【2巻発売中】TSしたから隠れてダンジョンに潜ってた僕がアイドルたちに身バレして有名配信者になる話。~ヘッドショットロリがダンジョンの秘密に迫る配信~   作:あずももも

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662話 おじゃるさんを、良い感じの高台のくぼみから――ロックオン

ダンジョン。

不思議な空間。

 

昔懐かしから最近のものまで、舞台を問わずに操作するキャラで攻略すべき空間は、限定された迷宮と相場が決まっている。

 

そこにはたくさんのモンスターがうようよと待ち構えていて――ゲームによっては対戦相手だったりして――操作するキャラを強くしながら、同時に操作をしている僕たち自身も鍛え上げながら、奥へ奥へと進んでいく。

 

『各世界より提供されましたダイソンシェルからのエネルギー、機関内に充填完了しました』

『カー・ブラックホール数十、現在ワームホールより供給開始です』

 

――僕が「気がついた」ときには、ゲームなんかじゃなく現実の世界、リアルで実装されていた、ダンジョン。

 

そこは、思ったよりも現実感にあふれていて――つまるところ、山とかに登ったとき、視界の悪いところで僕を見つけて突撃してくる野生動物並みに、いや、それ以上の恐怖を味わったんだ。

 

……初日は、漏らさなかっただけでもがんばった方だと思う。

 

いや、本当に。

 

だって僕の体をもぐもぐしようと、小さいスライムだろうがウサギっぽいのだろうが――イノシシみたいなのとかクマみたいなのが突撃してくるんだよ?

 

誰だって怖いよ?

大の大人、成人男性だって怖いものは怖いよ?

 

なまじ命の恐怖ってのを「ずっと知らなかった」僕にとっては、なおさらだよ?

 

だから僕は、ゲームでも得意だった戦法――隠密で隠れて見つからないようにしての狙撃、スナイパーを目指すことにしたんだ。

 

だって、怖いもん。

あと、疲れるもん。

 

『星辰エーテル砲、発射スタンバイ』

『深淵魔力、魔界の王たちより提供されています』

 

最初は岩陰で隠れて待ち続け、定期的に徘徊してくる弱いモンスターへの石投げ。

 

投げては逃げ、逃げては投げ。

絶対攻撃されない意思で、僕は逃げ回った。

 

それを何時間かで何十回な生活を何十日か続けるころには、ドロップアイテムでのスリングショット――パチンコで石投げも楽々になっていて、さらには上位武器の弓矢もゲット。

 

じっと隠れているからか隠密スキルももりもり上がって相手次第では攻撃しても気づかれなかったり、ド近眼だから眼鏡してるくせして狙撃スキルで狙っているときは、真っ暗な通路の先でもくっきり見えるレベルになってたりして。

 

『精霊通路、炉心へ接続――船体全体を保護してくれています。1発分の強度、確保しました』

『非常用回路を開放――発射後、速やかな離脱が可能になりました』

 

発射音っていうデメリットで周囲のモンスターを引きつけちゃうけども、やっぱり力も一切要らないし弾さえあればあくびしてても攻撃できる銃も手に入れた僕は――すでにダンジョンに夢中になっていたんだ。

 

『船体の魔力量、臨界の3000倍に到達』

『神力、霊力その他のエネルギーも、理論的な限界を遙かに超えてなお、安定を維持しています――女神様』

 

スコープ。

 

石と弓矢よりもずっと遠くを精密に狙える狙撃銃には――しょぼいドロップ品であっても標準装備の双眼鏡――ではなくって、単眼鏡。

 

正直、後半にもなると狙撃スキルのおかげで裸眼でも100メートル先のコウモリさんたちだって撃ち抜けるようになってたから要らないんだけども、それでもあると安心できる命中率アップなアイテム。

 

最近は、全然覗くことがなくなっていた視界。

 

その先には――――――しっくり。

 

そうだ、しっくりと来る感覚――「獲物と僕が一体になる」っていう不思議な感覚が、僕を包むんだ。

 

それが、今、久しぶりに僕をわくわくさせている。

 

「……捕らえたかな、ハル」

 

「はい。『いつもの感覚』です」

 

さっきまでは、見えてはいてもまだまだ遠くって――たとえるなら索敵スキルで何階層か離れた場所のモンスターを目視せずに狙ってる状態で。

 

なぜか女神様になっちゃってる僕なら、それでも平気で光る弓矢でばひゅーんって撃てばばしゅって分裂してばばんって当てられるんだけども、今はたったの1発しか撃てないらしい、すっごく貴重な場面だっていう。

 

だから、ずっとじーっとのぞき込んで、ダンジョンでの感覚を思い出していたんだけども――うん。

 

「――『索敵スキルで拡張された感覚で、目の前に居るように感じる』んだね?」

 

「はい。分かるんですか?」

「いいや。『私たちが作ったシステムを使いこなせば、理論上は可能だろう』って予測してただけ。……ハルはそのまま狙っていてね」

 

僕の真横で――僕と同じ匂いがふわりと揺れる。

 

「――――――『神族の加護を得た勇者にして、最後の始祖たる私の弟』な『彼』の用意は整った。さぁ――」

 

僕と同じ声は――どこか楽しそうな声で、歌った。

 

「――――――決着を見る前に勝ったつもりになって好き勝手してきた、魔王たち――獲物を前に舌なめずりしているトカゲたちへ、ひと泡吹かせてやろうじゃないか」

 

ばさり。

僕と同じ羽が、空を切る感覚。

 

「制御機構、ロック解除――私たちで集めてきた動力エネルギーの全部を主砲に流して数千年分の想いを――彼に、託そう」

 

――――――うぉぉぉぉぉぉっ。

 

人と機械が、吠える。

 

僕の足元から、スコープをつかんでいる手から、喜びと期待の感覚が流れ込んでくる。

 

「………………………………」

 

そっか。

 

今僕が立っているのは、あんまりにも大きすぎて実感もなかったけども――――――ものすごく巨大な、大砲。

 

何千何万何百万もの船の寄せ集めで構築した、砲塔。

 

だけども、その本質は僕が慣れ親しんできた狙撃銃であって拳銃であって。

 

弓矢であって、スリングショットであって。

 

――僕がいつもダンジョンで探し求める、良い感じの握り具合の石なんだ。

 

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