【2巻発売中】TSしたから隠れてダンジョンに潜ってた僕がアイドルたちに身バレして有名配信者になる話。~ヘッドショットロリがダンジョンの秘密に迫る配信~   作:あずももも

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7話 僕のおかげで無事だったらしい子と、その保護者さんと、ふて寝した僕に迫る彼女たち

衆人環境での公開説教。

 

ごつごつした床に正座するという最大限の誠意を示す深谷るると、それをため息をつきながら見下ろす三日月えみ。

 

彼女たちの配信では日常のものだった。

 

「るる……本当にあなたって子は……」

「だって大丈夫だって思ったんだもん」

 

【公開お説教草】

【結構な事件で周りの配信者たちからも360°囲まれてて草】

【ドラマの収録かな?】

【家族ドキュメンタリーだろ】

【草】

 

「みなさん、本当に心配していたんですよ?」

「だってマネージャーちゃんも良いって言ったもん!」

「悪いと思っています?」

「あ、うん、心配かけちゃったもんね」

 

【素直るるちゃんかわいい】

【全世界生中継お説教草】

【まぁるるちゃんだし……】

 

【でも結局いつも通りで草】

【罠踏んでやらかすいつも通りでしかない】

【実家のような安心感】

 

周囲には人だかり……彼女と、見つかっていないもうひとりを探すために来た救護班や近くのダンジョンに潜っていた彼らは、まるで緊張感のない説教を聞きながらひと息ついていた。

 

「いや、しかし良かった。こんな状況で奇跡だな」

「おっと気をつけろ、さっきその辺に天井が崩れてきたぞ」

 

「悪い。しかしたったの2発でこれだろ? どんだけの威力だったんだ」

「ここのドラゴン……耐久高いから普通の代物じゃねぇな。 それに天井まで少し剥がれて……極大魔法でもぶっ放したのか?」

 

「壁際もかなり崩落している。あまり近づくな」

「でも、彼女を助けたっていうもう1人も探さないと……」

 

【モブっぽく話しているけど、先月の配信同接ランキングトップ500に入ってるやつも結構……そうそうたるメンバーだな】

【同接目的で他のも結構来てるけど、自分の仕事投げ出して来てるから偉い】

【こういうのは良いよな】

 

【でもさ  それが「るるちゃん捜索隊」ってのがまた良いオチだな】

 

【草】

【るるちゃん捜索隊草】

【まるで企画みたいになって草  本当の事件だったのに】

【それで何にも間違っていないからもうそれでいいや】

 

「でもでも、本当に何回も潜って良いか聞いたもん! それで大丈夫だってマネージャーちゃんもみんなも言ってたもん! アクティブなモンスターも通常の1割でソロでも大丈夫だって! 入るときの守衛さんも! えみちゃんだって『がんばって』って言ってたじゃん!」

 

【子供みたいなでもでもだってがかわいい】

 

「はぁ……それ、るるの運の悪さ、自覚しても言える?」

 

「もう言えない」

「でしょうね」

 

【るるちゃんが反省しているだと……!?】

【あの顔で踏まれたい】

【リーダーえみちゃんに見下されたい】

【お世話されたい】

 

三日月えみから救助され、周囲から心配されながら医療班に応急手当をされ――「すり傷程度ですね」「頭も打っていませんし大丈夫でしょう」「これだけの崩落で奇跡的に出来た空間で良かったですね」と肩透かしな、それでいて安心できる診断が下りたことで、ここだけは緩い雰囲気。

 

三日月えみ――切れ長の目、鍛えられた体に母性の象徴、世話焼きな性格。

 

深谷るるがいちばん高い頻度でパーティーを組む……もとい危なっかしすぎるからメインで組まされている、そのリーダー。

 

彼女は良く、本当に良くこうしてるるを叱る。

軽いものから本気のものまで、配信で1回は必ず。

 

【やっぱりお世話係がいなきゃダメだよね、るるちゃんって】

【どんだけ気をつけていても罠踏み抜くるるちゃんにゴーサイン出したマネージャーさんその他が悪い】

 

「……確かにそうなんです……だから怒りきれないんです……この子なりに予備の装備をいつも持って、講習などに出てがんばっているのは知っていますから……」

 

【草】

【えみちゃんなかないで】

【ないて】

【ぺろぺろ】

 

「えみちゃんぺろぺろしていいのは私だけなんだから!」

 

「るる?」

「ひゃいっ!」

 

【草】

 

深谷るるは三日月えみの前では子犬でしかない。

 

やんちゃすぎて手がつけられなくて、でも性格は良いし人懐っこいし言うことはちゃんと聞くという……本当に扱いに困る質の。

 

【でも良かった、この様式美がまた見れて】

【もうダメかって思ったもんなぁ、本当】

【結局見つかんないの? 助けてくれたのって】

 

「……ええ、そうですね。崩落の危険もあると言うことで、そろそろ撤退しなければならなさそうですし……」

 

叱られてしゅんとしている深谷るるを放っておいて、三日月えみは辺りを見回す。

 

僻地の中規模ダンジョン、77層。

 

なんでも初心者から中級者が低層に潜るのに適した程よいダンジョンらしいそこは、深谷るるが帰省先での思いつきで入り込んでしまった場所。

 

――もちろんマネージャーさんもそれを知っていたし、ダンジョン内のアクティブモンスターの情報とかるるの装備とかを知っていて、許可したはずなんだけど。

 

ごく普通のダンジョンでも、50階層を超えると難易度はひとつ上がる。

 

ユニークモンスターも出やすくなるし罠も増える。

 

――でも、ダンジョンの更新時期だから罠もモンスターも大半は出尽くしているはずなのよね……まぁ「るるだから」って言えば不思議はないんだけど。

 

【この人数で30分くらいかけて探して居ないんならもう帰ったんじゃ?】

【仮にケガとか重傷だったとしても、どっかに装備くらい落ちてるはずだもんな】

【意識失ってたら自動で救急へ通報も入るんだっけ?】

【そうじゃないってことは大丈夫なはず】

 

「その人の装備は本当に無かったんですね?」

「ああ。俺たち救助隊も彼女の証言から飛ばされたと思しき方向の瓦礫を見たが、何も」

 

「あのっ、小さな女の子だったはずなんです! 大きいローブで王冠の!」

 

がばっと立ち上がって……一時的に気を失っていたらしく、少しふらついて救護班に腕を支えてもらいつつも、彼女は主張する。

 

「るる……帰ったら精密検査、受けましょうね」

「えみちゃんなんでそんな優しい声出すの!?」

 

【幻覚だと思われていて草】

【実際配信じゃ解像度低くて、金髪くらいしか分かんなかったし】

 

「2発目っ! ドラゴンへの2発目のとき、あの子しゅごおおおおーって飛んできて一瞬目合ったの! 金色で青いおめめのかわいい子!」

 

【るるちゃーん、最初目合ったって言ってない言ってない、横顔見たって言ってた】

【すーぐに記憶捏造するー】

 

「私にほほえんだの!!」

 

【言ってない言ってない】

【あのとき言ってなかったよるるちゃん……】

 

【でも数秒で画面に映らない距離からドラゴンの頭に接近したんだろ? そんな飛行魔法ある?】

 

――レベルの高い私たちなら、カメラで追えないものも認識することができるわ。

 

命のかかった状態で、そんなでたらめなことをしている相手が居たら本能的に追うはず……嘘や記憶違いではないのでしょう。

 

ああ、私もそんな女の子が居たら迷わず抱きしめてその金髪に鼻をうずめて脳天が痺れるまで――こほん。

 

「……けど、今はそんな場合じゃないわね。るる、ほら、担架に」

 

「ん!」

 

ふらふらと座り込み直してしまった深谷るる。

 

……どうやら意識が戻っても腰が抜けたままらしい彼女は、ふくれっ面のまま両手を三日月えみの方に差し出している。

 

「……ん!」

「あのね……」

 

【いつもの】

 

【るるちゃん甘えるの得意だもんな】

【で、えみちゃんはそれに弱いお姉様属性】

【お姉様……はあはあ】

 

「……仕方ないわね……」

「やった!」

 

「……改めましてみなさん。救助隊や救助要請で駆け付けてくださった方々、本日はありがとうございました」

 

「ました!」

 

るるが「やっぱり担架はやだ」と言い出したためか、おんぶをし、されている2人からの声が響く。

 

「この通りるるは無事です。……二次被害の可能性が高いので、この子を助けてくれた方の捜索は中断。以降は私の事務所の者たちが責任を持って行います」

 

その声を聞き、ある者は残念そうに、ある者はぱらぱらと振り続ける天井からの小石を避けつつほっとして。

 

「あ、あのっ! お礼、マネージャーちゃんから出ますから!」

 

「まぁ無事で良かった」

「しかしドラゴンを2発で……そんな遠距離専門居たかな……」

 

「いや、確か居る。たまに救助要請で今回みたいに姿も声も出さないで助ける変わり者がいるらしいと、俺のリスナーが……」

「ああ、俺も聞いたことが……」

 

 

 

「あたまいたい」

 

やっぱあんだけぶっ放した後にお酒呑みながらお風呂入ったからかなぁ……。

 

あー、MPゼロの頭にアルコールががつんって効くー。

 

……体にまとわりつく長い髪の毛がうっとうしい。

 

感覚の鈍り始めた成人とは違って、幼くて触覚に敏感な肌の感覚がぴりぴりと痛い。

 

「魔力も使いすぎた……」

 

こりゃあ、1ヶ月は本調子に戻れないなぁ……。

 

緊急出力で飛んだし、今度こそって弾にも、ものすごく魔力込めちゃったからなぁ。

 

ボスモンスター相手にゼロ距離射撃――僕が撃った弾でHPがミリ残ったドラゴンが、あの子に倒れようとするっていう変な動きをして。

 

だから急いでぶっ放した僕はすごい爆風にあおられて、あの直後天井に空いていた穴から77層の上の76層に飛ばされた。

 

消えそうな意識を、緊急脱出装置の作動を止めるためにって無理やり息止めてつなぎ止めながら。

 

ほら、授業中どうしても眠くなって、でも寝ちゃいけないときのあんな感じってあるじゃん?

 

学生時代に編み出したんだよねー、息止めて死にそうになると意識はっきりするって。

 

だから76層に着いても動けたんだけど……でもなんで天井に穴が?

 

おかげで地面に叩きつけられて痛い思いしなかったし、なによりあの子に見つからずに済んだけど……なんで?

 

爆発で空いたのかな……実戦で1回も使ったことない威力のだったし、僕のせいかもしれないけど。

 

――緊急事態ってことでほぼ全力を出し切っちゃったせいでふらふらだった僕。

 

リスナーさんからその子が……名前はもう忘れたけど……大丈夫そうで、もうすぐ捜索隊が来るって教えてもらったから配信オフにして緊急脱出装置でするっとあなぬけ。

 

そこからまたひーひー言いながらはいずるようにしてアパートに帰ってきて……ごらんの有様だ。

 

魔力……つまりは精神力と体力がほぼガス欠でもうだめ。

 

「もっかい寝よ……」

 

動くのもだるいけど、お風呂上がりで結構汗かいてる。

 

カゼ引いたら困るから、着ていたシャツを脱いでべちゃっと投げつけ、新しいのをふわっと着直す。

 

――金色に輝く長い髪の毛の下にかすかな膨らみが2つ。

 

一応揉めるけど、手のひらに収まるってのとはほど遠い……って言うか多分ただの脂肪の範囲でおっぱいじゃない。

 

いくらがんばっても筋肉が付かなくってぽっこりしてるお腹につるつるの太もも。

 

ぶらぶらしないお股。

 

それを、しばらくじーっと見下ろす。

 

「……着替えるときだけは便利だよね、この体……ふぁ」

 

そうして女の子になった僕は、ひと仕事を終えた満足感で寝直した。

 

 

 

 

上層へ引き返している最中。

 

救護班の1人が三日月えみへ話しかけてきた。

 

「三日月さん。そう言えば瓦礫の中にごく最近落としたと思われるパスケースがあったんです」

「パスケース……ですか?」

 

「ええ、ごく最近というか、ちょうど今日のダンジョン入場許可証の入った」

「え、そんなの見せて良いんですか? 私たちに」

「はい、私は『上からそう言う許可をもらっています』から」

「ふーん」

 

「でも、『彼』は朝に入った記録がありますし、多分落としたことに気が付かず帰っているかと……ですので無理にとは言いませんが」

「……事情を訊くかもしれません。 見せてもらっても?」

 

「ええ、この後の捜索にご協力いただけるのでしたら『臨時の救護班』として権限を付与して……と思いまして」

 

「るるも平気そうですし、もちろん」

「私も!」

「では少しお待ちくださいね、本部に伝えておきますから」

 

ダンジョン。

 

そのへんに落ちている石ころでも地球上になかった新しい物質だったりと、各国が民間人に開放してまで集めたい資源のある空間。

 

それに関する法律はかなり超法規的措置が多く、さらにダンジョンへ潜る人材の保護に関しては現地での判断が優先されるものも多い。

 

だから「彼」が今回の件で被害を受けたまま帰った可能性がある以上、当然ながら「救護班の司令所」からの判断は即決。

 

――でもそんな権限、救護班にあったかしら……?

 

えみがそう考えるも、大したことではないとすぐに意識外。

 

「……下りました。恐縮ですが、三日月えみさん、深谷るるさんは私との臨時のパーティーということで」

「ええ、リーダーはお任せします」

 

ぺこりと頭を下げ合う救護班と三日月えみ。

 

「じゃあそのカード、もう見て良いの?」

「はい、どうぞ」

 

「……るる、配信は切ったわね?」

「うん、もちろん」

 

「……念のために他の人に預けて行くわよ、カメラ」

「えー?」

「るるが触れたものは大体何か起きるでしょう?」

「そうだねぇ、ハルちゃんって子もちょっと映っちゃったらしいし……」

 

近くに居た知り合いにぶんぶんと手を振って呼び寄せ、3台のカメラを預ける深谷るる。

 

「……こうでもしないと安心できないのよね……」

「それでそれで見せて! ……普通の男の人?」

「そうね。 大学生くらいかしら」

「いえ、社会人の方のようです」

 

――そこには、「征矢春海」と書かれていた。

 

「なんて読むの、えみちゃん」

「ええとローマ字の方だと……そや『はる』みさん、だそうね」

 

「へー、そのカード、住所とか載ってるんだね。 知らなかったなぁ」

「特殊な機器を通さないと表示されませんが、今は表示させています」

 

「ほえー?」

「そんな機能があったんですね。 知りませんでした……でも、結構近いわね、ここから」

 

「ええ、住所を検索しますと、最寄りのバス停から2駅のようで……」

 

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