【2巻発売中】TSしたから隠れてダンジョンに潜ってた僕がアイドルたちに身バレして有名配信者になる話。~ヘッドショットロリがダンジョンの秘密に迫る配信~   作:あずももも

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654話 降伏と、遠くからの声

『もはや消滅したとはいえども、神族は高貴なる存在……それに尽くすため、矮小なる人間になったか』

 

「私は姫が人間であろうとドラゴンであろうと……結果は変わらなかったでしょう」

 

どうやら人間は、この宇宙ではなめくじみたいな扱いらしい。

それに怒ろうとしても、この存在をじかに見ちゃったら……うん。

 

【くっころ……】

【G……】

【お前……】

 

【ハルちゃんから何度となく拒絶されてハリビンタされまくった結果、人の心を……!】

 

【草】

【困った、全部事実でしかない】

【やってたことがやってたことだからねぇ】

【ハルちゃんしゅきしゅきってのも矢印の方向が変わっただけだしなぁ】

【草】

 

『為したいと願えば反故にし、一方的に蹂躙する――それは、神族たるハル、お前たちの好き好んで保護している人間も同じであろう? 彼奴らは同族同士ですら裏切り合う種族である』

 

「……そう、ですね」

 

ぐぅとも言えない指摘に、僕はうなだれる。

うん……僕たちは嘘をつくからね。

 

『だが、その中でも一定数は契約を反故にせず、律儀に守る。そういう個体も居る』

 

「……はい。僕は、そういう人たちを……たくさんたくさん、知っています」

 

――るるさん、えみさん、九島さん、リリさん。

 

他のみんなも、他人を助けられるんなら助けたいし守りたい――そういう性格の人たちだから。

 

『それは、全ての頂点に到達せし朕も同じこと――少なくとも今の朕は、契約を破る意思は無い』

 

「………………………………」

 

――そうだ。

 

人間だって、お互いに普段は力をセーブして傷つけ合わないようにしてるし、口約束だったとしてもお互いに破らないようにしていろんな契約を結ぶことで、社会ってのを成り立たせている。

 

――誰だって、やろうと思えば不意打ちで――その手のひらでも、武器を使っても、相手を殺せる。

 

――誰だって、やろうと思えば相手の所有物――お金とか物を、奪うことができる。

 

――誰だって、やろうと思えば好きな相手を力尽くで自分のものにすることができる。

 

――誰だって、やろうと思えば言葉と暴力で相手の心と体を傷つけられる。

 

でも、それをしない――少なくとも平和で満ち足りていれば。

 

それが、人間――知性を持った生き物の、大半。

 

ううん、知性が無くったって――モンスターさんたちは生物を襲う存在として産まれているからともかくとして――それ以外の動物だって、おなかがいっぱいでむしゃくしゃしていないんなら、目の前のひ弱な相手だって見逃す。

 

生き物とは、そういうもの。

 

そして――その中でも知性のある存在たちは、自らの意思でそういう選択を取ることができて。

 

 

【ハル】

 

 

「ノーネームさん」

 

ぴこん。

 

ずっと静かだった彼女が――たったの一言を。

 

 

【承諾】

 

 

「……分かりました」

 

……ノーネームさんまでが降伏を勧めている。

 

僕の悪あがきも――ここまで、だね。

 

【ノーネームちゃん……】

【ハルちゃん、もうおしまいなのか】

【ずっと冒険してきたのに】

【でも、しょうがないよ】

 

【唐突にレベルの差がありすぎて物理的に倒せない――「無理ゲー」なラスボスが出てきちゃったら、もう……】

 

【それな】

【ああ……】

【約束を守るかはともかく、ハルちゃんだけは助かるだろうしな】

【そうだな】

 

【裏切られたときのことを思うと怖いけど】

 

【でも、ハルちゃんにだって……幸せで居る権利は、あるんだ】

 

【これまでずっと守ってくれてありがとね、ハルちゃん】

【大丈夫かもだけど、大丈夫じゃなかったとしてもなかないで】

 

『ならば、朕の元へ来るが良い――そのまま一度、朕の魔界へと招待し、寛がせてやろう』

 

「……はい」

 

ふわり。

 

僕は、羽を広げる。

 

……と、忘れてた。

 

「……えっと、これ、まだ見えてるか分かりませんけど」

 

カメラさん――頭の上で、ずっとふよふよしてくれていたそれを捕まえて、レンズを見て、最後の挨拶。

 

【ハルちゃん……】

【ガチ恋距離なのに……】

【これで、最後なのか……】

【ああ……】

 

「僕、今度こそ離れたところに行っちゃいますけど。……?」

 

『――――――……』

 

「?」

 

どこかから語りかけてくる、声。

それが気になって、ふと見回す。

 

【?】

【どうした?】

【よそ見? じゃないよな】

【あ、魔王もどこかを見てる】

【え?】

【なにが】

 

「……? 姫……?」

『ぎぃぃ……?』

 

『何だ? ……是は旧い――朕が幼体だったころの始原魔法の気配……だが、どこから……』

 

ぼくがきょろきょろしているからか、目が合うドラゴンさんたち――ああ、彼らのことも頼まなくちゃ――不思議そうな声を上げている。

 

「――――――――……」

 

でも、僕は耳を澄ませる。

 

済ませて、済ませて――――――

 

 

【ハル】

 

【超長距離通信・補助】

 

【ホカノコエ】

 

【ナイナイ】

 

 

きぃん。

 

急に耳が聞こえなくなって――外から家の中に戻ってきたみたいな、そんな安心感と静けさを感じた僕へ――

 

『――――――……あと、5分』

 

『時間を稼いで』

 

『なにか、ひとつの話題で充分』

 

『だから、お願い』

 

……誰?

 

『もうちょっとで、間に合うんだ』

 

『――魔王が本体を、通常空間に現す、この好機』

 

『ずっと待ち続けていた、私たちのためにも――』

 

………………………………。

 

なんだか不思議な感覚。

 

これはまるで、ちょっと前にちっちゃなるるさんを預けた、あの白馬に乗った女の子と話してるみたい。

 

……けど、分かった。

 

分からないけども、分かった。

あと5分――どんな話題でも良いから、気を逸らそう。

 

けども、こんな場面で一体何を言えば、おじゃるさんの度肝を抜けるっていうんだろ。

 

うーん。

 

………………………………。

 

あ。

 

「ドラゴンって、オスでも卵、産むんですか?」

 

『………………………………。……は?』

 

ずっと気になってたことを口にすると――おじゃるさんのおめめが点になった気がした。

 

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