【2巻発売中】TSしたから隠れてダンジョンに潜ってた僕がアイドルたちに身バレして有名配信者になる話。~ヘッドショットロリがダンジョンの秘密に迫る配信~   作:あずももも

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676話 【速報・ちょうちょ、やべー代物だった】

ノーネームさんの手元。

 

そういやなんだかきらきらしてるって思ったら、半透明のちょうちょの羽がゆらゆら揺らいでる。

目を離すとなんだか認識できなかったりするあたり、このへんに棲息してる不思議生物なのかもね。

 

「綺麗ですね」

 

「ちょうちょ」

 

心なしかご機嫌だもんね、ノーネームさん。

君って結構純朴なところ、あるよね。

 

【ちょうちょは……うん  敵味方関係なく混乱させるよく分からないのだから……】

 

【悪意が無いだけ怖すぎる】

【その場のノリで一方的に戦いを捻じ曲げてくる恐怖の存在だよ】

【こわいよー】

【ノーネームちゃんだめでしょ! ぺっしなさい! ぺって!】

 

「や」

 

「?」

 

ノーネームさんが、手の甲にとまらせてるちょうちょを片手で隠そうとしている。

なんでだろう。

 

「何が嫌なんですか?」

「たいせつ」

 

「そのちょうちょがですか?」

「ん」

 

「捨てたくないんですか?」

「やっ」

 

お、ノーネームさんがかなり強い自我を。

 

普段は僕にへばりついてきたり体をこすこすこすりつけてきたりすんすんしてきたりする以外にはそこまで他のものに執着しないはずのノーネームさんが、結構強く主張している。

 

「大切なら良いじゃないですか、大切にしてあげましょう」

「しゅきぃ……♥」

 

「半透明の蝶……綺麗ですね」

「しゅきぃ……♥」

 

「良かったですね、それだけ好きな……ペット?友達?ができて」

「しゅきぃ……♥」

 

【あの  たぶんノーネームちゃんが好きって言ってるのはハルちゃゃゃゃゃゃゃ】

 

【ノーネームちゃん!!!】

【草】

【これもひっさしぶりに見たわ】

【ノーネームちゃん、めっ! ないないシステムは大切なんでしょ!!】

【私欲でないないしてくる百合っ子子子子子子子】

【あーあ】

 

しばらく目をつぶって不思議な魔力を編んでいた姉さんが、結構疲れた顔をして言う。

 

「……よし、精神汚染解除。良い子、なんだけどねぇあの子は……」

 

「あ、なんだか頭がすっきりした気がします」

 

お酒が抜けた感じとか、冷たい空気で頭を冷やしたときとか、あんな感じに。

 

逆に言えば、ここに来てから気がついたら酔っ払ったりする感じになってたんだ。

なんでだろうね。

 

「うん、このあたり一帯を非武装にするための認識阻害魔法がね……使いどころ次第ではあるんだけど、今はちょっとね……うん……戦いを強制的に停止させるってのは効果的なんだけど、時間稼ぎをしてくれたのは本当にありがたいんだけど、状況の変わった今はね……」

 

「そうなんですか?」

 

「調停者――無限の応酬には必要な能力。それがすっごく幼い子に渡るのは、遺恨なく場を収めるために必要な力ではあるんだけど……うん……あの子はね……なまじ自我もあって信奉されてて、なによりも気分屋だから……」

 

「へー」

 

なんだかすごく疲れてる様子の姉さん。

 

ていうか見た目が変わらないのになんで姉さんなんだろうね。

むしろ僕がお兄さんでも良いのにね。

 

けど、調停者ってなんだかかっこいいよね。

一体誰のことなんだろうね。

 

【ふぁっ!?】

【精神汚染!?】

【なんてことだ、ちょうちょとは認識を改竄して汚染してくるやべーのだったのか……】

【おろろろろろ】

【ハルちゃんとかアルちゃんっていう神族とかいう上位種すら狂わせるからね】

【ノーネームちゃんも虜にするちょうちょか】

【ま、まあ、アルちゃんが解除?してくれたらしいから……】

 

――ぼぉっ、ぼぉっ。

 

ドットの集まりがやがてはスマホとかモニターの画面になるように、黒一面の光景が赤い画面に塗り替えられつつある光景。

 

その下を見ると……大砲は燃え尽きて、脱出した破片以外の残ったのはばらばらにあっちこっち飛び散っていて、ドラゴンさんたちもまた魔石でできた小惑星帯になっていて。

 

その下でなおも燃えさかるおじゃるさんは、まるで僕たちを照らす太陽。

 

それを遠くから見ると、ちょっと荒い大画面のモニターで夜明け、あるいは夕日を映しているよう。

綺麗ではあるけど、怖い光景。

 

ごうごうと燃え続けるおじゃるさん。

なまじでっかすぎるから、燃え尽きるのにも時間がかかるんだね。

 

その前に、ひとことでも良いから「参った」って言ってくれたらなんとかしてあげたいんだけども……耳を澄ませていても、その気配はない。

 

……あれ?

そういや仲間になってくれたドラゴンさんたちが居ない?

 

………………………………。

 

彼らは、おじゃるさんを裏切ったんだ。

きっと、今現れてるみんなに見つかったら袋叩きになる。

 

……無事に逃げてくれてたら良い、かな。

 

「――さて。『私たちのダンジョン配信』を視聴している全部隊へ、告ぐ」

 

凜とした姉さんの声――僕とそっくりなのにずっと重みのある声が、鳴り響く。

 

「作戦は、第2段階に到達した。喜んでほしい――私たちは、ハルのおかげで無限の試行回数――シミュレーション上での、都合の良すぎる理論上の最適解をたたき出せている――すなわち」

 

「?」

 

おんなじ体だったとしても、おんなじ顔だったとしても――こうも、印象が変わるんだ。

そんな思いを抱くような、いたずらっ子な表情が、僕へ向けられる。

 

「私たち敗者が『これさえできていれば』と願っていた、正面切っての、勢力が均衡でなければ実現しなかったはずの、一騎打ち――それが、できる。こっちが望む戦力を望む場所で、ぶつけられる――勝負を、1対9999から五分五分にまで引き上げられる。こんな機会は、二度と起き得ない――だから」

 

――ふぃんふぃんふぃん。

 

「?」

 

ちょうど僕たちから真正面に対峙するように、僕たちの上下左右の空間へ何かの反応が検知される。

 

その数はあっという間に増えていって――正面と同じくらいの、索敵に反応する敵――いや、この懐かしい感覚は――味方……?

 

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