【2巻発売中】TSしたから隠れてダンジョンに潜ってた僕がアイドルたちに身バレして有名配信者になる話。~ヘッドショットロリがダンジョンの秘密に迫る配信~   作:あずももも

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619話 魔王さんと魔王さん

『朕の手に収まるが良い』

「はいはい」

 

もう2度目にもなると諦めもつく。

 

僕は素直に魔王さんのごつい手の中に――でかすぎて収まるとかそういう問題じゃなかったけども、あの巨人さんたちやひとつ目さんたちとも比べものにならないくらいでかいけども、ぽすんとおしりを下ろす。

 

『めがみ』

『いっちゃう』

 

『女神さま』

『優しい女神が、魔王様に』

 

下では――生物としてのサイズがでっかいからか、彼の指の隙間から振り返った下は、

 

「……やっぱりダンジョンなんだ」

 

壁が引っぺがされているけども、数階層をばりばりって剥がした感じのさらに下の階層――そこに、巨人さんなのに小人さんみたいなサイズの彼らが見上げてきていた。

 

「なんとかなるので気にしないでくださいねー」

 

ふりふり。

 

悲しそうな目をしている彼らを安心させるべく、見えるように手を振っていく。

 

【ハルちゃん……】

【ハルちゃんのことだから、本当に何にも気にしてないんだろうな】

【ああ……】

 

【何か同接にしては急に減速したような】

【※NTRアゲインでみんな発狂中です】

【特に始原たちが一切書き込まなくなったあたりはガチっぽい】

【吐いてたらコメントできないからな】

【あー】

 

【ハルちゃん自身がへっちゃらなのだけが救いだな……】

 

【出会ったばかりの人たちのために、自分を差し出す女神】

【これは女神】

【ノーネームちゃんが動いてないのは、諦めてるのか、それとも】

【かといって無駄に抵抗しちゃうとなぁ】

 

古今東西、女性っていうのは戦利品扱いだった。

 

ひどいなぁとも思うけども、野生動物でさえそういうのがあるって言うんだからしょうがない。

 

子供を産むことができる――それだけで、すごい価値があるんだ。

 

価値があるからこそ金銀財宝とか土地とか国家とか、そういうものと対等な扱いをされる。

 

そう思えば――今の、女の子になってて女神ってのになってるのも、悪くはないよね。

 

だって、価値があるからこそ彼らを――

 

『幼体よ』

「何ですか?」

 

『朕の近衛兵を見よ』

 

近衛兵?

兵士さん?

 

頭上のでっかいお鼻が向いた方向に僕も振り向いてみると、

 

【       】

【       】

【       】

【       】

 

【あれって……】

【あぁ、やっぱりそうだ……】

【ないないで見たやつだ……】

【おろろろろろ】

 

――空一面を、みっちりとくっつき合いながら飛んでいる、でっかいでっかいドラゴンさん。

 

それが、無数に――まるで海の魚の群みたいに、ゆっくりと頭上を旋回していた。

 

「……はへー、すごいですねぇ」

 

『そうであろう。朕直々のしもべであるからな』

「強いんですねぇ」

 

地位、権力、魔力――あらゆる強さを、付き従う数が示している。

 

けど、

 

「その奥のでっかい光は何ですか?」

 

『朕の秘宝である』

「秘宝?」

 

『そうだ――征服した異界を百ほど凝縮した、無限の魔力を供給する魔界――朕そのものとも言える、秘宝である』

 

彼の声に合わせてドラゴンさんたちの群が緩やかに広く旋回していく。

 

その中心部には――まるで、どす黒い、太陽。

 

見ただけで嫌な感じになるエネルギー……魔力を顔で受けた。

 

『これがある限り、朕は無限に極大魔法を行使できる――如何なる存在も、朕に勝つことは不可能である』

 

「へー」

 

何かもう、すごすぎてぼーっとしてきた。

 

【極大魔法って】

【……Gが絞り出してたブラックホール?だよな……?】

【それを、いくらでも……?】

【もうおしまいだ……】

 

――ばさっ、ばさっ。

 

ぐんぐんと高度を上げていく僕たちは――いつの間にかに、青い惑星の大気圏に居た。

 

「……ここも、どこかの星だったんだ」

 

【地球型惑星!?】

【巨人さんたちの星か】

【そこにもダンジョンが】

 

【え、でもダンジョンってノーネームちゃんの……】

【てことは、ここもかつては神族っていうのが】

【でも、もう全滅って……】

 

宇宙の景色って綺麗だよね。

 

僕はしばらくぼーっと見ていた――けども。

 

『――良し。ここまで離れたなら神族も傷つくまい』

 

「?」

 

僕に星を見せるためか、ずっと後ろ向きで飛んできた魔王さんが――不思議なことを言い出す。

 

「あ、そういえば宇宙でも息ができる……魔力のおかげ? それとも魔王さんの――」

 

ふと浮かんだ疑問を投げつけようとして。

 

『――者共。この星を、異界を破壊せよ』

 

「――――――――は?」

 

その声に――あり得ない言葉に、上を飛んでいた手下の人たちが成層圏を取り囲むように散開していく。

 

「――魔王さん」

 

『神族よ――幼体であり、そして何よりも無知である己を恨むが良い』

 

にらみつけた僕の視線もすまし顔――いや、とっても意地悪な笑みを浮かべている、魔王。

 

『契約魔法で縛れば良かったものを……「あれらを傷つけるべからず」とな。先程そう提案されていたら朕は従わざるを得ず、あれらへ手を出せなかっただろう――だが、お前はそうはしなかった』

 

――きぃぃぃぃん。

 

数万数十万のドラゴンさんたちの口元が、真っ赤に染まっていく。

 

「な――――――――」

 

『お前には、もう帰るべき故郷も、意味のない世話をするべき相手も、存在しなくなる――絶望し、朕の元で永遠に媚び続けよ』

 

【は?】

【なんだよそれ……】

【ひどすぎる】

【これが……魔王……】

【邪悪な、魔の親玉か】

 

【これに比べたら……】

【ああ、Gなんてのはまだかわいいものだったんだな】

【もう……だめなのか……】

【ハルちゃんでも敵わない、ノーネームちゃんも無理だもん】

【ああああああ】

 

『――この次には、お前に纏わり付いている臭いをたどり――ふむ、別の異界も下等種族を守っていたのだな?』

 

「――――――――魔王」

 

僕は――生まれて初めて、「怒り」を覚えた。

 

あるいは憎しみ、それとも恨み。

 

……そっか。

 

これが、「ものすごく嫌な気持ち」。

 

『くははははは!! 良いぞ良いぞ、その美しい瞳から光がなくなるのは、この異界が燃え尽くした後、すぐだ! ああ、滾る! 雌とは絶望させて組み伏せることにこそ存在意義がある!』

 

「許しません。絶対に」

 

『良い、それもまた一興――万年孕み続けてもまだその目をしていたら解放してやろう! ああ、こちらは契約魔法で縛ってやろう……最も裏を返せば、朕に屈したならばその命続く限り、朕らドラゴンと神族の合いの子を産み続けることになるがな!』

 

――僕は、分からない。

 

僕には、女性に対するそういう欲求がほとんどなかった。

そして幼女になってからは完全になくなっている。

 

それも、女性を傷つけたり泣かせたりしてまで無理やりにだなんてのは、そういう本能があるのは知っていたけども嫌だなって思ってた。

 

『ふむ……挫けたか? 物足りぬが仕方あるまい、道理を知らぬ幼体……許そう。だが――者共、構えよ』

 

――もう、だめだ。

 

巨人さんたちは、焼かれる。

ひとつ目さんたちも、焼かれる。

 

――るるさんたちも、あの世界のみんなも――僕のせいで。

 

『――朕が討ち滅ぼせし神族! その庇護対象であった下等魔族、及び魔法もろくに扱えぬ人族! それを神族の末裔たる朕の第一妃となるこの幼体へ、教え込んでやるのだ! ふは、ふはははは……! 良い! 実に気持ちの良い光景だ!』

 

【ハルちゃん……】

【ハルちゃんが座り込んで】

【なかないで】

【無理だろ……】

 

【俺たちがこの後……ってのは、もうどうでも良い  でも、ハルちゃんはせめて……】

 

【裏切られて、自分もひどい目に遭うのに】

【ノーネームちゃん……どうにかならないの?】

【誰でも良いんだ  誰か、せめてハルちゃんだけでも】

【もともとこの世界は11年前に滅びかけたんだ  だからせめて、私たちが犠牲になっても良いから】

 

 

【:】

 

【ハル】

 

 

ぴこん。

 

ノーネームさんが――ずっと動かなかった彼女が、顔を上げる。

 

「……ごめんなさい。僕、みんなのことを――」

 

 

【連絡】

 

【困難】

 

【but】

 

【聖女】

 

【支援】

 

【人手】

 

【good】

 

 

ぴこぴこと知らせてくる、彼女の小さな瞳は――真っ赤に光っている。

 

そして――無表情なはずの、お人形さんなお顔が――かすかだけど、「笑っている」。

 

 

【援軍】

 

【到着】

 

【ナカナイデ】

 

 

「援軍……けど、いくらなんでも――――――――」

 

――ふわり。

 

優しい風が、僕をそっとすくい上げ――ひと息で、僕は魔王から離れた場所に居た。

 

「………………………………」

 

「?」

 

「……え?」

 

それを理解するのに、ちょっとかかった。

 

【えっ】

【!?】

【援軍!?】

【あそこに見えてるの、さっきの魔王だよな?】

 

【口をあんぐり開けてこっち見てるぞ!】

【草】

【ざまぁぁぁぁ】

【なんだ、この気持ち】

【ああ……ああ!】

 

【あああああ】

【良かったぁぁぁぁぁ】

【誰か分からないけど、あの魔王に対抗できる誰かが】

【けど、一体誰なんだ?】

 

『――無礼であるぞ貴様! 世界の支配者たる朕より、最も高価な宝を奪うとは!』

 

『――――――――下郎が』

 

ん?

 

なんか、どっかで聞いたことがある声が?

 

僕は、その声を聞きたくて、座り込んだままの姿勢――でも、優しく包んでくれている手の上で、上を向く。

 

『――姫を守ろうと、一度消滅してまで我に挑み、圧倒的な力の差にもかかわらず、かつては貴様と同じく下郎であった我から、姫を救った騎士』

 

――そこには、

 

「あのときの、魔王さん……?」

 

『そして姫自身から幾度も強かに頭を打ち据えられ――我は、悟った。幾度も諫められ、諭され――初めて、理解した』

 

遠くでぽかんと口を開けている魔王よりも、ずっと小さい――けれども、何度も見慣れたドラゴンの顔。

 

魔王さん。

 

『求愛とは、相手が嫌がることをして諦めさせるのではなく、相手の望む試練を達成してこそ成就するもの。――それでも好かれるかどうかなど、分からぬ。だが』

 

――しゅいんっ、しゅいんっ、しゅいんっ。

 

遙かな上空に、無数の光――ワープホール。

そこから、たくさんのドラゴンさんが出てくる。

 

けども彼らは、さっきまでひどいことをしようとしてた魔王さんの手下とかじゃなく、

 

『――少なくとも好かれようと努力をせねば、愛を受けることはできない。そうであろう? 姫……そして、今度も魔力を使い果たして姫を守り通した騎士よ』

 

大きなドラゴンさんの――ああ、そうだ。

 

あのときのおめめだけど、あのときよりもずっと優しいそれが、僕を見下ろしてきている。

 

『その騎士より援軍の要請があった。姫が、再び狼藉の危機に在ると。それを、他ではない我に救えと。……謝罪は、後ほど改めて……だが、姫よ』

 

――僕の知ってる魔王さんの、仲間だ。

 

『かつて姫を手籠めにしようと企み、何度も復讐を企てた浅はかな我が――多少たりとも振り向き、目くらいは合わせてもらえる存在になったと、証明させてもらえるだろうか』

 

……ノーネームさんと追い払って、そのあとは何回もごんっしちゃった魔王さん。

 

そんな彼は――今回は、ちゃんと僕のことを見てくれていた。

 

 




定期のないない(治療)のため、次回の投稿は次週の金曜日です。

更新が止まるこの期間、ぜひ他の小説、またはプロフより他のコンテンツをお楽しみくださいませ。


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