【2巻発売中】TSしたから隠れてダンジョンに潜ってた僕がアイドルたちに身バレして有名配信者になる話。~ヘッドショットロリがダンジョンの秘密に迫る配信~   作:あずももも

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592話 ちいさいるるさんと/出会った/見た/また会った/死んだ

「……おねえ、ちゃん……?」

 

くすんでいるけども、僕の知っている――わずかに魔力を映してピンクに光る、柔らかくてふわふわしている髪の毛。

 

光が入っていないけども、僕の知っている――いつもぐいぐいとくる人懐っこいはずの顔。

 

枯れているけども、僕の知っている――明るかったり暗かったり笑ったり怒ったり、くるくる感情の動く声。

 

そんな少女が――僕が知っている、ある子を幼くしたような姿が――目の前に座り込みながら、ぼうっと僕を見上げていた。

 

「………………………………」

 

【!?】

【ふぁっ!?】

【速報・幼女】

【お前……】

 

【やせこけてる……】

【おいしいものたべて…… \5000】

【\7000】

【\3000】

 

【どう見ても長期間の栄養失調にはな  まずはおかゆとか雑炊とかなんだぞ \150】

 

【薄暗いけど、ここどこぉ……?】

【わからん】

【まだ11年前か?】

【じゃない?】

 

【たった1人の子供でも、ないない寸前の子でも……たぶんたまたま気づいたんだろうけど、それでも見捨てないハルちゃん】

【ハルちゃんだもんな!】

 

【え、けどハルちゃん、今、なんて……?】

 

――僕の目の前には、大きな岩。

 

たぶん上から降ってきたんだろうそれは、「何か/◆◆◆◆/僕/知らないもの/知ってるもの/別たれたもの/腐った肉塊」を押し潰している。

 

それは■■■■■■■■■■■であって、■■■■■■。

 

つまり、僕はこのときに――――――

 

「……、おねえちゃん……?」

 

【薄暗いけど、この髪色、髪質……】

【え?】

【あっ……】

【桃色の髪の毛、くりくりした毛先……】

【頬が痩けて真っ黒だから分からなかったけど、この子……まさか……】

 

――いや。

 

小さな子が――お腹を空かせて。

 

けれども動くことをせずに、ただ体育座りをして。

 

僕を、見上げて。

 

――あちこちにケガをしていて、けれどもそれらは真っ黒になっていて。

 

――――その爪先は、どす黒く赤く染まっている。

 

見ただけで、痛くなる――のに、この子はもう「それを感じていない」。

 

その色は、岩の足元にも複数あって――いくつかの、平たくて湾曲した物質が張りついていて。

 

「……ノーネーム……さん」

 

 

【了解】

 

 

ふわり。

 

動けない僕が、なんとかして口を動かすと――小さくなった彼女が、ふわふわと飛び立つ。

 

「……? 妖精さん……?」

 

ぽつり。

 

水分を喪って黒々とした――本来なら桜色にまぶしい瞳が、少しだけ光を灯す。

 

【ああ……】

【この声……】

【間違いない  るるちゃんの古参の俺には分かる】

【絶壁教徒も……ううん、るるちゃんが大好きな私たちも】

 

【そうじゃない  るるちゃんファン、全員もだ】

【そうだな】

 

【……本当に、この子……あの、元気なのにことごとく「不幸」に追い回されてた……】

 

……とんっ。

 

黒い翼の小さな子が、桃色の子の肩へと降り立つ。

 

 

【治癒魔法】

 

【ゴメンネ】

 

 

――ぱぁっ。

 

ノーネームさんとその子のあいだに、暖かい光がほとばしる。

 

 

【治癒】

 

【治癒】

 

【治癒】

 

【治癒】

 

 

何回も何回も。

 

――なんとなくだけど分かる。

 

ノーネームさん、治癒魔法はほとんどできない。

だけど、必死に何度も何度もかけて――少しずつ治しているんだ。

 

 

【治癒魔法……】

【ノーネームちゃん、今までそんなの1度も……】

【そうしないとやばいくらいに……】

【しかも、重ねがけ……】

【ノーネームちゃんが必死……】

 

【あの、これ、どういう】

 

【薄々分かってるんだろ】

【状況だけで――なんとなく分かるだろ】

【分からないやつは、だ  ハルちゃんとるるちゃんのラブラブっぷりを思い出せ】

 

【……それ、結構一方的じゃなかった……?】

 

【……一方的だったね……】

【わりとそうだったね……】

【なんなら愛が重くて脱走してたね……】

【押しかけ百合っ子だったね……】

【草】

【草】

【お前……お前ぇ……!】

 

【でもさ、ハルちゃんだって途中からは脱走しなかったんだよ?】

【あの自由気ままな野良猫気質なハルちゃんがだよ?】

【それってつまり】

【ハルちゃんだって、少なからず……】

 

【ごめん】

【理解したくなかったんだ】

【分かる】

【言いたくないだけだよね】

【信じたくないよ】

【でも、これはきっと】

 

「……あ」

 

光が収まり、ちょっとして。

 

女の子が、自分の両手を――黒くなくなった指先を、びっくりして眺めて居る。

 

「……痛く、ない……じくじく、しない……つめ、戻ってる……」

 

 

【化膿】

 

【感染】

 

【除去】

 

 

「……? ごめんね、るる、その漢字、知らないの」

 

「……指先が、ばい菌でよごれてたから、ノーネー……そのお人形さんが治してくれたって」

 

「……そうなんだ。ありがと、お人形さん」

 

ノーネームさんは、その声を聞いて振り返る。

 

 

【泣】

 

【悲】

 

【助】

 

【タスケテ】

 

【「『ルル』」を】

 

【オネガイ】

 

【ハル】

 

【ミンナ】

 

 

つーっ。

 

ノーネームさんの頬に――お人形さんに見えるけども、実はちゃんと体温もあってお肌もしっとりしてる体のほっぺたに、熱い液体がこぼれる。

 

「……分かりました。あとは任せてください、ノーネームさん」

 

 

【アリガト】

 

【ダイスキ】

 

 

「ええ、僕もですよ」

 

ふよふよと――だいぶ疲れたんだろう、ふらふらしてた彼女をそっと両手ですくい、優しく撫でてあげてから肩の上に乗せる。

 

 

【♥】

 

【ダカラ】

 

【ハル】

 

【love】

 

 

【ノーネームちゃん……】

【なかないで】

【ないてる……】

【ノーネームちゃんが……】

 

【好きって言われても発狂しない……】

【それだけ、この場面が……】

 

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