【2巻発売中】TSしたから隠れてダンジョンに潜ってた僕がアイドルたちに身バレして有名配信者になる話。~ヘッドショットロリがダンジョンの秘密に迫る配信~   作:あずももも

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574話 最後の説得

「だから、帰ってください。――できたら、連れてきたモンスターさんたちも連れて。この世界、今、あっちこっち大変なんです」

 

「………………………………」

 

「バケモンと……対話を……?」

「おお、神よ……やはり慈悲深いのですね……」

 

イスさんの機動力に置いて行かれた2機が合流しているらしい。

 

「……話が通じるのなら、返事してください。じゃないと――」

 

ちらり。

 

漆黒の前髪に透けている紅い瞳を見る。

 

こくり。

 

その目は、頷く。

 

それに応じ、僕は――光る弓矢を、顕現させる。

 

「――これで、あなたを討伐しなきゃいけません。たとえ、あなたの予備の体があるとしても、痛いことをしなきゃ、いけないんです」

 

僕は、最後まで訴えかける。

 

――甘い?

 

そうかもね。

 

でも僕は、いつだって最後まで戦いたくはないんだ。

 

「あなたの攻撃した、人間。彼らだって、数え切れないほど殺し合ってきました。ときには集団ごと、殺し尽くしたりしました。何万年も、何十万年も……似たような見た目の種族も、全然違う種族も――狩り尽くした、残虐な種族です。あなたたちが来る直前まで、規模は小さくてもお互いにいがみ合って、殺し合う……そんな、種族です。それだけ見れば、今のあなたたちと大差はありません」

 

【ハルちゃん……】

【※人間が絶滅させた種族には、一説ですが一般的に「~原人」と呼ばれる「人間」まで含まれるという説があります】

【ひぇっ】

 

【そうだよな、生存のため、食欲のため――金儲けのために殺し尽くして、今も絶滅させようとしてる種族もあるもんな】

【ダンジョンが出てきたから一時的に人間同士での争いがなくなってるだけだもんなぁ……】

 

【好戦的すぎる】

【客観的に見ると笑えない残虐さで草枯れる】

 

「――でも、それでも僕は人間が好きなんです。だめだめだけど、それでも中には良い人も居て――大多数は、それが悪いことだって自覚したら。少しずつだけど、心がずきって痛んで止めることができる、反省することができる『人間』って存在が。おいしいもの食べてぐっすり寝られるようになったら、ちょっとだけでも他の存在のことを考えられる、そんな種族が」

 

僕だって――人として生きてきた時間に、数え切れない命を奪ってきた。

 

物心つく前からの、いろんなお肉――つまりは動物の命。

そして、幼いころにいたずらで殺しちゃった、小さな虫。

 

大きくなってからも、いや、大きくなったからこそ気づかずに毎日外に出るたびに踏みつけて何十という虫さんを潰しているだろうし、夜中にぷうううんって耳元を飛び回ってちくちく刺して痒くしてくる吸血昆虫を潰してきた。

 

部屋の中に入ってきた黒くてかさかさすばしっこくて見ただけで嫌悪感と鳥肌を立てさせる虫さん――けども、なんにも悪いことをしてないあの存在も、開けたドアとか窓から出て行ってくれなさそうなら、丸めた新聞紙とスプレーで殺していた。

 

そうだ、僕たち人間は残虐なんだ。

 

生きるために仕方ないだけじゃなく、不快だからとか気持ち悪いからとか楽しいからとか――そんな理由で、いろんな命を、生きてるだけで奪い続ける。

 

――それは異世界でだって、戦いが終わってからご馳走されたいろんな料理――その「肉」の出処を考えたら分かるんだ。

 

だから、僕もモンスターや魔王さん……ティラノさんと、変わらない。

 

なにひとつ、変わらない。

 

殺すことに、殺されることに、虐殺されることに文句を言う筋合いなんて――ない。

 

あるとしたら――生きてきて今まで1度も別の命を奪ったことのない存在だけ。

 

でも、そんな存在はこの宇宙には――ああ、そこそこ居るけども、それでもそれらは、僕たちではない。

 

「だから、僕たちは虫さんとか絶滅させられたりさせられそうになっている存在たちから見れば、モンスターとか魔王さん、ボスモンスターそのもの」なんだ。

 

「理不尽にもなぜか矮小な自分たちをしつこく追い回して捕食したり甚振ったり殺したりしてくる、化け物」なんだ。

 

「建物、目に見えない領土っていう縄張りに入ってきただけの存在を理不尽に殺して回るし食べたりもする、『レベルでも上がらないと倒せない』モンスター」なんだ。

 

そう――視点を変えたら、僕たち人間だってモンスターなんだ。

 

見た目なんて、関係ない。

彼らからしてみれば、僕たちの姿なんて醜悪そのものなんだろうから。

 

だけど。

 

「――罪は、消えません。けど、認識して反省したら――その後は、変えられるんです。あるいは、償えるんです」

 

僕は、知っている。

 

人間が他種族を絶滅させたと知って、落ち込んだ姿を。

 

心を痛ませ……生きてるあいだに、誰か別の存在へ、ほんの少しでも良いから優しくしようと思った存在を。

 

「あなたは……どうですか? 今なら、追いません。たとえ、しばらく経ってからこっちへ来ても――そのときに反省して、もう攻撃してこないと誓ったなら、許します。傷ついた人たちへも……僕から謝って、許してもらえるようにがんばります」

 

僕は、彼に――異なる種族の、たぶんたまたまこの世界を見つけちゃって入って来ちゃった存在へ、最後まで告げる。

 

そうしないと、いけない気がするから。

 

僕たち神族っていう、僕たちの判断基準で一方的に人間とかだけの味方をする、意地悪な存在だからこそ。

 

「………………………………」

 

――神族。

 

僕は人間のはずなのに、それが不思議とも思えないのが不思議。

 

戦いが全部終わったら、ノーネームさんに教えてもらおう。

 

言いたくないことはつんと聞かなかったフリする子だけど、きっと、誠心誠意頼み込んだり……好きに匂い嗅いで良いとか触っても良いとかお風呂入っても良いとか言えば、きっと教えてくれるだろうから。

 

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