【2巻発売中】TSしたから隠れてダンジョンに潜ってた僕がアイドルたちに身バレして有名配信者になる話。~ヘッドショットロリがダンジョンの秘密に迫る配信~   作:あずももも

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620話 被虐趣味とちょうちょ

『――だから何度も言っているであろう、分からぬ王だ……無礼な求婚を嫌がる愛しい姫に、「それは嫌だ」と鼻っ柱をしたたかに叩かれる快感は脳を蕩かすのだと』

 

『分からぬ』

 

うん、分からないね。

 

『はっ……これだから王位にふんぞり返るだけしか知らぬ下郎は。良いか? 侵略用の肉体を何度も砕かれ、そのたびに感じる不甲斐なさ。本来であれば取るに足らないはずの、騎士に守られていたはずの姫から直接に最も痛みを覚える鼻を、魂が砕けるかと思うほどに――実際、思わず卵を産みたくなるほどに痺れさせられ、無力感を味わわせられる、あの快感は……どの世界を堕としたときよりも格別なのだ』

 

『分からぬ』

 

分からないね。

 

『そうか……悲しい奴だな』

『それは朕の台詞である……』

 

悲しい人だね。

 

この前の魔王さん?……魔王さんだよね?……が、何か言ってる。

 

翼を広げ、朗々と演説している。

その勢いに、戦闘が全て停止している。

 

ふと、さっきまで悪かった魔王さんと目が合う。

 

『………………………………』

「………………………………」

 

僕たちは、何かを共有した。

 

あとついでに、僕はそんなよく分からないし分かっちゃいけないような話を、その人の両手の中でぼんやりと聞いている。

 

「………………………………?」

 

けども、理解しようとすればするほどに脳みそが跳ねるんだ。

 

『そこで我は、教えを請うた。我の支配していた人間界へ降り――これまでの非礼を詫び、望むのであれば金銀財宝とともに解放する条件と引き換えに、この気持ちがなんたるかを――矮小だからこそ、複雑な感情を有していると期待する人間共――いや、人間たちへと』

 

『解せぬ』

 

あ、そこはえらいと思うよ。

 

やっちゃったことはひどいけど、多くの世界では弱肉強食なのが常識で、その強い人が強いことをして。

 

それを、今さらでもちゃんと目の前に出て謝ること自体はね。

だから僕は、この人の手のひらの中で待つことができるんだ。

 

『そして我は――いや、私は学んだ!』

 

気分が乗っているのか、うるさい魔王さん。

 

魔王さんと魔王さんと僕。

よく分からないね。

 

『愛の中には、愛しい人に折檻されるという形もあるのだと! それもただの折檻では駄目だ――愛がなければならぬ。あるいは、一時的にでも愛を注げる、ぷろのしょうふという者たちに与えられねばならぬ。私は、彼女たちからも詳しく学んだ。彼女たちはぷろであった。ああ、素晴らしかった……だが、やはり姫に比べたら愛が足りぬ。ゆえに、もはや私はぷろのしょうふだ』

 

『貴様は何を言っている……』

 

何を言ってるんだろうね。

 

僕、この人のことがよく分からなくなってきたよ……あ、ちょうちょ。

 

へー、宇宙にちょうちょって飛んでるんだ。

この宇宙ではそれが標準装備で、僕もひらひらすべきなのかなぁ。

 

【おお……】

【おいたわしい……】

【悲報・ハルちゃん、ハイライト消えてる】

【そらそうよ……】

 

【えっと? これって何が起こってる?】

 

【それが分かる人間が居たらそいつはもう人間じゃない】

 

【草】

【草】

 

【いや、分かる……分かるぞ!】

 

【しまった! 「ぷろ」だ!】

 

【「ぷろ」……ぷろってなんだろ……】

【あびゃぁぁぁぁぁぁ】

【草】

【脳が溶けてて草】

 

【もしかして:G、ハルちゃんに叩かれまくって被虐属性に覚醒した】

 

【それもただの被虐趣味じゃないぞ、ドのつくやべーのだぞ】

【予備とはいえ、実質殺される痛みを快感って思うとか】

【よりにもよって覚醒したのはこいつかよ……】

【こわいよー】

 

【そらこんな話聞いたらハルちゃんもちょうちょするよなぁ……】

 

【あっ】

【草】

【ちょうちょの侵食か……無理もない……】

【ちょうちょ>>>>女神パワー】

【ハ、ハルちゃん、相当弱ってるから……】

 

 

【被虐】

 

【♥】

 

 

【ノーネームちゃん! その道は修羅だぞノーネームちゃん!!】

【草】

【あーあ】

 

【帰ってきてノーネームちゃん……そんなノーネームちゃん見たくない……】

【けどノーネームちゃんなら好きそうって気がする】

【それな】

【草】

 

『愛――それは、この世で最も美しい衝動』

 

『私は、それを知った』

 

『うむ、そこまでは朕も理解した……実に下らないとは思――へぶっ!?』

 

ごぉっ。

 

一瞬で詰め寄った魔王さんが魔王を引っ叩いた。

ちなみになぜか僕は何にも感じない……あ、ちょうちょ。

 

『な、殴ったな!? 朕の鼻っ柱を殴ったな!?』

 

『痛かったか?』

『当たり前であろう!』

 

『興奮したか?』

『する訳がないであろう!?』

 

『ふっ……愛を知らないとは、悲しい存在である』

『朕をいきなり殴りつけておいて言うことはそれか!?』

 

ひらひらする物体を追いかけて、戦場全体をぼーっと眺める。

 

……巨人さんたちを狙ってたドラゴンさん全員の目が点になってる気がする。

 

あ、みんなちょうちょ追っかけてるね。

 

僕も追っかけよっと。

 

「ちょうちょ……」

 

ひらひら。

 

おー、省エネ飛行……あ、ここ宇宙じゃん。

まぁいいや、今の僕はぼーっとしたいんだ。

 

【えっ】

【ハルちゃん!?】

【草】

【悲報・女神、ちょうちょへ退化する】

【もうだめだ……】

 

【まずい……ハルちゃんの表情が過去一番に何も考えていないものに!】

 

【草】

【草】

【この顔……知ってます……】

【ちょうちょって言うんだよ】

【本当に何にも考えていないかわいいいきものがする表情だよ】

 

【もしかして:Gからの精神汚染がトドメ】

 

【あー】

【草】

【悲報・ハルちゃん、諦めた】

【うん……まぁ、希望の見える諦めだから……】

【希望か? これが……】

 

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