【2巻発売中】TSしたから隠れてダンジョンに潜ってた僕がアイドルたちに身バレして有名配信者になる話。~ヘッドショットロリがダンジョンの秘密に迫る配信~ 作:あずももも
宇宙。
あるいは僕たちがそう観測しているだけで、実際には「ひとつの小部屋」は、「通路」によって最寄りの小部屋と繋がっている。
繋がった先は別の小部屋――宇宙で、そこもまた何本もの通路でいろんなとこと蟻の巣のように繋がっている。
フラクタル。
世界を動かすシステムは、本質的には同一。
すなわち、どれだけサイズの違いがあろうとも基本的な構造は同じであって相似。
ミクロとマクロ、過去と現代、現代と未来。
「――――――そっか」
僕は、鋼鉄の天井を透かし、その「先」を見る。
索敵スキルが、暴走する。
隠蔽スキルが、暴走する。
射撃スキルが、暴走する。
遠距離スキルが、暴走する。
「TSスキル」が、暴走する。
「女神の代理人スキル」」が、暴走する。
観てはいけない/そうでもない/視たいんなら誰でも覗ける/見たって怒られない/診るべきだ/覧たら良いんじゃないかな/「君の大切な人をみるんだ」、
◇
「……ハル、ちゃん……? ううん――――――征矢春海、さん?」
「るるさん……?」
「るる……?」
「……皆様。今一度、装備の確認を。たった今、通信を傍受を――」
◇
僕は、みる。
――るるさんと空中と地上で出会った瞬間を。
――るるさんと自宅で、すっぱだかで、視界の隅で真っ赤な九島さんと血を吹き出しているえみさんと出会った瞬間を。
――るるさんとダンジョンの中で、穴から飛び出した下で見上げてきた姿と。
――るるさんとおふろに入った瞬間を。
――るるさんとダンジョンを攻略している時間を。
――るるさんと、ノーネームさんと戦っている時間を。
――るるさんが異世界での戦闘で援軍としてきてくれた瞬間を。
――るるさんが泣きながら地球へ帰っていた瞬間を。
――るるさんと、「必ず戻るから」って約束した瞬間を。
僕は、
【未来】
【:】
【if-then】
【but】
【あなたが、のぞむなら】
【わたしは、しんでもかなえる】
『……うぇっ!? え、えぇっとぉ……はい。……私は、ハルさんのことが好きです……男の人として……』
『あらあらまあまあ!』
『■■! ここまで言わせるとは男だなぁ!』
『子供のころから本の虫だったこの子が、ねぇ……』
『■■。……幸せに、してやれよ。それが、男として生き続けたい、俺の息子への応援だ』
………………………………。
良く、分からないんだ。
僕には、恋とか愛とかは、これっぽっちも分からない。
1日に3冊恋愛小説を読んでも「女の子ってのは意味不明だし、女の子を好きになった男ってのの思考回路は辻褄が合わない」って思う。
『僕も、恋とか良く分かりませんけど。……僕のことを好きって言ってくれて、ずっと一緒に居てくれる女の子のことは……ちょっとばかり変だったとしても、嫌いにはなれません。ちょっとぱかり、強引だって』
会ったことだけがある誰かが、助言する。
『ちょうちょ』
幼い誰かが、言う。
『しゅきぃ……♥』
ノーネームさんが、言う。
だから、僕は。
――るるさんと、母さん「たち」と父さん「たち」と、■■とノーネームさんによく似た人とノーネームさんと、鍋をつつき合っている姿を、「みる」。
全部全部、一瞬のできごと。
脳内のシナプスをよぎるだけのこと。
けども。
「……あの子……え? 1周目だよね? ただの人間の? え? ノーム? ちょっときて」
「……は? 本当に……ただの人間で、到達した……? ぜ、前世からの継承――無い? 何かの加護とか――え、それも? 嘘でしょ?」
「ちゃんと輪廻でクリーンナップされて? 1――いや……0から始めて、神族の体で11年だけちょっと違う体験をしたからって、そんなことって。――それこそ『英雄』――『世界を救う勇者』しか……」
「? ……女神様?」
「何か問題が?」
「全報告異常なし……ですけど?」
「すごい……『命中率100%』を維持してる……幾重にも離れた世界をピンポイントで狙撃する、『ヘッドショット』なのに」
「……なんでもない。…………いくら――を与えたとはいえ、時間軸と因果律を超えるだなんて。ふふっ……ノーネームが固執するだけはあるね。……勝利したなら、奮発してあの子に肩入れしちゃおっかな。『末の妹』の恋に……ね」
◇
予想のつかなかった推理小説の最後の1Pをめくったとき。
ページを戻りつつ読み直してたどり着いた漫画のラストの展開を見たとき。
難解な本を数回目に読んでいるとき。
理数系の問題の解説を目にしたとき。
――当たり前すぎて気づくことができなかった、小学生で読んでいた小説の、本当の意味に気がついたとき。
「………………………………」
目尻から口元へ、熱い液体がこぼれ落ちる。
「………………………………」
勝手に開いていた口の中へ、しょっぱい液体が流れ込む。
「………………………………」
僕は、泣いている。
僕は、泣いている。
だって、――――――「それ」を理解したから。
「――……みんな。発射シークエンスを、維持」
――ふわり。
僕を、あたたかい存在が包む。
「――君は、もっと近くを見た方が良い」
彼女が、言う。
「君は、少しばかり遠くを見すぎていて――ために、君の世界では浮世離れした存在だった。他の人間とは、ずれていた。理解されなかった――恐れられていた。無意識で、畏れられていたんだ」
僕の同位体は、言う。
「……でも。君は、人間なんだ――まだ、1周目なんだ。そこまで気負うことはないんだ……必要は、ないんだ」
彼女は――熱い液体を、こぼす。
「――無理をしないで、消えないでくれ」
って。