【2巻発売中】TSしたから隠れてダンジョンに潜ってた僕がアイドルたちに身バレして有名配信者になる話。~ヘッドショットロリがダンジョンの秘密に迫る配信~   作:あずももも

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585話 【朗報・ハルちゃん、お船とおはなし中】

「……では、ハル様と」

 

「呼び捨てで良いって言ってるんですけど……まぁいいです」

 

結局金属製の床にへばりつき、そのあとは直立不動で敬礼をやめない彼――いや、その周りの彼らどころか、近くのお船の甲板に居る人たちみんな。

 

僕はもう諦めた。

 

人間にはできることとできないことがあるんだから。

 

【不服そうなハルちゃん】

【むすっとしてる】

【草】

 

【すっごいお偉いさんが「今日は無礼講だからね」って言ってきたときの、あの緊張感  しかも「なんだ、まだまだ固いぞ!」ってさらなる無礼を要求してきたときのあの焦燥感だこれ!】

 

【それだ!】

【草】

【草】

【しかも今回は平社員から見た会社の社長なんて目じゃないレベルだし……】

【新入社員に無礼講を要求する時価総額トップクラス企業の経営者レベルの暴挙】

【かわいそう】

 

「あなたが、ここでいちばんえらい人ですか?」

 

「――は。たった今、合衆国太平洋艦隊長官からも権限を移譲されたため、現場判断ではありますが、この私が」

「そうですか」

 

ふんふん、とりあえずこの人が「いいよ」って言ったら大抵のことはOKと。

 

僕は、見回す。

 

――砲塔が取れたり火を噴いていたりしている戦艦たち。

大きく傾いたり、どう見ても長く航行はできないそれ以外のお船たち。

 

満身創痍。

 

どう見ても、そうだ。

 

――だけども。

 

「……このでっかい戦艦さんたちなんですけど」

 

「はっ。大和、信濃、アイオワ、ミズーリ、イリノイ――計5隻は健在なるも、それぞれ大破。残っている砲塔は、浮いている限り撃てますが……特にこの大和は、右舷の浸水が深刻で」

 

「ですよね。僕たち、すっごく斜めになってる床にすっごく足踏ん張ってまっすぐ立ってますし。あ、僕も座り込んだ方が」

 

「お止めくだされ……!」

 

【草】

【草】

【やめたげて】

【やめたげてよぉ!】

【ひどい】

【草】

 

【ハルちゃん、言い方!】

【表現がいちいちかわいいハルちゃん】

【これが……何千歳の女神の語彙力か……】

【嫌いか?】

【そうであるとでも?】

 

【ハルちゃん、本が大好きって言ってたし、たぶん選んで使ってるよね、こういう表現とか】

【あと、女神なのにショタっぽい】

 

【ショタよ!!!!】

 

【しっしっ】

【姉御!?】

【生きていたのか……】

【草】

【敬意の塊もない信者で草】

 

ぎぎぎぎぎ。

 

金属の、きしみ音。

――このお船が、叫びながらすっごくがんばって踏ん張っている声。

 

「あなたも……あなたたちも」

 

僕は腰を下ろして、金属製の床へ手のひらを当てる。

 

「まだ、戦えますか?」

 

『――――――――――』

 

人間の可聴域では探知できない声。

 

それが、口々に――誇り高く、告げてくる。

 

「……分かりました」

 

そっか。

そうだよね。

 

人間さんたちと一緒に、何十年も過ごしてきた「人」たちなんだもん――その人間さんたちが乗ってるあいだは、1秒でも長く浮いて戦いたいよね。

 

「任せてくださいね」

 

「神――いえ、ハル様……何を?」

 

【?】

【ハルちゃん……?】

【ハルちゃん、今……いや、でもまさか……】

 

【あのさ  最初は物言わない、奇っ怪なオブジェクトだったはずのイスさんってさ  「進化」したら――しゃべったし、明らかに自我も個性も意思も持ってたよな  それも途中から、明らかに自律した動き見せて……】

 

【えっ】

【あっ】

 

【つまりさ  「機械」どころか「プログラム」ですら――レベルが上がると……ほら、ハルちゃんってばイスさんに乗ってたくさんモンスター倒してたし、それってつまり、ハルちゃんがさっき言ってたようにお船とか飛行機のレベルも上がるとかに近くって、つまりこの戦艦たちでさえも……】

 

【あ、うちの教授が泡吹いて倒れて転送されたわ】

【ただ今政府関係の会議室  悲鳴がうるさい】

【あ、でも、「つまりうちの国家予算を累計で十数年分注ぎ込んだ戦艦たちが……?」って沸き立ってる】

 

【あーあ】

【草】

【かわいそう……いや、嬉しいのか?】

 

【無機質な機械が、自我を持つ  ハルちゃんっていう神様自身ががそう言ってるんだら、認めるしかないよな】

 

【なによりも、最初は初期のAIっぽくしかなかったノーネームちゃんが……いや、でもノーネームちゃんは最初から双子の女神だったはずで……?】

 

「じゃあ、艦長さん」

「はっ!」

 

僕は金属の手すりから手を離し、彼の了解をもらう。

 

「ちょっと、借りますね」

 

「はっ。――――――――――は?」

 

よし、言質取った。

これで大丈夫。

 

「ありがとうございます。あなたたちも、あと1回だけがんばってくださいね」

 

『――――――――――!』

 

「はい、あと1回。たったの1回に、です。だから……ね?」

「いえ、あの、今の言葉は……?」

 

人間には聞こえない「声」で、「彼女」の意思が全艦隊へと伝播していく。

 

――ぎぎぎぎぎ。

 

軋む船体と一緒に響いてくる声は――咆吼。

 

「これで、一矢報いることができる」って――歓喜の声。

 

【悲報・ハルちゃん、言葉が足りない】

【悲報・ハルちゃん、意思疎通を放棄】

【朗報・ハルちゃん、どう見ても大和とおしゃべりしてる】

【なぁにこれぇ……】

 

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