【2巻発売中】TSしたから隠れてダンジョンに潜ってた僕がアイドルたちに身バレして有名配信者になる話。~ヘッドショットロリがダンジョンの秘密に迫る配信~ 作:あずももも
「……ごめんね? 私、ずっと見ているしかできなかったから思わず」
「良いんです。誰だって泣きたくなるときくらいありますから」
特に女の子はね。
ノーネームさん――はともかく、それ以外の子は結構みんな良く泣くから。
姉さんも、話し方こそ男っぽいけど、雰囲気的には――魂的には女の子だから。
「ハルは、優しいね」
「そうでもないですよ」
「ううん、優しいよ。……生まれたての新しい家族に、もっと早く会えていたら」
「忙しかったんならしょうがないですって」
……なんかこの慰め方、まるで単身赴任で数年ぶりに会った父親に対してみたいな気がする。
まぁ僕の父さん、単身赴任とかしたことないけどさ。
――――どぉん。
ひときわまばゆい光が――戦場の隅で光る。
「……あれを、身を守るためだけの武器として使ってくれる文明ばかりだったらね」
「あー、あの光がそうなんですか」
炎の光。
けども、球状に爆ぜる光。
「敵との距離的に届かないけど、威力を減衰させるチャフとして使ってるあれは、科学文明では最も手頃な大量破壊兵器。……使い方次第で、身を守るもの。小さな隕石程度なら破壊したり起動を逸らせたりするし、地形を変化させて災害から身を守ることもできる……はずの力なんだ」
「かくぶんれつ」
「……継続的な状態異常を引き起こす魔法……それが、核分裂というもの……卵が引っ込んでしまいました」
【草】
【くっころ、お前……】
【卵はよ】
【そういうのは戦いが終わってからな?】
【けど、ああ……あのひときわ激しい爆発が】
【何発か爆ぜただけでとんでもない炎の玉が】
【え? あんなのを地上にぶっ放したの? どっかの人類】
【そうか 核分裂反応による汚い爆弾……使った世界があったのか】
【あれは、俺たち人類の――今の時点でも、扱いきれない力を持つ現象 その先の技術であり概念の、核融合反応を待たないと……】
【それを、アルちゃんは見てきたのか】
【あるいはそれよりもっとやべー力を……】
【それこそ無数の世界を、数千年以上ずっと……】
【アルちゃん……】
【過ぎた力は、使用者をも蝕む アルちゃんは、それを使った世界を思い出して、真っ先に悲しんで……】
【アルちゃんはね、女神なハルちゃんのお姉ちゃんだから優しいんだ】
【そうだよな】
【自分がちょっとおかしい力を持ってることも認めないくらいの女神のお姉ちゃんだからね】
【草】
【今!! いいところ!!】
【何年も救助要請に無償で応じる上に身分を隠し続けてきたわ、身バレしても誇らないわ、投げ銭も返すわ――自分たちを攻撃してきた合衆国の新型兵器も許すわ アルちゃんもそうだけど、ハルちゃんも……】
【ハルちゃん……】
【ハルちゃんはね 優しすぎる子なんだよ】
【ああ】
【優しすぎて――だから、たまたま訪れた世界の地球で、10年のあいだ人目につかないようにしながらダンジョンを攻略してモンスターを倒して、ついででダンジョンに隠れながらお酒を飲んだり温泉――ホットスプリングとか温泉を満喫して移動し続けて、比較的安全な島国にたどり着いても日本酒を満喫してたんだよ……満喫しすぎてお姉さんたちのこととかも忘れるくらい脳みそをふやかしちゃって……】
【草】
【草】
【最後!!!】
【だってぇ……】
【ま、まあ、どこの場所でもアルコールは求めてただろうから……】
【へべれけハルちゃんだからね……】
【※猫にアルコールをあげるのはお控えください】
【※猫どころか人間でもアルコールは少ない方が良しとされています】
【※え、でも適度なアルコールは体にいいって本に書いてあるんだけど】
【※今の研究では、それは恣意的な――あるいは本気で前提条件を間違えてた研究のせいで、実際は1mgでも少ないほど健康的に長生きできるそうです】
【※そんなぁ】
【※信じて呑んじゃったよ……】
【※俺の肝臓、そろそろないないなりそうなんだけど】
【※つよくいきて】
【草】
【ハルちゃんはお酒が好きだからね……】
【あくまで上位存在?な女神様だからね 普通の人間がマネしちゃダメだからね】
◇
「敵本体がかなり近づいてきた……けど、お互いに戦力は半減。みんな、もうひと踏ん張り――だけど、無理はしないで。いや、あえて言うよ……無理をされると、この子たちが救出で魔力と演算を消費し続けてとても大変だ。だから可能な限りに無事なうちに撤退して」
ばしゅううう、ばしゅううう。
頭上を色とりどりの光線が飛んで行き、正面から頭上へ炎のブレスが飛んでくる。
その勢いはお互いに収まっているはずなのに、距離が近づいた分威力を抑えて連射しているのか、より激しい砲撃戦になっている。
「………………………………」
「このあとは、相手もこのサイズとレベルのドラゴンを寄こせないはずだ。次第に小型のそれらになるから、事前の通りに巡洋艦や駆逐艦のような小型の……」
僕たちを白い羽で守りながら、指揮を続けている彼女。
「ないない……ないないっ。ないない……」
「先輩、汗が……失礼します」
致命傷を負うはずだった人たちをないないし続けているノーネームさん、汗だくになっている彼女のほっぺやおでこを拭ってくれているくっころさん。
――ただ守られているだけの、僕。
僕は……なにも、できない。
魔力もなにもなくなっていて、だから――。
『ぎ』
『ぎぎっ』
「?」
上空で飛び交う力で気がつかなかったけども、振り向くとそこにはあのときのドラゴンさんたち。
――そして、彼らの後ろに曳航されてきたものは。
「おじゃるさんの……玉……」
高濃度の魔力で静かに光り続ける――以前に見たよりもずいぶん小さくなっているけども、それでも僕なんかよりはるかに大きな球が、浮いていた。