【2巻発売中】TSしたから隠れてダンジョンに潜ってた僕がアイドルたちに身バレして有名配信者になる話。~ヘッドショットロリがダンジョンの秘密に迫る配信~ 作:あずももも
「あっ……」
「はる、ないない……」
「え? 姫が……消失?」
【えっ】
【えっ】
【いやいや、ご冗談を】
【でもアルちゃんが完全に硬直してるぞ】
【え?】
【もしかして:ハルちゃん、あの球の中に入って溶けちゃった】
【おろろろろろ】
【本気で気分が悪くなってきた】
【嘘だよな? 嘘だと言ってくれ……】
【こんなギャグみたいな終わり方なんてあるはずがないよ まさかこれまであんなにしぶとかったハルちゃんが、興味本位で手を出した魔力の球に吸い込まれちゃうだなんて……】
【草】
【生やしてる場合じゃないんだが】
【ごめん、事態の深刻さが飲み込めてないから笑っちゃう】
【感情が追いつかないんよ……】
【ハルちゃんの配信は常に感情のジェットコースターだからな】
球。
数十の世界を「圧縮」して「抽出」した、純粋な魔力というエネルギーの塊。
そこへ――なぜか自分から吸い込まれた、ハル。
そんな「弟」の奇行を理解しようとして理解できず、リアルタイムで入ってくる戦場のそれぞれからの通信も通り抜けている、ハルと瓜二つの女神、アル。
「ないない……ないないないない……」
ぽろぽろ。
ひたすらにつぶやきながら、表情は変えないまま涙だけを流しているノーネーム。
「そんな……だって姫は、私の狼藉にも何度だって……」
ぽつり、ぽつり。
目を見開いたままノーネームにすがり付く形になっている、くっころ。
【なかないで】
【この悲しみ方は、本当なのか……】
【え? ハルちゃんの冒険、ここでおしまい?】
【そんなぁ……】
【やばい 手に力が入らない】
【俺も……】
【なぜか立ち上がれないんだ】
【みんな落ち着け、まだ戦いは続いてる】
【そんなこと言ったって……】
――上空では刻々と激しくなる戦いが繰り広げられているにもかかわらず、その戦いを指揮するはずの女神たちが機能を停止。
そこへ、
『――――――GAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!』
「……っ!? まずい、みんな緊急――――――」
宇宙そのものの咆吼とすら感じる轟きとともに、戦艦群が漆黒のブレスに飲み込まれる。
そのブレスはこれまでのオレンジ色のものの数千倍の領域を包み込むものであり――
『……め、女神様! 艦隊損耗率、80%に……!』
「……しまった。たったの一瞬で……魔王はすでに体勢を立て直していて、私たちが他のことに気を取られる隙をうかがっていたか……」
「ないないないないないないないないないないない」
ノーネームが羽を広げながら数十万の命を移動させる。
【!?】
【えっ】
【80%!?】
【あの、今、一瞬で……】
【黒いブレス……今までのはせいぜいが船1隻を飲み込む程度……いや、それでもぶっといにもほどがあるけど、その程度だったのに……艦隊の大半を飲み込むサイズの攻撃って……】
【ハルちゃんが引っ叩いたはずなのに】
【不死身かよ……】
『……ハル。あれは幼く、だからこそ美しかったが……幼いゆえに、儚かった。口惜しい……我であれば、どのような手段であれ喪うことは避けられたというに』
地の底から浮かび上がるのは、ハルが引き金を引いたときの半分の体積にまで縮小しつつも――それでもなお小型の惑星に比肩する全長を誇る化け物/モンスター。
ドラゴン。
魔王。
『あの攻撃は……成る程、効いた。だが、それまでだ』
「……みんな、お願い!」
一瞬にして大半を喪った艦隊は、それでもなお砲塔を旋回させて魔王へ向ける。
その周囲に無数の渦が発生し――次々と、それらと比べたら小型の船たちが飛び出す。
「想定よりも魔王は強くなっていた……そしてごめん、私が気を逸らしたばかりにみんながやられちゃった。あとは、もう……」
鉄の船、植物の船、土の船に針金の船。
戦艦よりもずっと小さく、けれども大きさと武装や形が数え切れないほどの変化に富む船たちが、突撃していく。
「……敵も遠方から戦力を補充できるけど、それは私たちもだ……今動ける君たちが全力で魔王を妨害。そのあいだに戦線を再構築すれば、勝機はまだ……」
『GAAAAAA――――――!』
戦場の中心へ、ふたたびにブレスが――さすがに連射だからか先ほどの10分の1程度の威力だが、それでも途方もない魔力ですべてをなぎ払う力。
けれども――
【すごい】
【みんな結構避けてる】
【巻き込まれたのも結構……】
【でも、さっきよりは全然だな】
【さっきの攻撃は、実は動けるようになってたけどハルちゃんが怖かったからじっと待ちながら溜め込んでた大技 んで今のは通常攻撃のブレス……ってとこか?】
【なるほど】
【それにしたってやべー威力だけどな】
【けど、今飛び出してきたのは小型艦だから戦艦よりは小さくて回避しやすいのか】
【あー】
「……みんな。ノーネームたちががんばってなるべく救うから――数年、あるいは数百年かかるけど、必ず別の場所へ逃がすから。私たちみんなのために、1秒でも時間を稼いで」
女神は、明らかに顔を青くしながらも毅然と戦いの方針を告げる。
その姿に心を打たれた人々は、決意を新たにした。
必ず、魔王を倒す――――――と。