そうかなぁ」

 

そんな、気分が良くなってふんふん言ってる彼女に合わせ、とりとめのない会話をしながら――僕は両腕に拾ったアイテムを抱えながら廊下を歩いていく。

 

――ゲームみたいなダンジョンってことはこの階層、あるいは上か下に進んだら「ボスモンスター」が居るはずだ。

 

可能ならその直前で察知して、わかりやすい形でレベルが上がるのなら無理のない範囲で上げてみて。

 

回復アイテムとかがあるんなら、何個かストックしておいてから――いつでも逃げられるようにしてからだ。

 

……まだ僕たちのどちらも、敵の攻撃を受けていない。

 

可能なら弱いモンスター相手に――いや、それで骨でも折れたら一巻の終わりだ。

 

それならやはり、レベルとかスキルを上げて万全な状態で前に進もう。

 

ここがゲームみたいなら、この付近で倒せないレベルのモンスターは出ないはず。

 

今は、それだけを信じて。

 

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