【2巻発売中】TSしたから隠れてダンジョンに潜ってた僕がアイドルたちに身バレして有名配信者になる話。~ヘッドショットロリがダンジョンの秘密に迫る配信~   作:あずももも

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526話 僕の奥底に沈んでる記憶 その9

目を細め――なぜか邪魔だから眼鏡を取りながら、僕は言う。

 

「……この先の部屋が、ボスかも」

 

でも、普段は眼鏡がないとなんにも見えないから装着し直す。

僕たち目が悪い種族にとっては、眼鏡さんこそが命なんだ。

 

「? まだなんにも見えないよ?」

「うん……僕、遠くまでを……なんていうか、感覚みたいなので分かるみたい」

 

「ゲームとかの、敵の探知とかマッピングができるのかなぁ、はる」

「そうかもね。僕は怖がりだから遠くが見られるのかも」

 

「大丈夫! るるが守ったげる! この剣で!」

 

「ありがとう。頼りにしてるよ」

「うん!!」

 

残念なことに、ここはゲームみたいにはレベルとかが分かる仕様ではないらしい。

 

けども、あれから結構モンスターを倒していたら、いつの間にかに廊下の先の次の部屋の様子がおぼろげに分かるようになってきている。

 

それに。

 

「るるちゃんも、脚、すっごく速くなったよね」

 

「うんっ! 今なら50メートル走でも1位取れそう! 何分でも、何十分でも走れそうだからマラソンでも1位取れちゃうかも!」

 

「うんうん、かっこいよ、るるちゃん」

 

ぴょんっと――明らかに、るるちゃん自身の背の高さの何割を、軽々と跳ねる。

 

――うん。

 

身体能力自体が、格段に上がっている。

 

きっと、僕と一緒に戦って倒してるあいだに、レベルとかそういうのが上がったんだろう。

 

そういえばなんだかやけに髪の毛が真っピンクになってるし、きっと魔力とかそういうのも宿ったのかな。

 

彼女が攻撃する瞬間とか、よーく見てると剣先からピンクな光が出てたりするし。

 

「………………………………」

 

……僕の髪の毛は――少なくとも前髪は、黒いまま。

 

残念、僕に魔法の素質はなかったらしい。

 

まぁいいや。

魔法に憧れはあるけども、ないものはないんだから。

 

「次がボスっぽいモンスターなら、1回戦ってみよう。倒せたならそこでそろそろ休む用意、ダメそうなら全力で逃げて」

 

るるちゃんはまだまだ楽しそうだけども、確かにダンジョンの中で戦い続けて強くなってるけども――ときどきよろけたり、荒い息を見せている。

 

――気分が高揚しているからこそ、そして今に一生懸命な子供だからこそ一途に高速で強くなれる代償として、自分のコンディションが分からないんだ。

 

こういうところは、歳だけ取った僕みたいな大人が見てあげなきゃね。

 

「――ずっと追いかけられたら倒すしかないけども、そうじゃないなら適当な高台で休もう。空を飛ぶモンスターは今のところ居ないし、いっそのこと逃げてみて高いところまで追われるかのテストもしないとね……今日じゃなくて良いけども」

 

「うん、はるが何カ所か見つけてくれたよね、高いところで寝られそうなところ」

 

「小さいころは木登りとか得意だったからかな」

「へー! るるもそうだった!」

 

「あはは、お揃いだね」

「うん、おそろい!」

 

剣をぶんぶんと、楽しそうな小学生の子。

 

僕は彼女と、長い通路を進んでいった。

 

 

 

 

「キシャー!!」

 

「いやーっ!? コウモリさんが襲ってくるー!?」

「落ち着いて、るるちゃん……えいっ」

 

しゅんっ――かすっ。

 

「はるが外した……!?」

 

「この通り、空を飛ぶ敵に動かれると結構厳しいんだ。るるちゃん、1回で良いから、羽をかすめるだけで良いから攻撃を当ててほしい。そうしたら、僕が石を当てられる。それで弱れば……一緒に攻撃できるよ」

 

「う、うんっ……分かった!」

 

ボスモンスターは、大きめのコウモリさん。

 

……羽もさることながら、全長で50センチくらいもある敵が自分に向かって飛びかかってくる恐怖。

 

しかも相手は、最初から僕たちを傷つける意図を持っている。

 

怖くないはずがない。

 

けども。

 

「よ、よりによって、はるが『居たら困る』って言ってた、飛ぶ敵だったもんね……」

 

「しかも、飛ぶってことは――逃げても、どこかで迎撃しない限り僕たちに隠れる場所はなくって、寝ることすらできなくなる。逃げた先で、他のと挟撃されるかもしれない」

 

「……やるしか、ないっ!」

 

へっぴり腰ながらも勇気を出し、ひらひら舞っているボスへ向き直り――走り出するるちゃん。

 

――ひゅんひゅんっ。

 

彼女の援護のため、絶対に誤射しないように気をつけつつ、拾った袋に詰め込んだ石を牽制として投げていく。

 

ダンジョン。

 

その異界では、ただの人でもなんかこう、すごいことになるらしい。

 

明らかに物理法則を無視した動きを、わずか10歳にも満たない女の子が軽々とやってのけている。

 

「わっとと……えいっ!」

 

……疲れは確実に蓄積しているからか、たまにすっ転びそうになるけども、

 

「のろいさまも、今日はおねんねしてる……だからっ!」

 

――――ざしゅっ。

 

「キィ――――!?」

 

「――はる!」

「うん!」

 

全身全霊を込め、僕の唸るはずのない肩をしなるように曲げていき――――しゅんっ。

 

「ギィ――!!??」

 

あ、クリティカルヒット。

 

コウモリさんの頭が――一瞬だけど、光った気がした。

 

あー、これがスキルとかいうやつかな。

なんか投げる瞬間「当たる」って確信してたし。

 

いい感じの、こぶし大の石でヘッドショットが決まったコウモリさんは……ひらひらと落ちていく。

 

「るるちゃん!」

 

「うん! ……やぁ――っ!」

 

――ざしゅっ。

 

「――――――…………」

 

「………………………………」

「………………………………」

 

……きらきらきら。

 

一瞬の間を置いたあと、強かったやつは――ここに来るまでに倒したモンスターたちと同じく、綺麗な宝石を落として消えた。

 

「のろいさま」――確かにね。

 

もし、るるちゃんが言ってたように1日中転んだりぶつけたりしちゃうんなら、今みたいにスムーズには攻略できなかっただろう。

 

……異世界。

 

ダンジョン。

 

そんな場所なら、彼女の呪いってのも解消できるのかも。

 

「………………………………」

 

そういう意味では――この子にとってはこのまま、ダンジョンの中の方が……。

 

――――――ぱきん。

 

「?」

 

どこかで何かが――軋む音が、聞こえた気がした。

 

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