【2巻発売中】TSしたから隠れてダンジョンに潜ってた僕がアイドルたちに身バレして有名配信者になる話。~ヘッドショットロリがダンジョンの秘密に迫る配信~   作:あずももも

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696話 僕の死体があった

「ふぅ……っ」

 

たくさん吸い込んで染み渡っていく魔力。

 

それはまるで、深呼吸をするときに肺がいくらでも膨らんでくれるような爽快感と高揚感を与えてくれるもので。

 

あるいはいくら食べてもおなかがいっぱいにならなくって飽きないごはん、それともジュースからお酒までをたらふく二日酔いとかトイレなんて気にしないで真上を向いて流し込める幸福。

 

寝食を忘れて本を読みふけって情報が活字と一緒に脳みそにどばどばと入り込んでくる感覚、それとも連続ドラマを終わりまでぶっ通しにして現実を忘れる感覚。

 

それともやっぱり、毎日を楽しんで晩酌をして良い気持ちのままに寝付く直前の、布団の中でのとろとろとした気持ち良さ。

 

そういう自然な心地良さが、おじゃるさんの球から流れ込んできている。

 

「………………………………っ」

 

……今、一瞬意識が飛びかけた。

 

気を抜くと「流れ込んでくる魔力そのものに溶けて霧散しちゃいそう」。

 

でも、大丈夫。

 

僕は良くみんなから「ちょっと変わってる」だとか「唯一無二」だとか言われるんだ。

こんなこと程度で溶けるくらいなら、僕は普通の社会人として違和感なく溶け込めていたはずなんだ。

 

母さんも言ってたんだ、『あんたは好きなように生きな。……どうせ真面目な顔してたって、あんたはしたいことしかしないんだから。どっかの神様のお墨付きだよ』って、就活のスーツ姿な僕を見て。

 

……あれ?

 

「神様」?

 

【!?】

【うおっまぶしっ】

【今一瞬ハルちゃんが見えたような】

【おろろろろろ(先行入力】

【え? ハルちゃん、何やってるの……?】

 

【もしかして:ハルちゃん、どこぞのちょうちょみたく高エネルギー体を無邪気に触ってえらいことしちゃってる】

 

【草】

【草】

【ああ、幼女……】

【そうだった、ハルちゃんは幼女だったんだわ】

【もうだめだ……】

 

「――――――ハル!? いけない、すぐに引き返して! そのままだと『本来は私たちとは違う』君は、幾重にも折りたたまれた世界そのものに飲み込まれる! 君が、消えてしまう!」

 

姉さんの叫ぶ声が遠くから聞こえる。

 

でも大丈夫。

 

僕は、溶けないから。

 

だって――11年前にるるさんを庇って■んだあとでも、こうして「■ぬ前の記憶」もしっかりと持っているんだし、さらにはTSして幼女っていう別の肉体になっているのにぜんぜん変わらずに連続した「僕」として■■■いるん

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「?」

 

僕は、真っ白い空間で目を覚ました。

 

「どこ? ここ……」

 

顔を振ってみるも、どこを見たって真っ白。

まるでさっきの真っ黒な宇宙空間が裏返ったよう。

 

不思議な感覚。

 

「んー? ……わっ」

 

とりあえずで羽をぴこぴこ動かしてみたり、むんずと頭の上の輪っかをつかんで振り回していたら――僕の真後ろに、誰かが居た。

 

思わず輪っかを取り落とすほどにびっくりした。

 

けども僕は男だから、るるさんたちとは違ってびっくりしても声はそこまででないし、駆け寄ってきて抱きついたりすることもできなくって、ただただ目を見開いて見つめるだけなんだ。

 

「………………………………」

 

そうしてしばらく。

 

「その人の」見た目に、ふと思い当たる。

 

「……僕?」

 

僕だ。

 

男だったときの僕。

中学生くらいのときの僕。

 

眼鏡をして、安いとこで切った微妙な髪の毛をしていて、学生服を着ていて、影の薄い男子生徒B。

 

それが僕だ。

 

目の前にふよふよと浮かんでいる、僕だ。

 

「?」

 

けど、なんで僕がこんなとこに?

 

まぁそれを言ったら、今ここに居る幼女の肉体になってる僕もだけどさ。

 

「おーい。……寝てる」

 

しばらく声をかけてみたけども、目を開けない。

 

なんでだろ……まぁいっか。

 

「それよりここ、ほんとにどこ……?」

 

ふよふよ、ふよふよ。

 

ひとまずとして顔とか体とかをぺたぺた触ってみるも、これはもうすっかり慣れちゃって逆に男に戻ったらため息つくこと間違いなしな、小さくてすべすべでちょうどいいしっとり感を感じることで、夢じゃないことはまちがいないっぽい。

 

けども……うーん?

 

『――――――……』

 

「?」

 

何かの声が聞こえた気がして、中学生の僕が居たところを振り返ってみる。

 

「………………………………」

 

「え」

 

そこに居たのは――いや、「在った」のは。

 

なぜか足元がぽっかり空いて、ひゅんって真っ暗な穴に落ちていく恐怖でおなかが冷たくなりながらも、隣で泣き叫ぶるるさん――小さいるるさんを抱きしめながら、「次はこうならないといいなぁ」って思って息ができなくなったころになにかとてつもない大きなものに叩かれた気がして、

 

死体。

 

脚が折れ、背中も折れ、首も折れている死体。

 

僕の死体。

 

眼鏡が近くで砕け散っていて、口からはちょっと血が出ていて。

 

けども目を閉じながら落ちてたおかげか、うっとなる怖さはなくって。

 

「あ、そっか」

 

僕、あのときに――るるさんを助けた代償として死んでたんだ。

 

……じゃあ、今の僕って?

 

中学生からずっと続いてた記憶のままに嫌々ながらに就活をして社会人やってて、ある朝になぜか幼女になった僕って――――――「何」だろう?

 

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