【2巻発売中】TSしたから隠れてダンジョンに潜ってた僕がアイドルたちに身バレして有名配信者になる話。~ヘッドショットロリがダンジョンの秘密に迫る配信~   作:あずももも

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672話 2回目の砲撃

『女神よりの攻撃指示を受信――次弾、発射準備』

 

『超次元始原輪廻直撃砲塔、崩壊の見込みです。乗組員は至急退避してください』

 

――ふぃぃぃん。

 

大きな筒が――ぎしぎしと悲鳴を上げながら、力を貯めていく。

 

「………………………………」

 

僕は、その筒――大砲を、眺める。

 

暗い宙に浮かぶ、崩れかけた砲台。

それは魔王討伐という存在意義のためだけに寄せ集められ、構成され、さっきに1度発砲して――最後の攻撃をしようとしている。

 

自分が崩れようとも、死のうとも――存在意義を達成するために、最後の力を振り絞っている。

 

【すごい……けど、怖い】

【てかあの大砲……主砲?の光が溜まるほどにぽろぽろ崩れてるんだけど】

【拡大するとね  崩れてるの、小さな何かの船だよ】

【小さい(どんだけ小さくてもタンカー並みのサイズ)】

 

【拡大してたら、みんなサイズも形も素材もばらばら……かき集めたのか、この攻撃のために】

 

【ハルちゃんに引き金を引いてもらうために……?】

【どれだけ時間が掛かったんだ】

【実際、それで魔王をじゅっしたんだもんな】

【草】

【草生やしてるけどすごすぎることなんだよな】

 

【ハルちゃんの得意な、遠距離攻撃――ヘッドショット  久しぶりに見せてもらったよ】

 

「………………………………」

 

「ハル」

 

金髪の子――姉さんが、悲しそうな声をかけてくる。

 

「……ごめん。私には、用意することしかできないんだ」

 

僕と同じ顔の彼女は/僕の元になった彼女は、顔を落としながら言う。

 

「ここまでのことをできる存在が、居なかったから。だから、もう数百年先の予定だった……けど、君を見つけてしまったから」

 

「……いえ、良いです」

 

僕はそれを、僕の意思で握りしめる。

 

「僕が、狙いをつけて撃つ――それが、必要なんですよね」

 

「うん。これは、たぶん――今だけとはいえ、君にしかできないことだから」

「そうですか」

 

僕は、スコープの、絶妙に目元にフィットする形の微妙に柔らかい素材へ目元をぴとっとくっつける。

 

「……良いの?」

 

「? やらないとなんでしょ?」

 

『ギィー!!』

『ギッギッ♪』

 

「『やり過ぎてる魔王様たちを止めて』――そういうことを、言っています」

 

「……ドラゴンさんたち、くっころさん」

 

声の方向から分かる――さっきのドラゴンさんたちもノーネームさんやくっころさんたちと、僕を見ているんだ。

 

「……待っててくれた人たちのためにも、僕がやらなきゃ」

 

【ハルちゃん……】

【アルちゃんも、積極的にはさせたくないのか】

【そりゃあ責任重大すぎるもん】

 

【おじゃる朕を引っ叩いたけど、あいつもまたくっころ以上にしぶとそうだから追撃は必要だよなぁ】

【草】

 

【くっころはねぇ……】

【何回も諦めずに来たと思ったら卵産む方に回るとかエキセントリックなこと思いつかない限りには、今でも来てただろうし】

【草】

 

【まぁ無下にされると余計に興奮して勝手に卵産むような無害な存在になったから……】

【Gの卵……ひとつほしい】

【えぇ……】

【人類の変態性はたまには役に立つんだな!】

 

「………………………………」

 

真っ白な光――いろんな光を包摂した光が、さっき砲撃した残滓を描いている。

 

『『『GAAAー!』』』

 

……そのすぐ横を通って、怒り狂った残りの軍隊が突撃してきている。

 

その数は、数えられない――多すぎてもはや表面がつるつるしているように見えるほど。

 

その数だけ、僕は恨まれているんだ。

彼らの大切なご主人様を引っ叩いて、誇りある軍隊を半壊させたから。

 

けども。

 

「……ただの生存競争だったら、手は貸しませんでした。この世界は、弱肉強食で限られた資源を取り合うものですから」

 

スコープ越しに彼らの群れの中心点――最も効果的に叩ける「コア」を探る。

 

「おじゃるさんたちが、食べるものに困って……ひもじくて、寒くって。自分たちの仲間が、家族が飢えて死んじゃう――そういう理由で侵略してきたんなら、何度でも適度に引っ叩いておしまいでした。こんな攻撃はためらったし、説得しようと思いました」

 

僕たち人間は、たくさんの種族を食べて生き延びている。

だから残虐なことも、生きるためならしょうがない。

 

けども。

 

「決着のついた戦いのあとで、自分たちに敵対した相手を数で囲んで滅ぼすってのは、やっぱり違うと思うんです。いえ、でも結局はこれだって僕のひとりよがりで、ずっと昔の戦いのきっかけは君たちが生命の危機を覚えていて、必要だったからで……危険な相手を復活させないようにっていう動機かもしれない以上、これはただ、僕が一方に肩入れしてるから撃つんです」

 

――ぎゅっ。

 

「ハル、そこまで考えなくって良いんだ。それを考えて背負うべきは、私たちだから」

「いいえ。引き金を引く以上には必要です」

 

姉さんの手が、僕を包む。

 

【ハルちゃん……】

【ハルちゃんっていつもこうやって自分に責任があるって言ってるよな……】

【弱肉強食っての、いつも強調してるね】

【だから対話ができそうな相手なら、毎回最後まで説得を……】

【優しすぎるし真面目すぎるんだよな、ハルちゃんって】

 

「はる」

 

ノーネームさんが、僕の肩にふわりと乗る。

 

「いっしょ」

 

「せおう」

 

「……そうですね。ノーネームさんには、お願いしても良いかもしれませんね」

 

手に持った、ただの模型の拳銃みたいなちゃちい造りの物体から、遠くでごうごうと音を立てる巨大な砲塔の中にエネルギーが充填され――るも、もう支えきれなくて崩壊していく感覚が伝わってくる。

 

――ごめんね。

 

僕は、いろんなものに心の中で謝ってから――――――かちり、と引き金を引いた。

 

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