【2巻発売中】TSしたから隠れてダンジョンに潜ってた僕がアイドルたちに身バレして有名配信者になる話。~ヘッドショットロリがダンジョンの秘密に迫る配信~   作:あずももも

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527話 僕の奥底に沈んでる記憶 その10

「……たおせた?」

「うん」

 

「ボスモンスター……いちばん強いやつ?」

「たぶんね」

 

「るるたち……やったの?」

「うん、やったね」

 

「………………………………」

「………………………………」

 

しばらくの静寂。

 

そして、勝利を飲み込めた少女が――剣を投げ出して、飛びついてくる。

 

「やった! やったやった! はる、わたしたち勝ったよぉ!」

「うんうん、勝ったね」

 

「あはは、はるったらこういうときでもはしゃがないんだ!」

「うん、僕はいつもこうなんだよ」

 

「でも、嬉しいね!」

「うん、嬉しいよ」

 

ぴょんぴょんしながらぐいぐいと体を預けてくる女の子。

 

……こんなに小さい体で、よくここまで。

 

「がんばったね」

「わーっ♪」

 

髪の毛が痛まない範囲でわしゃわしゃしてあげると余計に喜んでくれる。

 

うん、先に進める希望が湧いたんだからこれくらいは喜んだって良いよね。

 

「うん! ……あ、宝箱! 見て、奥に!」

 

「お、でっかいね。ボスクリアの報酬とかかな?」

「待ってて、はる! わたし、見てくる!」

 

ばっと僕から離れ、たたたっと走って行く姿がほほえましい。

 

――それにしても、良かった。

 

なるほど、フロアに羽のある敵が居なかったからって、ボスもそうだとは限らないんだ。

 

「……この先の階層とかで、いろいろ検証しないと。大怪我をしてからじゃ大変だから」

 

念のために両手に石を握りつつ周囲の警戒をするけども、他のモンスターがおかわりで出てきたりはしないらしい。

 

ま、ここはダンジョンで言えば初級――弱いのが多いところだろうし、るるちゃんみたいに素直に楽しんでれば良いのかもね。

 

「なにがあるかな、なにがあるかな」

 

かちゃかちゃと宝箱を開けようとしている彼女の姿を眺めつつ、警戒する意味もないかって近寄っていく。

 

「あ、そうだるるちゃん。ゲームとかでは宝箱を開けようとすると――――――」

 

――――――がこんっ。

 

「ほ?」

「あっ」

 

――僕たちの足元がなくなっていて。

 

「――きゃああああ!?」

「――――――――っ!」

 

――罠だった。

 

「ボスを倒した後の宝箱になんて、罠とかあるはずがない」って思い込んで。

 

そうだよ、ここはゲームみたいな場所なんだ。

当然にこういう罠とかいっぱいあるに決まってるよね。

 

今までが調子良かっただけなんだ。

 

うん、そうだ。

 

――「『次からは』罠とか絶対見逃さないようにがんばって、るるちゃんが引っかかるようなことにならないようにしないと」。

 

――「あとは、この子を襲ってくるモンスターとか『呪い様』からこの子を守るため、遠くから先に倒せる狙撃スキルとかも鍛えないと」。

 

そんなことを思いつつ、

 

「きゃああああ!? きゃああああ!?」

 

これもまたゲームよろしく、落ち始める前に一瞬だけあった隙で彼女に飛びつき――落ちながら、叫んでいる彼女をぎゅっと抱きしめる。

 

きつく、きつく――絶対に手放さないように。

 

たとえ僕に何があろうとも、この腕が絶対に解けず。

 

僕の背中でこの子を守れ――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――ぐしゃっ。

 

僕は最後に何かを聞いた気がして

 

 

 

 

 

 

 

 

「いたい……」

 

「いたい……」

 

「けど、生きてる……」

 

「はる?」

 

「はるが、守ってくれたんだね」

 

「ありが、」

 

「………………………………」

 

「………………………………」

 

「……はる」

 

「息、してないよ」

 

「首が、変な方向に」

 

「               」

 

「――――――あああああああああああああああああ――……!?」

 

「あぁぁぁぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛――――――!!!」

 

「あ゛――――――――――――!!!!」

 

「るるの」

 

「わたしのせいで」

 

「はるが」

 

「……………………あぁぁぁぁぁぁぁぁ――――……」

 

 

 

 

「……んむ……」

 

僕は、脚がびくってなって目が醒めた。

 

こういうときってあるよね。

眠りが浅いとこうなりやすいらしいね。

 

「……またイスさんの上かぁ」

 

そして、またまた謎の――永遠に前と後ろに進んでいく、細長い管みたいな中をオートパイロットですいすい進んでいっているイスさん。

 

「うぇへへ、久しぶりのコーク……」

「はるしゃまのためなら……」

 

……あいかわらずにへばりつかれての目覚め。

 

けども、今やくっついてきてるのはキャシーさんにリリさん(大)、そしてノーネームさんだけだ。

 

あれ?

 

あの姉弟は?

 

「あずけた」

「あ、ノーネームさん」

 

もぞもぞとほっぺをくっつけてくる、眠そうな顔の彼女が言う。

 

「あのおじいさんたちのところですか?」

「ん」

 

「この前のビビさんリリさんとおんなじですか」

「おんなじ」

 

んー、まぁあの人たちならあの子たちのことをかわいがってくれそうだし。

 

なによりもあのおじいさんは、将来的になんとダンジョン協会の会長にまで上り詰めるやり手のおじいさんなんだ。

 

それに、リリさんが大きくなって僕の前に現れたんだ、きっとあの世界に戻ったらおっきくなった方のアリスさんやアレクくんとも再会できるよね。

 

……あ、あの2人はイスさんに乗ってないんだ。

 

ていうか僕、いつの間に寝てたんだろ。

 

なんだか変な夢見てた気がするし……うーん。

 

まぁいいや、きっと、安心できる人に預けてくれて肩の荷がだいぶ下りたから気が抜けてふにゃふにゃになってるんだろう。

 

「あとはキャシーさんを誰かに預けるだけですね」

「だけ」

 

そうだ。

 

あの異世界ダンジョンで拾っちゃったからお世話をしてた子供たちも、5人のうち4人を預けられたんだ。

 

残るは、この子だけ。

 

この子のことを守ってくれそうな大人に預けられたら、そうしたら――――。

 

「………………………………」

 

……なんでだろう。

 

今はやけに、ここに居ないるるさんが気になる。

 

……あの子のところに戻るためにも、ノーネームさんに誘われる先でまたみんなを守りながら戦わないとね。

 

「もうちょっと」

 

もうすぐに着くらしい。

 

じゃあこの子たち、起こさなきゃね。

 

「もうちょっと」

 

「……もう、ちょっと」

 

ひとりぼそぼそと呟く彼女を横目に、へばりついてしつこい2人を起こす作業に取りかかった。

 

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