【2巻発売中】TSしたから隠れてダンジョンに潜ってた僕がアイドルたちに身バレして有名配信者になる話。~ヘッドショットロリがダンジョンの秘密に迫る配信~   作:あずももも

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663話 油断なき魔王と、確実な決着

たった2人になってしまった、ノーネームとくっころ。

 

対するは、魔王以下見渡す限りの軍勢。

しかも1秒置きに到着し続け、その威容は膨れ上がる。

 

――にもかかわらず、変わらない無表情で「降参」を呼びかける――現状を把握できていないとしか思えない仕草の女神、それに乗っかるくっころ。

 

神族1柱に魔族1匹の、あまりにも無残としてしか映らない「抵抗」を――しばしあっけにとられていた魔王は。

 

『――――――ククククク。クハハハハハ……!』

 

可笑しくて思わずと、嗤いが漏れる。

 

『朕の軍勢を前に脅威を知り、恐れおののき、正気を失ったか女神よ……! クハ、クハハハハ……!』

 

――さきほどまでは「好敵手」であり「不憫仲間」であったハルを引き入れようと、星々の基準まで到達している巨体を動かさずに閉じていた魔王の口が、嘲笑に開いてしまう。

 

「――っ! 防御魔法――――――っ間に合わ――」

「ないない?」

 

――ごう。

 

その衝撃波だけでノーネーム、彼女をとっさに抱きかかえたくっころ――配信機材の全てが宙を舞う。

 

彼女たちはきりもみしながら吹き飛ばされ、魔王の示していた温情が消失したことを知る。

 

【あああああ】

【あああああ】

【おろろろろろ】

【カメラがぐるんぐるんしてる】

【まさか、声だけで】

【強すぎる……やっぱ、もうむりだよ……】

 

『ハハハハハ――――――良かろう』

 

久方ぶりに腹の底から笑った魔王は、もはや宙を回りながら飛んでいくだけの哀れな存在たちへ何の感情も持たずに、宣言する。

 

『神族に関わる全てを――――――この世界より駆逐する。全てを、ただの神力という神素にまで分解させ。我らが魔に属する存在全ての悲願を――叶えようぞ』

 

【しんそ?】

【神素?】

 

【分解……まさか、魔力みたいなエネルギー……原子にまで分解してやるってこと?】

 

【     】

【ろろろろろろ】

【ああ……こんな瞬間にも「神素」とやらを研究したい、私の研究者の血が憎い】

【そうか、もう……】

 

『――魔王様』

『攻略の佳境に入っておりまする方面以外の全師団、全てが転移中でございまする』

 

嗤い終えた魔王の元へ――それぞれもまた巨大なはずなのに、魔王と比べると並外れた巨漢の大人と赤子、あるいは恒星と惑星のごとき体格差のある幹部クラスのドラゴンたちが、馳せ参じていく。

 

【ひぇっ……】

【もうだめだぁ……】

【全師団って】

 

【まだまだ増えてるぅ】

【なまじ言ってることが分かるのが怖すぎる】

【ろろろろろろ】

 

『例え情けなく生き延びた神族の幼体であろうと、全軍を以て全霊で排除する――流石は魔王様でございまする』

『「ドラゴンはスライムへも全力を尽くす」との古語の通りでございまするな』

 

『この宙域は包囲済み――この瞬間にでもブレスで神族の末裔を確実に塵芥と変え、この世界の覇権を確定させられますが如何致しましょう』

 

魔王へ侍る存在たちは、すでに勝利を確実に捕らえている。

 

問題は、誰が1番に気に入られる発言をし、しかるべきタイミングで魔王の悲願を叶え――その後の、神族無き更地になった世界の領地を得られるかしか、頭に無い。

 

しかし魔王は、油断はしない。

 

なぜなら神族の脅威――「神と勇者」を最も知るのは、他ならぬ「魔王」なのだから。

 

なればこそ、数千年のあいだ気配すらなく、あったのはたったの「2柱だけ」と判明している神族。

 

――「金色と黒の幼い人間の少女の見た目を模倣した幼体の存在」である神族たちを、そのうちの厄介な片割れを、万にひとつも無く消滅させねばならない。

 

それを自らの目で確認せねば、魔王に安眠は訪れない。

 

――神々は、いつだって下等な存在をけしかけ、自分の首を落とそうと企んでくるのだから。

 

『為らぬ――我が全軍の一斉攻撃にて、完全に消滅させる。全軍が全ての攻撃を通せるよう、球状に展開させよ。絶対に逃さぬ為に。……安心せよ、功績はしかと与えると約束しよう』

 

『御意』

『かの激戦を知らぬ世代も多い……ここで魔王様の畏怖を全同胞、支配下の全ての種族へ知らしめよ……と。流石でございまする』

 

【あっ……ちょっと前にハルちゃんを包囲してたときの……】

【完全な球状で囲ってくる、あのパターンか……】

【包囲陣形……その3D版……宇宙での殲滅作戦か】

 

【慢心しない支配者とか】

【もうだめだ……】

【それでも、見届けよう】

【ああ】

【その次は、俺たちだからな】

 

【せめて、ノーネームちゃんたちを見届けないとな】

【くっころ……最後に笑わせてくれて、ありがとう】

 

ノーネームたちから相当な距離を取り、展開していく魔王軍。

 

――この期に及んでも油断も隙も見せない、魔王の本気。

 

「……はは。私たちごときに、ここまでの戦力を」

『ぎぃ……』

 

それを見て降伏の意思はなくとも戦意は完全に消失しているくっころ、ほかドラゴンたち。

 

「………………………………」

 

――けれども。

 

ノーネームは普段の通りに表情を一切変えず、口を開かず。

ただただ静かに、敵の戦力が充実していくのを眺めている。

 

まるで――「なにかをずっと待っている」かのように。

 

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