【2巻発売中】TSしたから隠れてダンジョンに潜ってた僕がアイドルたちに身バレして有名配信者になる話。~ヘッドショットロリがダンジョンの秘密に迫る配信~ 作:あずももも
「ないない」
ごうごう。
頭の上でかっこよかったお船たちが――戦艦っていう1番強いはずのお船が、燃えさかっている。
「ないないっ」
正面から到達した、オレンジ一色の――炎のブレス。
とんでもない距離でも届いたそれらは、堂々と並んでいるお船たちをぼろぼろにしている。
ものによっては前や横がちぎれたり溶けたりしていて――針金のはばらばらになったりしていて。
「……ないない」
「ノーネーム。大変だろうけど、がんばって」
味方の何隻かに1隻がそんな状態でも、みんな、気にしてないように攻撃を続けていて――少し薄くなったけども、虹のカーテンがふたたびに空を舞う。
「……なんで」
だって姉さん、言ったじゃん。
このお船たちが、ずっと昔から準備してきた切り札なんだって。
「お互いに高出力の遠距離の攻撃手段を持っていたら――こうなるんだ。戦艦の装甲ってのは、基本的に自分の攻撃に何回も耐えられる設計になっている。だって、自分の強さの敵と正面から撃ち合えなかったら意味がないから。……けども」
ばさり。
どうやら僕たちを守るため、翼をわっさり広げてくれていたらしい姉さんが、壊れたから渦に入って逃げていくお船たちを見上げている。
「……あれらみたいに遠距離砲戦に特化する段階に入ると、もう回避する以外では損害はこうむるようになる。攻撃力の進化は、防御力のそれを置いてきぼりにするんだ」
傷ついたお船たちが渦に入ったり、入る直前でまだおしりが出てる状態で――またオレンジの壁がお船たちを包んでいく。
宙が、紅に染まる。
また、たくさんの船が溶けていく。
「……ない、ないっ……!」
【ノーネームちゃんが……】
【ないないってことは……】
【これ、ノーネームちゃん居なかったらやばいんじゃ】
【だよな……】
【おろろろろろろ】
【居るからこその作戦なんだろう けど、おじゃるにすら優しいハルちゃんにとっては……】
「この配信を観ている多くの世界の君たちも、手には入れているだろう? 特に科学文明なら『配信』にたどり着いた時点でその程度の技術は持っているはずだ。――全部を暴発させたなら、少なくとも自分たち地上の存在を抵抗する間もなく破壊し尽くす、超遠距離攻撃手段を。近くの衛星程度なら、月なら、余裕でダメージを追わせられる兵器を。そこまででなくとも、使えば都市ひとつをたった1日で火の海にできちゃう魔法や爆弾を」
姉さんが、つぶやく。
……そうだ。
この場面は、たくさんの人が見ているんだ。
【もしかして:ICBM】
【核弾頭搭載の……】
【おろろろろろ】
「ずっと準備、してたんですよね」
「――ハルの存在がなければ、彼らはこのあと敵部隊へ突撃する作戦だったんだよ。たとえ全滅しようとも、質量で押し潰して同等以上の被害を出させる形でね。索敵スキルで見てみるといい――敵のドラゴンたちは、かなりの速度で接近しながら攻撃を続けてるはずだよ。これは、魔族が取る戦法だからね。魔力さえあれば復活できるからこその、さ」
姉さんが言うとおり――数え切れない数が、壁になって向かってきている。
……自分たちが倒されるのも承知の上で、こんなことを。
「……そんな」
「そもそも魔の存在は、魔力さえあれば死の概念が薄い。対して人間――天の生み出した存在は、血と骨と肉で頑丈だけどもろく、肉体が破壊されると魂が空へ昇ってしまう。そんな私たちが魔に対抗するには――ハル」
姉さんが――今の僕と同じ顔なはずなのに、気を抜いてると「眠そう」ってみんなに言われる顔なのに、見開いた目で言う。
「ノームとノーネームのシステムで可能な限りは守ってるけど――これは、戦争なんだ。それも、世界を真っ二つに分けての生存競争。――さらに、相手の目標は私たちの絶滅という、ね。生存競争でトップ同士の戦いに勝利したから止まらなくなった彼らは――暴走している。なにがあろうと、最後は単細胞生物までを根絶するんだ」
「………………………………」
【 】
【ひぇっ……】
【マジかよ】
【だから、本来ならあの戦艦群が敵へ突撃して相打ちって】
【末期戦……そうだよな この世界は魔王が勝利した世界なんだよな】
「……魔王がかなり気に入っていたみたいな君が対話をしようとしてくれたけど、それでも駄目だった相手が親玉なんだ。その魔王が動けるようになろうとそうでなかろうと、この戦いはどちらかの殲滅でなければ終わらないんだよ。……みんなが見ている。泣かないでくれ、ハル」
「………………………………」
泣いてない。
泣こうとなんて、してない。
……僕は男なんだから、人前で泣いたりするもんか。