【2巻発売中】TSしたから隠れてダンジョンに潜ってた僕がアイドルたちに身バレして有名配信者になる話。~ヘッドショットロリがダンジョンの秘密に迫る配信~   作:あずももも

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642話 ぴったりしっくりフィット

ひゅんひゅんひゅん――かちっ。

 

「お、おかえり」

 

どうやらこの輪っかさん、飛んでって攻撃したあとに戻ってきて――目には見えないし感覚は無いけども、頭の上数十センチの定位置でかちんと収まるらしい。

 

「ぴったりフィット」

 

無くても別に気にはならなかったけども、あればあったで、収まるとなんだかしっくりくるこの感じ。

 

……もしかして、普段から収まってるからしっくりきてる?

 

あれだ、例えるなら男の時には生えてたあれだ。

 

無いならないで気にならないけども、あるならあったでやっぱりしっくりくるんだ。

 

まだ生える気配はないけども。

や、この体に生えたらそれはそれで違和感しかないだろうけども。

 

「……しっくりフィット」

 

いいなぁ、しっくりくるの。

いつになったら戻れるんだろうなぁ。

 

「…………ぴったりフィット?」

 

女の子の体で困ることはそんなにないけど、やっぱり男の方が何かと楽だからなぁ。

 

「やっぱりあればあったで良いよね。……しっくりフィット。んー」

 

ところで、しっくりとぴったり……どっちが良いのかなぁ。

 

【草】

【草】

【かわいい】

【くっそかわいくて草】

 

【なにそれ……微妙な違いがあるの……?】

【ハルちゃんってやっぱ語彙とか独特よね】

【なにしろ感性が女神だからな……】

 

【何気に大ピンチで、あのハルちゃんが機動戦してるのに危機感がまるで無くって草】

【だいたいのことはへっちゃらなのがハルちゃんだからね】

 

【ぴったりフィットなんだね】

【しっくりフィットかもって】

 

【よかったね】

【よかったね】

【脳がね、よかったねって言ってるの】

【脳が……よしよしされている……】

【草】

 

輪っかさんのことも、生えてた相棒のことも置いといて。

 

「――えいっ」

 

しゅんっ。

 

「ふ……っ!」

 

ひゅん。

 

撃ってはかわして、かわしては撃って。

やっぱりこうして直線で撃ってた方が楽な気がするね。

 

「……ふーっ……だから僕、のんびり遠くからぺちぺち狙撃する方が好きなんだけどなぁ……よっと」

 

ひゅん――ごぉっ。

 

僕を――気がつけば完全に上下左右に360°……球状に展開して覆い隠してきたドラゴンさん部隊。

 

もはやみっちみちすぎて、その外で起きてるはずの……さっき僕がけしかけさせた三つ巴の戦いなんて、観戦できる隙間もなくなっている。

 

前を見ても後ろに振り返っても、上を見上げても下を見下ろしても、どこもかしこも隙間なくみっちみちで、どの角度からも同じ距離感の綺麗なスフィア。

 

みっちみちな3D隊列を組んだ兵士さんな彼らは、対角線上に居る反対側のお味方へのフレンドリーファイヤーも気にすることなく――どうせ予備の体で復活できるのか、お味方の数が多すぎるのか――反対側までを貫くブレスを遠慮も配慮もなく、1秒おきに数十を発射。

 

最前面に張り出してきてる数だけでも数万匹――そんな彼らの数からしたら攻撃が少なすぎるのは、たぶん僕と一緒で、さっきの攻撃で消耗しているから。

 

大技――必殺技ってのは、使ったあとはしょんぼりするものなんだ。

 

「……おっと」

 

――ごぉっ。

 

かなり近いところを通過したブレスが、ちりりと前髪を焦がしていく。

 

「気をつけないと」

 

「敵も、魔力を消費して動きが鈍ったままで居てくれる」――無意識でそういう楽観的な予測をしちゃってたあたり、そろそろマズそうだね。

 

そうだ、僕は個、彼らは群なんだ。

 

彼らはたったひとりが気を抜いてもなんともないけども、僕はたったひとりだから、僕が気を抜けばたちまちにやられるんだ。

 

――ごおぉっ。

 

ブレスを何十回か避けたから分かってきたけども、ドラゴンさんたちの中でもレベルとか練度の差があるらしい。

 

最初はそうでもなかったし、合流してきた追加のにはばらつきがあるのかも。

 

そのおかげか、毎秒4、5本のブレスは僕の至近に届くけども、その中でも1本か2本が危険で、残りはそうでもなく……それ以外はただの弾幕程度の精度しかない。

 

だから実際に気をつければ良いのは――

 

【おろろろろろ】

【      】

【こわすぎる】

 

【ハルちゃん視点=全方位から砲撃されてる映像で漏らしちゃった】

 

【しかもぐりんぐりん動く】

【ろろろろろろ】

【しゃあないわ、こんなん……】

 

【対空射撃でハチの巣にされてる航空機視点かな?】

【数機の戦闘機に囲まれているコックピット視点かも】

【3Dで動き回るゲームでもこんな弾幕と機動戦は普通ないわ……】

 

【それをよくもまあ全部回避して……】

【ハルちゃん、動こうと思えばこんなに俊敏に】

【だって野良猫だもん】

【猫は素早くしなやかですばしっこい……そうか、これが真理……!】

 

「――――――……」

 

ひゅんっ。

 

――僕を確実に狙ってくる、たったの2本をしっかりと見て回避。

 

それが、この場での最大効率だ。

 

幸いにしてホーミング機能のない直線な攻撃らしいから、1秒ごとに移動し続けてそれらを置き去りにしていれば、理論上は被弾をゼロでしのぎ続けられるはず。

 

「けど……羽が。肩甲骨周りの使い慣れてない筋肉動かし続けてるから、そろそろつりそう……」

 

――ひゅんっ。

 

だから、なるべく弓矢の反動や輪っかの反動も利用しているけども……長くは持たないかな。

 

「変なとこがつると痛いんだ……やだなぁ……」

 

あれは、お酒で飲んだくれた夜。

 

ふと手が滑って家具と壁の絶妙な隙間にころころと入って行っちゃったお酒のフタを取ろうと手を差し込んだら、予想外の痛みで肩がつって悶絶した、あの夜のこと。

 

「そのあとも何日か痛むんだよなぁ……やだなぁ……」

 

【草】

【あの、今心配すべきはそんなことじゃないんだけど】

【あー、カメラさんには映らないけど、ハルちゃん、今必死でお羽ぱたぱたしながら逃げてるのね】

【草】

【言い方!】

 

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