【2巻発売中】TSしたから隠れてダンジョンに潜ってた僕がアイドルたちに身バレして有名配信者になる話。~ヘッドショットロリがダンジョンの秘密に迫る配信~   作:あずももも

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578話 ノーネームさんの、叫び

「あと、1%。たったの1%です。……お願いしますって伝えてください」

 

「――っ! 任せろ!」

「ということです! 頭部へ攻撃を集中!」

 

イスさんの座席にへばりつくのも精いっぱいだけども、それでも僕は身を乗り出して戦いを眺める。

 

射撃速度は格段に落ち、中には命中せずに外れて――ちょっとしてから陸地の、町の中で爆発が起きたりもしている。

 

けども、それもいとわずに今できる全てを使っての、総攻撃。

 

海の上から、空から――たぶんさっきの攻撃で飛行機も相当ないないされちゃったんだろう、数が極端に減っているけども、それでも飛行機たちも――かなりの数が、すごく近づいて機銃とかでぺちぺちと攻撃をしている。

 

……そして、意外に長い尻尾で撃ち落とされる飛行機たち。

 

「あっ……!」

 

「大丈夫だ。この女神様たちが『ないない』――魔法ってトンデモな力での救助作業ってのしてくれてるんだ……信じろ。俺たちの味方をしてくれてる、綺麗な人たちを」

 

――それを見ながらも、攻撃を止める気配はない。

 

上からぶんぶんとティラノさんの顔の周りを飛び回って、機銃1発でも多く当てようと、がんばっている。

 

「あと少し……あと、少し」

「がんば」

 

「……お願い。ハル様もノーネーム様も、もう……ですから……!」

 

【がんばれ】

【がんばれ!】

【がんばれぇぇぇぇ!!】

 

【ハルちゃんたちでもギリッギリな敵を倒せたら英雄だぞ!】

【俺たち民間人が知るのは11年後になるけど、それでも英雄だぞ】

【たとえ倒しきれなくたって、もうすでに英雄……だけど】

【西海岸全体のダンジョンっていう規格外を倒したら歴史に残るんだ】

 

【たぶん半分以上は女神様たちに助けてもらっても、残りの半分くらいは人類の底力で倒したって誇れるんだ】

 

【こんな戦い、秘匿されてたら損しかないって思うけど  でも隠されてたんだよな】

【ああ】

【世界中、どんな場所でもダンジョンやモンスターと、それぞれの人たちが最後までがんばったんだ】

 

【力及ばなくたって、ノーネームちゃんにすくい上げられてないないしてもらえる  なんて素敵な世界なんだ】

 

【ああ、神様っているんだなって】

【昔想像してたみたいなのとはちょっと違うけど】

【小さくてかわいいし】

【呑兵衛……なのはだいたい同じだけど】

【草】

 

【それでも、見守ってくれてるんだ】

【仏様……?】

【というよりはお地蔵様みたいな感じだな】

【お天道様……?】

【天使――天の遣いだから間違ってはいないな!】

 

祈る。

 

祈る。

 

ひたすらに、祈る。

 

――ついさっきに「待つだけの無力な側」を知ったから。

 

今までは、誰かが危なかったら僕が手を出せていたけども、今はそれができない。

 

無力。

 

ダンジョンに入り始めて、最初のころは何回か危ない目に遭って。

でも、次第にレベルとスキルが上がっていって。

 

【ふつくしい……】

【ハルちゃんが、祈ってる……】

【かわいいを通り越した、不思議な感情】

【これが、美か】

 

探知スキルを優先して上げたもんだから、フロアじゅうの、上下のフロアの――ダンジョンの中で助けを求める人の声を、ときにはリストバンドからの通報よりも先に察知して、急いで行って。

 

でもやっぱり、助けたのを知られるのは恥ずかしい気がして。

だから、見つからないようにして、助かった人がなにか言ってても知らんぷりして。

 

今すぐにって人なら、僕が隠れられるぎりぎりの場所から。

まだなんとかなりそうなら、僕自身は安全な場所に隠れて。

 

彼らに見つからないようにしながら――遠距離から、ヘッドショットをして。

 

でも、今はそれができない。

 

まるで、

 

「――――――――――あ」

 

「だめ」

 

そうだ、僕はるるさんを守れなかったから――――――――――

 

「だめ」

 

「だめだめだめだめだめだめだめだめ……だめぇ――――っ!」

 

絶叫。

 

危機感から発生する、動物としての僕らが本能的に持っている――遙かな祖先から受け継いだ、危険を知らせる音。

 

それで僕の思考は、現実へ引き戻された。

 

【ノーネームちゃん!?】

【何がダメなの!?】

【ノーネームちゃんが叫んで】

【そんなにやばいのか】

【ハルちゃんも、なんか顔が】

 

――――――ちゅんっ。

 

閃光が走る。

 

どぉんっ。

 

「っ! ……アイオワ、ミズーリ……前部砲塔、大破。行き足……止まる……」

「マジかよ……残ってんのはもう5隻のうち3隻……それも、大和の傾斜は止まらねぇみたいだし……信濃も、喫水線が……」

 

「?」

 

……何かを思い出しかけてたのに、また忘れちゃった。

 

けども、今はどうでも良い。

忘れるならその程度のことなんだろう。

 

「……ふぅ……ふぅ……」

「ノーネーム様……」

 

「……?」

 

ノーネームさんが、息を切らしている。

 

「ノーネームさん……つらいんですか?」

「んむ……」

 

疲れ切った感じの彼女が、リリさんに抱きしめられている。

 

……今、誰かが危ない目に遭ってたのかな。

 

ほら、ノーネームさんってばのんびりしてるように見えて、今この瞬間もいろんなところでいろんな人を助けるためにないないしてるはずだから。

 

この戦いが終わったら……甘えんぼな彼女を撫でて撫でられるままにしてあげないとね。

 

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