【2巻発売中】TSしたから隠れてダンジョンに潜ってた僕がアイドルたちに身バレして有名配信者になる話。~ヘッドショットロリがダンジョンの秘密に迫る配信~ 作:あずももも
「……ハル」
スコープを握りしめ、準備を終えた僕へ、彼女がささやく。
「君は、私の想像以上に――ううん。種族の限界を超えて、魂の位階を超えて、すでに目的を達した。――後は、私が引き金を」
「ううん」
僕は、すでに確定した未来を認めながら、後ろからおずおずと――「まるで弟煩悩な姉を眺めるように」彼女を見上げる。
初対面の相手なのに、僕はそう感じた。
――――――同時に、僕は理解した。
彼女は――「僕の顔と体と声の元になった彼女は、見知らぬはずの僕を大切に想っている」んだって。
……だから、僕は言う。
「彼らは、魔力生命体――本体で出てこない限り、死ぬことはないはずです。あのおじゃるさんだって、こんな攻撃でもたったの1回で命を落とすことは……無い。ううん、なにげに繊細な面も持ち合わせている人なんだ、いざというときの備えくらいは、きっとある。それくらい、強い」
「……! 魔王は、それほどまでに……だが!」
「……『姉さん』」
「!? 今、私のことを――――――」
僕は、彼女を見すえる。
――まるで「自分の代わりに重責を負わせる大切な弟」のような視線を送ってくる彼女へ、僕なりの意思を向けて。
「僕だって、戦います。おじゃるさんと。なにひとつ分からなくたって――こんなときくらい、責任を負わなきゃいけないってのは、分かりますから」
「だけど――」
「姉さん」
僕は――「もし、僕に姉が居たら」って想像しながら、言う。
「……こんなときくらい、僕のことを信じてほしい」
「――……分かった」
僕の、なんにもわかっていない言葉へ――彼女は、うなずく。
「……みんな――頼む」
『……艦内出力、20000%――炉心が融解の限界です。女神様』
『……各種エネルギー、すべてが融和――目標値の5倍です』
そんな彼女へ、船の中のたくさんの人たちが、次々と話しかける。
『女神様。弟様の、おっしゃるとおりです』
『この刻を逃せば、もう……!』
人々の、ほとんど叫ぶような声が――僕たちが乗っている機械のそれと合わさる。
けども。
――ぽふっ。
「?」
僕の首筋に、ほわほわもわもわとした柔らかい感触。
これは「金髪碧眼くせっ毛ロリっ子」な僕の髪の毛の特徴。
るるさんが好きって言ってくれた、僕の新しい特徴。
それが、僕へもたれかかって――首筋に、なぜかあったかい水分が流れる。
「……済まない……妹へするようなことを、なにも知らない君へ」
「別に良いですよ。るるさんに良く、されてますから」
うん。
るるさんに比べたら、なんてことはない。
あの子は騒がしくってべたべたしてきて――それでも、拒否できない存在なんだから。
彼女はいつだって、こうして抱きついてくる。
僕に対して、要らない罪悪感を抱いてくる。
「……その彼女は、君にとって大切か?」
「るるさんですか? ……たぶん」
僕は、彼女との短い時間を思い出して、言う。
その答えに、船が震える。
「……家族の次に。ううん、家族と同じくらい――大切な、人です」
僕は、るるさんの笑顔を思い浮かべる。
そうだ。
彼女は、きっと――僕の大切な人なんだって。
だって、こんなときにでも思い浮かぶんだから。
「――そうか」
それを聞いた不器用な彼女は、僕から離れていく。
僕が握った引き金は目標を定め、すでに半分引き込んでいる。
その結果で伝達されるエネルギー――撃鉄は、引かれていく。
『各艦の損耗率、5%』
『発射までは支障なし』
『精霊界より入電 「ご武運を」――と』
『すべての出力、99%が動力源より銃口へ伝達――』
足元が、揺らぐ。
「この瞬間を待っていた」って、喜んでいる。
『――次元を越える攻撃……「超次元始原輪廻直撃砲」――発射スタンバイ』
『超次元始原輪廻直撃砲、動力――解放』
『超次元始原輪廻直撃砲――クリア』
『主砲回路、目的の動力を伝達――発射します』
――――――かちんっ。
いつも通り、狙いを済ませ。
「ここ」って思って。
僕の引いた人差し指が――いつも通りに銃を構えてモンスターへ向けたように、くいっと引き込まれた。
◇
「――ちょうちょ。無垢の塊」
女神が、唄う。
小さな声で。
そばで震えながら身を寄せている、ドラゴンであった少女にしか聞こえない声で。
「其は彼と等しく、全てを知らないながらにして全てを背負われれし存在。――私たちに背負わされた、哀れな存在」
「……女神……?」
その瞬間。
女神が微笑んだ姿に見とれる魔族――元魔王が、問う。
「んぅ」
彼女は、不器用な声を上げる。
「……だから、強い。だから――――――すき。わたしの、全てを捧げるくらいに。役に立ててから死んだら、それはそれでしあわせ――だから」
彼女は――不器用な愛を、奏でた。
◇
魔王の、顔。
距離にして20000km――それが、世界を統べるはずだった魔王の首から先。
それは「ちょうちょ」に気を取られつつも、口元へブレスを――火炎を溜め込んでいた。
それは、油断はしない。
数千年前に神族やその従属物との決戦に「勝利」しながらも、常に逆襲を警戒していた。
ゆえに、そのブレスは間違いなく「神族クラス」の不意打ちにでも対処できるはずだった。
だが、
『――――――これは、神族の奥義すら――――――』
唯一――この場で唯一に、神族との最終決戦を生き延びた存在だからこそ、それは認知した。
「ちょうちょ」で警戒の緩んだ一瞬を狙っての、次元を越えた予想外で不可避の攻撃を。
彼の頬を殴りつけるような――そして殴り「抜ける」ような衝撃を感じ、意識を手放した「新たな世界の支配者」にとって。
その「超次元跳躍攻撃」は――間違いなく、それにとっての致命傷を与えうるものだと。
今年もハルちゃんの配信を追ってくださり、ありがとうございました。
平日毎日投稿は本日で今年はおしまい、次回は1月5日月曜日からの見込みです。
来年のハルちゃんも、どうぞよろしくお願いします。