【2巻発売中】TSしたから隠れてダンジョンに潜ってた僕がアイドルたちに身バレして有名配信者になる話。~ヘッドショットロリがダンジョンの秘密に迫る配信~   作:あずももも

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659話 お酒を呑みながら、照準合わせ

「『あれ』から、10年。君は、たったの1人でダンジョンに潜り続け――あの世界の頂点のひとつへたどり着いた」

 

「頂点」

 

僕が、頂点。

けどもそれは、この体があってこそで。

 

「うん。遠距離攻撃の、頂点。もちろん、君の世界で最高って意味じゃない。他の世界も含めたら――狙撃の腕前だけなら、すごい人は他にもたくさん居る」

 

そうだ、そのはずだ。

だから僕は毎日少しずつ、ちょっとでも上を目指そうって。

 

「……けれども。ダンジョンの中で見つからずに遠い場所のモンスターでさえ――索敵スキルに隠密スキルを組み合わせ、通路を曲がった先に居るモンスターを跳弾で仕留めるなんて芸当ができるのは、そこまでは居ない」

 

そうなの?

 

なんだか、やってたら「できそうだな」って思って何日もおんなじとこで練習してたらできただけなんだけど。

 

「そこまで目が良いわけでも身体能力が優れていたわけでもない肉体で――ダンジョンが出現したばかりの世界で、魔力にもそこまで馴染んでいなかった肉体で。しかも始めたのが遅くて、それであそこまでできるのは――そして、ここへ連れてこられる理由になるほどだったのは、君だけなんだ」

 

そうかな。

 

正直、えみさんたちとか配信で褒められすぎて困ってる、あの感覚になってるんだけども。

 

「うん、そう。それだ。『君は、常に前を向き続けている』――それだけは誇りに思って良いと思う。君は、ちょっとおかしな偏執と執念で――自力で、そこまでたどり着いたんだから。産まれた世界次第では、ただの人間の身ながら英雄として活躍もできただろう愚直さでね」

 

やたらと褒めてくれる、そっくりさん。

 

僕を良い気にさせて命中率でも上げさせようとしているんだろうか。

 

残念ながら、僕はそういうのと縁がない。

あくまで僕自身が楽しいから続けていただけで。

 

「――さぁ。よく、狙って」

 

彼女の声に引き戻された僕は、スコープへ顔を寄せる。

 

「これが、私たちが負けて以来数千年ぶりの反撃――その狼煙にして切り札だから。――総員、戦闘用意――――――『適正』は最高値。予定どおりに決戦だよ」

 

――ごぉぉぉぉぉっ。

 

僕たちを飲み込んでいる鉄の塊が、咆哮を上げる。

 

『――魔力充填、1180%』

『――神力充填、1180%』

 

スコープの先で怒っているらしいおじゃるさんを見ると、周囲の音が耳に入ってきても気にならなくなってくる。

 

『魔導回路、解放』

『法力回路、11%のリークを確認……全体出力へ異常はありません』

 

『核融合炉、臨界を維持しています』

『人工太陽からの補助電力網に破損を確認。代替ルートを構築しています』

 

『ホワイトホールからの余剰エネルギーを展開中』

『崩壊射線上の惑星、530全ての移動が完了しました』

 

『第30805世界の世界樹からのパイパスが接続されます』

『喪われし神界、浮上を開始します』

 

「……いろんな世界のいろんな人たちからの協力で、この砲身は動いている。……大丈夫、ハル。君ならやれるはずだ。なにしろ君は、こういうことで緊張するタイプじゃないからね」

 

スコープへ手を載せていると、照準器からこの「大砲」の感覚が――ダンジョンで拾った見慣れない武器をにぎにぎしているときみたいな感覚で、照準を研ぎ澄まされていく。

 

――うん、本当だ。

 

この感覚はダンジョンを探検しているときと――まったく、変わらないんだから。

 

『……! せ、船体の全てへスキルの伝播を確認……! 砲身となる全艦の移動が開始……これが……!』

『並みの惑星より巨大な、この船体そのものを制御しつつあるだなんて……なんて力……これが、神々の力……』

 

『……以降の誤差修正は女神に委ねます』

『出力上昇中――船体へバリアを展開』

 

『艦隊へ通達。異界の女神との共同作戦は、主砲発射後に――』

 

ぐぅぅぅぅん。

 

僕は、なんだか懐かしい感覚だなって思い出しながら全身の魔力を展開していく。

 

――索敵スキルで、ずっとずっと下の階層に居るモンスターたちを見て、その経路を探っていく……あの懐かしい時間を思い出しながら。

 

「ハル。なにか必要なものはあるかな?」

 

「いえ、特に……あ、それなら」

 

僕は――もう手のひらが吸い付いちゃった両手なもんだから、ちょっと恥ずかしいけど嬉しいお願いをしてみる。

 

「この腰につけてる、きちゃない袋さんから適当に良さそうなお酒、出して呑ませてください」

 

「……私も呑んでいい?」

「? はい、良いですよ?」

 

「良しっ」

 

「女神様……」

「魔力生命体の方々は、純粋なエネルギーの吸収でモチベアゲアゲだから……」

 

ごそごそ……きゅぽんっ。

 

「くぴっ」

「ぷはっ」

 

スコープから目を離せなくなった僕。

 

だけども、おいしいお酒が自動的に口の中へお酒が流し込まれる便利さには勝てない。

 

「撃つまで……良い感じに呑ませてください」

 

「分かった……お、こっちも珍しいラベル」

 

ごそごそ。

ごくごく。

 

ごそごそ。

ごくごく。

 

僕たちは、高い遠吠えを奏でる鉄のお船の中で――おいしいお酒を呑んだ。

 

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