【2巻発売中】TSしたから隠れてダンジョンに潜ってた僕がアイドルたちに身バレして有名配信者になる話。~ヘッドショットロリがダンジョンの秘密に迫る配信~ 作:あずももも
魔法陣。
どうやら目の前の、恐らくは「神族」ってやつだろう、この子――僕とそっくりな子に頼まれたくっころさんによって僕がいきなりに連れてこられた場所は、鋼鉄でできた無機質な空間。
その中にあって、僕が入るように頼まれているのは、ダンジョンでよく見かける魔法陣。
それを立体、球形にしたような――「ちょうど、僕1人がすっぽり入ることができそう」な領域。
「……それは、あの魔王を倒すために力を合わせてようやく完成した、世界をまたぐ超遠距離の遠隔攻撃魔法――その補助する機構。膨大な時間と人手をかけて、ようやくに。『この遠距離武器』全体を制御するための……大がかりすぎる仕掛けだよ」
よく見ると、艦橋には何十人もの人たちが居て――僕を、見つめている。
「正直に言って、魂としてはただのにんげんである君が、そこまで成長してくれるとは思っていなかった。あれは、あくまで応急処置で……10年保てば良いだけの、緊急避難先だったから。ごめん、けども……種族的な限界値ってのはあるからさ」
中には銀色だったり茶色だったり黒髪だったりしつつも、まったくおんなじ顔をした女の子たちとかも居て――けれども服装はみんなばらばらで。
「もちろん魂自体は私と同じ君だから、可能性はあって――だから、計画には入れておいた。……でも、そこから努力したのは、間違いなく君だよ、ハル。だからこそ、他のリソースを割いてまで、この仕組みを整えた」
そういやみんな、シンプルな服にたくさんのおしゃれな刺繍がしてある。
うねうねぐねぐねとした、幾何学的な模様の刺繍。
そういや、ちょっと前に行った、あの異世界の町のビルの中にあったみたいな模様だ。
あの町のビルの中みたいに光っていてかっこいいね。
それらがなんだか無性に、この空間の被現実性を醸し出している気がする。
「……おーい。おーい」
「?」
「……聞いてる?」
「あ、はい、聞いてます」
「きょろきょろしてたようだけど」
「興味深いので」
「……一応聞くけど、あのちょう――もといインキュバスに影響されてはいないよね?」
「よく分かりませんけど大丈夫だと思います」
ちょうちょ?
インキュバス?
覚えはないけども。
しいていうのなら、つい最近に出会った不思議な相手と言えばペガサスに乗った聖職者の女の子だけども……関係は無いよね。
「――ノーネームと、あの自称騎士が気を引いてくれている、今だけの好機なんだ」
ノーネームさんの名前を聞いて顔を戻すと、やっぱり鏡を見ているようにそっくりな女の子――今の僕みたいに幼女よりはちょっと成長していて――しいていえば「僕のお姉さん」な印象の彼女が、真剣な気持ちを送ってくる。
正直、分からないことばかり。
彼女の説明だって、一方的なものでなにもかもが足りていない。
けども。
「……分かりました」
「ありがとう。……バグが摩訶不思議なミラクルを起こして生まれた、あのよく分からない少年の影響でないとすると、やはりそろそろ……」
この子がすっごく急いでるってことは理解できるし、できるんならおじゃるさんを止めたいって気持ちは僕も同じだ。
いろいろと聞きたいけども、この子は悪い子じゃない。
だって、ノーネームさんと知り合いなんだから。
――――――かつん、かつん。
久しぶり過ぎる人工物の感覚を足の裏に覚えながら、僕はたったの数歩を、すごく遠く感じながら歩いていく。
――いろんな疑問はあるけども、さっきの場面から僕だけが唐突に消えたら、おじゃるさんが怒り狂うのは目に見えている。
だから、今は――――――かつんっ。
頼まれたとおりに歩き、足が魔法陣に踏み入れたとたん――景色が変わる。
ぶぉんっ。
僕の周囲の構成が、変化した音。
変化した僕の視界は、唐突に閉じる。
閉じて、目を閉じて――――――次に開けると。
「……スコープ」
狙撃銃で慣れっこの、双眼鏡。
その中に――ちらっとだけど、おじゃるさんの姿。
それをのぞき込んだ瞬間に――僕は、なぜか「それ」の操作方法を理解する。
――射撃スキルで、初めて手に取った遠距離武器ならその場で使い慣れたように扱える、あの感覚。
……これはもしかして――船だけど船じゃなくって、これそのものが遠距離武器ってことで――
「うん、やっぱり使えるんだね。そうだよ。狙撃攻撃のための、照準。生半可な射撃スキルとかじゃ到底当たらないレベルの、超超長距離射撃用の特注品。たとえるなら……そうだね」
僕のすぐ傍に、僕とそっくりな彼女が居る。
「『大規模なダンジョンの入り口から、最奥に居るボス目がけて地形とモンスターと罠の配置をすべて把握し、そしてホーミングさせながら放った矢でボスへヘッドショットをかます』――君になは、大変だけど不可能じゃないよね?」
「……この体なら」
「うん。『その体』なら」
僕とそっくりな顔をした彼女が、のぞき込んでくる。
「――『私の予備の体』というポテンシャルはあったにしても、そこから10年を掛けて鍛え抜いた、狙撃の力。ハル、君にしかできない仕事――だから、これを作ったんだ」
10年。
そうだ。
僕は、10年前に――――――
「10年前。『その体』に移植した、君の魂。……期待はしたけど、その期待をはるかに超える活躍をしてくれて――『魔王の萌芽』をなだめてくれて。そして、ここまで来てくれた『ハル』。君にしか頼めない――――――私たち神族からの、『勇者』への『クエスト』だよ」