【2巻発売中】TSしたから隠れてダンジョンに潜ってた僕がアイドルたちに身バレして有名配信者になる話。~ヘッドショットロリがダンジョンの秘密に迫る配信~   作:あずももも

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57話 『250Fダンジョン脱出RTA』6

「す――……す――……」

 

「……ハルちゃん。 ハルちゃんだよね?」

 

「ええ、そうね。 ……ああ、るるのときに使っていたお手製の脱出装置……そういえば引っ越しのときに持ってきたわね……ええ、そう。 爆発したら大惨事になる容量の火薬とかが満載の……」

 

【すやすやハルちゃん】

【●REC】

【かわいい】

【かわいい】

 

【でも】

 

【どうしてこうなった】

 

【草】

 

 

 

 

80階層。

 

ハルの捜索をしようにも、下へ降りる階段はいくら探しても見つからず。

 

どうしようもない以上、ハルたちが落ちたときの穴を使って下へ降りるしかない。

 

三日月えみと深谷るる、遅れてきた九島ちほなど救護班他のパーティーが揃い、そのような結論になり。

 

「でも、どうやってここから降りましょうか」

 

「1、2階層分のものならともかく、ここからダンジョンの最下層まで届くロープなんて持ってきてませんね」

 

「そもそも80階層から250階層とかいう長さのロープなんてあるのか」

「そもそも1階2階下の階層に抜けられるのかすらわからないね」

 

「どこにも階段なんて見当たらないし、強めの攻撃をしても床なんて割れないみたい」

 

「重機とか持ってこないと無理じゃない?」

「重機なんてダンジョンに入らないよ」

 

「なんでハルさんは、自分より年上の少女を片手で抱えて片手で岩に捕まったりしながら無事に降りられたのか……ああそれはハルさんだからどうでもいいのね』

 

「ハルちゃんだからね」

「ハルさんですからね」

 

と、堂々巡りの議論になっていた。

 

そんなとき、下から響く音――ジェット音のようなもの。

 

「……ハルちゃん?」

 

1番に反応したのは、それをつい最近に間近で聞いたるるだった。

 

「……るる。 今、ちほ――こほん、救護班の方に、ちょっとカウンセリングを……」

 

【悲報】

 

【悲報が届いたよ】

【あ、いい意味でね】

【いい意味の悲報ってなんだよ草】

 

【それ朗報って言わない?】

 

【それが言わないんだなぁ】

【言えないんだなぁ……】

【まーたハルちゃんなんかしでかしたのか】

【とりあえずの安心感よ】

 

【まだハルちゃんの配信、全員が視聴できてるわけじゃないしなぁ】

 

【それでどうしたよ? ハルちゃんまたなんかしたんでしょ?】

 

【すでに断定してて草】

【だってハルちゃんだよ?】

【ハルちゃんだもんな……】

【天然爆裂天使ハルちゃんだもんな……】

 

「あら……リスナーさんから。 少し待っていてね、るる」

 

「……………………………………」

 

急に速度と毛色の変わったコメントに、様子がおかしいままのるるを置いて目を向けるえみ。

 

「大丈夫ですからね。 今温かいものを」

 

カメラには映らない場所に位置取りしつつ、ずっとるるを陰ながら介抱してきた九島ちほ。

 

――沈静魔法、もっと強くしないと駄目かしら。

 

ダンジョン内での精神異常ということで神経を使っている彼女が、水分補給をさせようと同僚に話しかけたそのとき。

 

「……ハルちゃんだ」

 

ぽそりとつぶやき、ふらふらと――地面に空いた巨大な穴に近づいていく、るる。

 

【ちょ、るるちゃん!?】

【えみちゃん、るるちゃん! るるちゃんやばい!】

 

「え? ――るる!」

 

もう穴のフチすれすれにまで近づいていた彼女に駆け寄ろうとするえみだったが、手を伸ばしたところで……確かに「その音」が近づいてくるのを感じた。

 

「……飛行機……いえ、ここはダンジョンの中よね……」

 

【合ってる】

 

【限りなく正解】

【ただしちょっとおかしい仕組み】

【ああ、天使だから本当に飛ぶんだね……】

【ずいぶん科学的な方法で飛ぶ天使】

【ハルちゃんってちょくちょくリアルの存在ってアピールするよね】

 

速すぎるコメントで事情を把握できず、一瞬、立ち止まってしまう彼女。

 

そうしてるるの足先がフチにまでたどり着いたとき。

 

「……ふぁ……るるさん」

 

「ハルちゃん……?」

 

「……え!?」

「ハルさん!?」

 

【草】

【悲報・ハルちゃん、まさかの自力で生還】

【自力(ジェット噴射っぽいやつ】

【ちがうぞ、天使の羽だぞ】

 

【そっかぁ、天使の羽ってこんな見た目だったんだぁ……】

【天使の羽(でかいランドセルみたいなリュックです、下になんか筒がついてて炎吹いてます】

 

るるとえみ、ちほが「彼」の部屋で見た背負い式ロケット。

 

ハルの手作りな、充填式の飛行ユニット。

 

引っ越しの際に業者が「明らかに爆発物ですのでなんとかしてください」と言っていたもの。

 

……九島のとっさの判断でカメラのピントがずらされたが、それでも配信画面には――。

 

【ハルちゃん飛んでる!】

【しゅごごごごって飛んでる……】

【ハルちゃんの方の画面じゃわかんなかったけど】

【ちょ、ぼやけてるじゃん!!!】

 

【金髪ロング、配信に映ってた袖のシャツに長めのスカート……】

 

【そこだけだと洋物ロリなJSなのに】

【背中になんかごついの背負ってる……】

【なぁにこれぇ……(歓喜】

【そこは歓喜でいいのか?】

【草】

 

天使の羽――ではなく、穴の中から出てきて、ちょうどばったり目が合ったるると視線を合わせる形で――少しのあいだだけホバリングし。

 

安心したような薄い笑みを浮かべ、るるの方へ落ち出したハルだった。

 

 

 

 

「すー……すー……んむ……」

 

「……で、魔力を使い切って寝てしまったわけですね」

 

「……ほんと、よかった」

 

「ええ。 もし魔力が途中で尽きたり、逆にこの階層の天井まで勢いよく――という可能性を考えると……」

 

【すやすやハルちゃん】

【終わりの方、何度もあくびしてたし】

【機嫌悪そうだったもんな】

【眠そうな声だったもんなぁ】

 

【子供って眠いとああなるよね】

【子供は眠る瞬間までエネルギー全開だからね】

【ばかとかあほとか】

【かわよかった】

 

【娘にしたかった】

【孫にしたかった】

【友達にしたかった】

【妹にしたかった】

 

【養子にしたかった】

【弟に!】

【ここの視聴者層が厚すぎる】

 

すぅすぅと寝息を立てている、ハル。

 

穴の中から飛び出してきて、しばらくるると目を合わせて――安心したのか、そこで力尽きた印象の、現幼女。

 

「……ハルさんもそうとう疲れたでしょうし、しばらく起きないでしょう。 このダンジョンは危険ですからリストバンドで避難されては?」

 

「そうですね、ちほ――失礼、救護の方」

 

彼女が目配せをした人員から次々とリストバンドを起動、地上に転送されていく。

 

「なにが起きるかわからない以上、長居は禁物です。 ええ、なにしろこの階層という『最下層の底』が抜けたのですから」

「……うん、そうだね」

 

完全に脱力していると、人は重い。

 

――でも、ハルちゃんはそれでもこんなに軽いのに、私のせいで。

 

抱きつく形になっていた「彼」の寝顔を眺めながら、るるはその軽さに罪悪感を覚えていた。

 

完全に寝てしまったハル。

 

その背負っていた物騒なものも、ガス欠の様子だからと外されて――本当に、軽い。

 

身体測定で、6歳平均の肉体。

 

幼女。

 

――でも、ハルちゃんが今日ここまで危険だったのはぜんぶ、ぜんぶぜんぶぜんぶぜんぶぜんぶぜんぶぜんぶぜんぶ私の――

 

「るる」

 

「……ん、大丈夫」

 

そっと差し出されたリストバンド。

 

それをハルの手首に装着。

 

「……では視聴者のみなさま。 本日は大変ご迷惑をおかけしました」

「しました」

 

電源を落とす前のカメラに向かって一礼をする、えみとるる。

 

【いやぁよかった】

【助かってなぁ】

【けどまさかこんなアクロバティックな脱出するなんて】

【さすがはハルちゃんだよな】

【草】

 

【でもるるちゃん見て飛びついてそのまま寝ちゃて……尊い】

 

【てぇてぇ】

【ふたりはるるハル……】

【いい……】

【なんだかんだでるるちゃんに1番懐いてるハルちゃん】

 

【眠気の限界振り絞って逃げ出してきて、最初に見て安心して、抱きついて寝落ちしたんだ……】

 

【やだ、尊すぎる】

【涙出たわ】

【鼻血出た】

【それが百合というものだよ君】

【新しい扉が何十万人分か開かれたな】

 

――コメントの空気も明らかに安心していて、よかった。

 

「るる」

 

「うん。 ……ハルちゃんから行くよ」

 

るるが、ハルのリストバンドを操作。

 

「……………………………………」

「……………………………………」

 

また、「呪い様」がなにかをしでかすのではないか。

 

そういう推測もしていた彼女たちだったが――ハルは一瞬ののち、転送されて消える。

 

「地上班の方、どうですか。 ……よかった」

 

「ハルちゃん……無事に?」

「ええ、地上に着いたみたい。 私たちも……ね?」

 

【ノーネーム様もさすがに手ぇ出してこなかったか】

【まぁアクロバティックすぎるけど、一応ちゃんと脱出したし】

【吹き抜けの穴をジェット噴射して脱出するのが「ちゃんと」……?】

 

【ハルちゃん基準ではね?】

 

【ああ、そうだな、ハルちゃん基準なら普通だな】

【ハルちゃんにご執心のノーネーム様ならむしろ喜んでる】

【まちがいない】

【ああ……!】

 

【RTAをこんな攻略したんだ、歓喜してるだろうよ】

【だな、ハルちゃん以外の誰にも成し得ない攻略だからな!】

【草】

 

「申し訳ありませんが、この後すぐにハルさ――ハルと病院に行きまして、念のための検査もしますので、配信はこちらでおしまいにします」

 

【りょ】

【えみお母さんがんばって】

【あの、ついでにるるちゃ……るるさんのことも……】

【さんを付けるな、るるちゃんはるるちゃんなんだ】

 

【あのやべーひとり言、配信中ずっと聞いててもそう言えるのはえらい】

 

【るるちゃんファンだってたくさんいるんだぞ】

【そのうちの何割がるるハル推し?】

【え? 9割】

【ほとんどで草】

 

――ぷつっ。

 

配信が切られる。

 

「……服はともかく、ハルさんの体には、すり傷すらありませんでした。 配信も私たちが見ていましたから、怪我の心配はないはずです」

「となると、魔力と体力を限界まで使っての気絶ですね」

 

「安心してもいいとは思いますが、失神するほどというのはあまり体にはよくありません。 ……では、私たちも退避します。 救護班の地上部隊も待機していますので……上で、また」

 

九島の命令により――上層部のひと声で異例の出世を遂げた彼女からのそれで、残りの人員も次々と退避していく。

 

ハルがダンジョンから退避しても、何も起きてはいない。

 

だが、それは「今のところ」――急ぐに越したことはない。

 

「ほら、るる」

「……ん」

 

そうして最後の2人もリストバンドを起動。

無事に地上へ、ほんの数秒で転送されて行った。

 

【                      】

【                      】

【                      】

【                      】

【                      】

【                      】

 

――事務所の方で配信終了にしたはずの画面。

 

もちろんコメントもできず、「よかったよかった」と離脱していくリスナーたち。

 

しかしストリーミングは終わらず、真っ暗な画面のまま。

 

感想を言い合うために残っていた視聴者たち――「画面の向こうの大勢」がいぶかしがる中、空白のコメントが連投される。

 

――そして。

 

【                      】

【                      】

 

【                      】

【                      】

 

 

【『250Fダンジョン脱出RTA  clear』】

 

【『500Fダンジョン攻略RTA  期限:480時間以内』】

 

【『攻略報酬:『泉』】

 

【奮って、ご参加ください』】

 

――人知れず。

 

最後の扉が、開かれた。

 

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