【2巻発売中】TSしたから隠れてダンジョンに潜ってた僕がアイドルたちに身バレして有名配信者になる話。~ヘッドショットロリがダンジョンの秘密に迫る配信~   作:あずももも

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579話 帰っちゃったリリさん

「そうだ、ノーネームさんもないないして疲れるんだ……お船を何十隻もないないしたら……けど」

 

どぉん、どぉんっ。

 

残っているお船と飛行機、それぞれができる限りの攻撃をしている。

 

――でも、それじゃ足りない。

 

「2%」

 

ほんの数十秒で、1%も――それまでのHP分を回復されているらしい。

 

「……回復量の方が。………………………………」

 

窮鼠。

 

どう見てもネズミさんじゃないけども、ティラノさんにとっては自分が世界に包囲されている感覚。

 

たとえそれがちょっかいを出した先の世界でも、彼自身は身の危険を感じ――だから、ノーネームさんみたいな特別な力を。

 

もしかしたらあとで大変なことになるかもしれない力だったとしても使って、自分を修復している。

 

「………………………………」

 

僕は、手のひらを見る。

 

「………………………………」

 

――魔力がなくなっても、最悪、しばらく寝てるだけ。

 

この世界は、もう――たぶん、ティラノさんを倒したら平和とはほど遠くても、人間さんたち自身でなんとかなるレベルになる。

 

なら――――――

 

「はる」

 

「……なんですか、ノーネームさん」

 

また、止めるのかなって思った。

 

でも、今回ばかりは無理を言おうかと思った。

 

けども――――――

 

「おねがい」

 

「して……いい?」

 

彼女の声は、顔は、そうは言っていない。

いつものように、抑揚も表情もない声が、聞こえてくる。

 

でも、なんだかその声はやけに儚くて。

 

「お願い……良いですよ。よく分かりませんけど、ノーネームさんのお願いなら、なんだって」

 

そもそもこの子は僕のことを、過剰なまでに護ってくれているんだ。

そんな彼女が言うんなら、ちょっとリスクはあったとしても間違いはないはず。

 

……たとえそうでなかったとしても――もはや家族みたいな関係の子に頼まれたら、大抵のことは頷くしかないよね。

 

「ありがと。……りり」

 

もう少しで手首と足首が再生しそうだった彼女が、自分を抱っこしてくれてたリリさんを見上げる。

 

「おしごと」

「おしまい」

 

「……そう、ですか。分かり……ました」

 

それに応える彼女は――すごく悲しそうな顔で。

 

――お仕事。

 

それは、つまり。

 

【え】

【おしまい?】

【何が!? 何がおしまいなのノーネームちゃん!?】

 

【やめて……やめて……】

【薄々感じてたけど、やっぱ……】

【いやだいやだノーネームちゃんたちとお別れはいやだ】

 

「ハル様」

 

リリさんが――目じりに光を浮かべながら、笑顔を向けてくる。

 

「私、お役に立てましたか?」

 

「……はい。とっても」

 

リリさんが居たおかげで、明るかった。

リリさんが居たおかげで、にぎやかだった。

 

リリさんが居なければ――口下手なノーネームさんとの意思疎通にも、口下手な僕と他の人とのそれにも苦労したはずだ。

 

それに――るるさんたちとのあの日々を思い出せて、ちょっと嬉しかったから。

 

「ノーネーム様も、でしょうか」

「ん」

 

「そう。なら、良かったです」

 

彼女は、ほぅ、と息を吐いて。

 

「……帰ってきてくださるのを……るる様たちと、一緒に待っています。あの、お家で」

 

最後にもう一度、にこりとすると――

 

――しゅんっ。

 

彼女は――「まるで最初からこの世界には居なかったかのように」跡形も無く消えていた。

 

……ちょっと寂しい。

 

けど、またすぐに会えるよね。

 

【あ】

【ああああ】

【消えちゃった】

【ノーネームちゃんのないないって一瞬だもんな】

 

【ああ、リリちゃんが】

【帰ったってこと?】

【だろうな】

【リリちゃんを連れてきてる魔力すら、ノーネームちゃん、もう……?】

【そんなぁ】

 

「わ」

 

「とと、まだ再生しきってないんですから……」

 

リリさんにずっと抱っこされてたからか、ふらりと後ろに倒れそうになる彼女を抱き留める。

 

あ、足の先まで――サンダルまで復活はしてるんだ。

 

「しゅきぃ……♥」

「それで、どうするんですか」

 

「しゅきぃ……♥」

「はいはい、僕も好きですよ」

 

ノーネームさんは、好意を、ちょっと変な形で伝えてくる。

 

るるさんみたいにお風呂に入ってくるみたいに直球でもなく、えみさんみたいに踏まれるように仕向けるでもなく。

 

九島さんのはちょっと叱る気持ちが入ってるけども、それでもどうでも良い人相手じゃなくってそこそこの相手な僕へ、一歩引いたところから見守るようなのでもなく。

 

リリさんのように、犬とか猫みたいにすんすん嗅いできてひたすらになんでも肯定してくるのとでもなく。

 

 

【!?】

 

【!!??!?!?!?!?!?】

 

【///////////////////////////////////】

 

【アアアアアアアア】

 

【好好好好好好好好好好好スキスキスキスキスキスキスキスキスキスキ】

 

【♥♥♥♥!??????】

 

【アアアアアアアアアアア】

 

 

【草】

【ノーネームちゃん!】

【草】

【草】

【久々の発狂芸】

【ハルちゃんから直接好きって言われたらねぇ……】

 

【いや、あの、今のどう聞いても適とううううううう】

 

【ノーネームちゃん!!!】

【草】

【良かった、悲壮感漂ってるけど案外まだまだ元気そう】

【草】

 

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