【2巻発売中】TSしたから隠れてダンジョンに潜ってた僕がアイドルたちに身バレして有名配信者になる話。~ヘッドショットロリがダンジョンの秘密に迫る配信~   作:あずももも

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608話 るるさんと、お別れを

『まつ』

『じっと、まつ』

 

『やさしいかみさま』

『うれしい』

 

「……優しい神様。そうなれるよう、がんばりますね」

 

彼らは――あんなことを言っているけども、優しい存在だ。

 

だからこそ、僕は、るるさんを送り届けてから彼らのところに行かないといけない。

 

「……別れる前に、言わないと。一緒に住んでた家に戻るって約束、破っちゃってごめん、って」

 

――今の場面を、るるさんが観てるかどうかは分からない。

 

でも、きっと怒る。

きっと、泣くだろう。

 

「でも、助けを求めている『人』が居る。それは、僕じゃなくても良いかもしれない――けども『今』は、僕じゃないといけない」

 

僕は――不思議な力でふよふよと、なぜかこういうときは僕の目の前に浮かんでくれるカメラさんを見つめる。

 

「だから、行きます。ここじゃない、どこかに。……約束は、破ってしまうけれど」

 

見ているか聞いているかなんて、分からない。

 

ここは小さなるるさんが居た地下深く――つまりは、10年、や、11年前の世界。

 

――つまりは、まだダンジョン配信も始まっていなくって、その設備も導入されてるはずなんてないところ。

 

それでも。

 

それでも、僕は。

 

「……年に何回かお休みをもらえるよう聞いてみます。そうしたら……ヒマになったら帰ってこられますから」

 

【ハルちゃん……】

 

【そっか  「帰って」きてくれるんだな  るるちゃんたちのとこに】

 

【あっ……】

【ぶわっ】

【るるちゃんたちが、ハルちゃんの「帰る」場所に】

【ああ……!】

 

【深谷るる「………………………………」】

 

【深谷るる「うん」】

 

【深谷るる「待ってるよ」】

 

【九島ちほ「ええ、待っています」】

 

【三日月えみ「はい  ハルさんの新しい部屋が、埃をかぶらないように掃除をしながら」】

 

【るるちゃん……】

【くしまさぁんも……】

 

【えみちゃん大丈夫? ハルちゃんの残り香でロリコンこじらせない?】

 

【草】

【草】

【ことごとくで草】

【今は笑わせてくれるえみちゃんがありがたいんだ】

 

【笑わせてくれるっていうか、笑われてるっていうか】

【俺らが笑ってるっていうか】

【草】

【ひでぇ】

 

【泣いてたのに笑っちゃってる】

【それで良いんだよ】

【ハルちゃんの配信なんて、笑ってるくらいでちょうど良いんだから】

【たとえそれが、お別れでも】

 

 

◇

 

「……ノーネームさーん」

 

 

【love】

 

 

最初に頼んだ言葉を律儀に聞いてくれたらしく、結構本気で飛んで数分。

 

長い通路の先の――中くらいの部屋でふよふよと、見えない力でるるさんの寝袋を持ち上げていたノーネームさんに追いついた。

 

「あの人たち、待ってくれるそうです。僕も、るるさんを誰かに預けるまで一緒です」

 

 

【シュキ……♥】

 

 

【ノーネームちゃん! 正気を保とうノーネームちゃん!】

【草】

【もう鳴き声しか出せてないお人形さん女神】

【ノーネームちゃん、最初からわりとこうだったし……】

【そういやそうだったわ、呪い様時代から変わってないもんなぁ】

 

ぱたぱたぱたぱた。

 

静かにるるさんを地面に下ろし、また浮かび上がる彼女。

 

 

【通信】

 

【預】

 

【寝袋】

 

【out】

 

 

「お、誰か呼べるんですか。分かりました、なるべく起きないように出しておきますね」

 

まぁ巨人さんたちの大声とか壁ぺりでもすやすや寝てたし、大丈夫だろうけども。

 

【草】

【簡潔すぎるけど分かりやすくて助かる】

【意思疎通には問題ないよね】

 

【でもたぶん、ちゃんと話そうと思えばばばばばば】

 

【ノーネームちゃん!!!!】

【草】

【よし! ノーネームちゃんがおちゃめだからまだ大丈夫だな!】

【ああ、マジでやばい事態ではないことだけは確かだ】

【感動した】

 

「すぅ……すぅ……」

 

「……るるさん、寝顔は大きくなっても変わらないんですね。あ、違うのか、小さいときもおんなじって言えば良いのか」

 

しっかりシャンプーとリンスであわあわして、いまやふかふかでくるくるで――わずかに桃色の魔力を放出している、見慣れた髪質。

 

あどけないけども、気がついたら僕の真横で僕を見てたり一緒に寝てたりしてた、あの顔。

 

「……るるさん。この数年で1番近くで1番構われたから、もうすっかり覚えちゃいましたよ」

 

社会人の悲しい宿命――や、もう社会人から個人事業主へランクアップかダウンしてるんだけども――として、学生時代の記憶はおぼろげだ。

 

特に、中学生あたりまでは全然に。

 

けども。

 

「君が……あんなに構わないでって言ったのに、それでもしつこくこれでもかとくっついてきたから。ダンジョン内での救助要請は義務だから、使った弾の分だけで良いって言ったのに、そんなんじゃ足りないって子供みたいにさんざんに駄々こねて押しかけてきたから」

 

【草】

【草】

【あ、ちょっと根に持ってる】

 

【あーあ】

【うん……脱走の前科があるからね……】

【ま、まあ、なんだかんだ楽しそうだったから……】

 

僕は、思い出す。

 

るるさんたちとの、長いようで短かった――そっか。

 

「たったの、数ヶ月。それが」

 

僕は、真っ暗な洞窟の天井を見上げる。

 

ぴこぴこぴこぴこ。

 

ノーネームさんが高速で何かしらの信号を飛ばしている。

 

「『この体』になってからの、僕の生活だったんだ。うん、あの日に小さな女の子になっちゃってからしばらく隠れてたのを発見されてからの、忙しかったしうるさかったし煩わしかったし逃げ出したかったけど我慢してたらなんだか馴染んだ、あの不思議な生活に」

 

【草】

【草】

 

【深谷るる「      」】

 

【あっ】

【草】

【ほ、ほら、ハルちゃん、結構嬉しそうだから……】

【そうそう、ローテンションな声が嬉しそうだし】

 

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