【2巻発売中】TSしたから隠れてダンジョンに潜ってた僕がアイドルたちに身バレして有名配信者になる話。~ヘッドショットロリがダンジョンの秘密に迫る配信~   作:あずももも

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618話 要求

「あなたが、魔王さんですか」

 

『如何にも――朕こそが魔の王である』

 

――全天に広がる星空。

 

遠くには星の集まりが色を成す星雲も見えて、幻想的な光景。

 

「……僕の仲間はみんな死んじゃったんですか」

『然り。数千年前に雌雄を決し、我らがこの世界の覇者となった』

 

――けれどもでっかすぎる魔王さんが大半を覆っていて、その景色も楽しめないんだ。

 

『だが、少ないながらも生き残りは存在するのを確認していた――まさか、こんなにも早く見つかるとは思わなかったが』

 

「僕が初めてなんですか」

 

ということは、この前の魔王さんは、この前のしつこかった彼とは交流がなかったってことになる。

 

……あるいは、何千もの世界を支配するって言っていた彼と敵対関係で、だから僕のことも秘密だったのかもしれない。

 

や、そもそもあのときは羽も生えてなかったし……何回もごんっしちゃったときは一瞬だったし。

いずれにしてもあのときの彼の名前も知らないし、今は忘れておこう。

 

『神族どもは、勝敗が決した今でも魔の者でさえ敬う――朕ら新たな支配者の敵。ゆえに少しは残し、慈悲を持って朕らの支配下に置き取り込む算段であった……が、加減は不可能であった。幼体に至るまで、1体残らず』

 

敵が自分同等の強さなら、もう後先考えず戦うしかない。

そんな感じだったのかな。

 

『故に』

 

――ずいっ。

 

でっかいお鼻の穴が、僕の目の前に突き出される。

 

『朕の所有物となれ』

 

「………………………………」

 

『朕のハーレム、その最上位の扱いと地位を約束する』

 

あー、この流れ、どっかで見たなぁー。

なんで僕、女の子になったとたんにモテてるんだろうねー。

 

「とりあえずお断りしても良いですか?」

 

【       】

【処す? 処す?】

【おろろろろろろ】

【始原は許しません】

【NTRダメ絶対】

 

【ハルちゃんがまたお嫁さろろろろろ】

【ああああああ!!!!】

【ハルちゃん、人気すぎない……?】

【るるちゃんたちにモテてる程度で良かったのに】

 

【あー、美人過ぎると変なのに絡まれるとか、昔だと貴族様に見初められて強制的に連れてかれるとか良くあったって言うよなぁ】

 

【綺麗過ぎるのも大変だって言うもんねぇ……】

【しかもハルちゃんの種族的にも、とんでもない価値あるみたいだし】

【もうだめだ……】

 

『――力尽くで従えても良いのだぞ』

「僕、そういう人は嫌いです」

 

『我が儘を言える立場だと思っているのか?』

「はい」

 

怒りを含んだ声。

 

恐らくは絶対的な支配者としてのプライドに、かちんときたんだろう。

 

「だって、あなたは生きている僕が欲しいんですよね?」

 

『旧支配者たる神族――それに朕の一族を注ぎ込み、新たな支配者として知らしめようぞ』

 

「つまり……僕が子供を産むってことですか?」

『雌とは強き雄の子を産み育てる存在であろう?』

 

あー。

 

あーー……。

 

「……なら、僕が死んじゃったら困りますよね?」

 

『? なぜお前が死――――――――!?』

 

――――――しゅいんしゅいんしゅいんっ。

 

僕は、これまでじっと我慢していた魔力を解放し――――頭の上の輪っかを広げて重ねていく。

 

【あっ】

【速報・ハルちゃん、ぶち切れモード】

【ひぇぇぇぇ】

【さすがに2度目の求婚&子どろろろろろの話になると対応も早いな!】

【草】

 

『神族の幼体――――――』

 

「……かつての、僕の種族がほとんど全滅するまで戦い通したように」

 

僕は、少し無茶をしてでも魔力を吐き出し続ける。

 

「手加減が難しい程度には強くって、僕を収めようとしたらうっかり殺しちゃう程度には厄介だぞ」って、知らせるために。

 

「僕は、死ぬまで抵抗します。死にそうになったら自害します」

 

交渉とは、ブラフも大事。

 

……あのときの魔王さんと戦ったノーネームさんが、あんなにぼろぼろになっていた姿は――もう、見たくないから。

 

ちらりと僕自身の胸元をのぞき込む。

 

 

【………………………………】

 

 

小さなノーネームさんが、じっと見上げてきている。

 

……魔力も無いんだし、またあのときみたいに暴れないでね。

大丈夫、本当に死ぬつもりはないからさ。

 

「それが嫌なら、僕の要求を呑んでください。そうしたら言うことを聞きます」

 

『分かった! 分かったから存在を削りながら魔力を吐くでない! 貴重な神族の生き残りの寿命が削れてしまうではないか!』

 

【えっ】

【えっ……】

【え?】

 

【寿命を……?】

【ハルちゃん……?】

【え、だって、そんなこと】

 

ふむ。

 

どうやら魔力を使い切ったら――普段ならくらくらした後に寝ちゃう程度だけど、死ぬ気で限界まで使い切れば――この、人間じゃなくなってる体なら、本当に死ねるらしい。

 

……したくはないけども、切り札としてはこれ以上ない。

 

それも、僕を支配したい相手が本気で困っているくらいに信憑性があるんだ。

 

『言うがいい! 要求を全て呑もう! お前が朕一族の妃になるのなら!』

 

僕からちょっと距離を取って――あ、よく見ると彼の顔の周り、薄いけど……バリア?みたいなの張ってる。

 

僕からの攻撃を――こんなにちっぽけな僕からのを、かなり警戒している?

 

……どうやら、この謎の空間――外の世界で回復した魔力は、すっごい魔王さんでも嫌がる程度には攻撃手段として有効らしい。

 

この場所にも、女神な肉体にも感謝しとかないとね。

 

「……人間さんたち」

 

僕は、要求する。

 

「『僕が人間さんと認める種族』――あなたたちがではありません、僕が決めた人たち。彼らを、今後一切攻撃もしないし、ちょっかいもかけない。僕が奥さんになったあとでも、頼んだら困ってる人間さんたちを助けたりする。それを約束してください――それが、僕の要求です」

 

――あっちに残してきた、るるさんたち。

 

こっちで出会った、大きな人間たち。

 

彼らを、僕1人のちっぽけな命で守れるのなら――これは、とんでもない大儲けなんだから。

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