【2巻発売中】TSしたから隠れてダンジョンに潜ってた僕がアイドルたちに身バレして有名配信者になる話。~ヘッドショットロリがダンジョンの秘密に迫る配信~   作:あずももも

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699話 僕の知らなかった/知っていた/忘れていた/消えていた、記憶

『――るるちゃんの近くに居ると、ケガするもん!』

 

『「のろいさま」は、こわいもん……』

 

 

『優しいねぇ。これ、一緒に食べてね』

 

『……忙しいこの時代、小さい子へ優しくできるってのはね。とっても――大切なことなんだよ、お兄さん』

 

 

『大丈夫。僕、幽霊さんとか怖くないから』

 

『うん。分からないよね。だから、『偶然』。不幸な目に遭っちゃった人にはかわいそうだけど――それも、やっぱり『偶然』。君は、たまたまでそういう人たちの近くに居た――ただ、それだけ。そういう偶然な幸福も不幸も、あっちこっちにある。僕は、そう思うよ』

 

『少なくとも僕は……るるちゃんのことは怖くはないかな』

 

『……このあとすぐに、大ケガしても?』

 

『大ケガしても』

 

『ほんとにほんと?』

『うん、ほんとう』

 

『嫌いにもなったりしない。だって、ただの偶然なんだから。それこそ「事故」ってやつだよ』

 

『それでも、笑ってよう』

 

『思いっ切り悲しんで、怒って、泣いたら……すっきりするから。そうしたら、また次のすっごく悲しいときまでは、笑ってよう』

 

『いくらでも泣いて、いくらでも怒って。……そうしたら、あとは笑うだけだよ。笑ってればきっと、どんな形でも友達はできるよ。友達って言ったって、なにも毎日そばでしゃべるだけが友達じゃないんだ。たまに思い出してさ……手とか振るだけの関係だって、ちゃんとした友達だよ』

 

『……それは……はる……お兄ちゃんも、同じ……?』

『うん。だって、もう僕たち』

 

『――――――――――もう、友達だよ?』

 

 

『……おばさん。働いてる人用のバックヤードとかありますか』

 

『……はる』

『……テーブルの下に潜るよ。避難訓練と一緒だ』

 

 

『るる、知ってる。それ、ゲーム世界転移ってやつ』

 

『すごいすごいっ! はるってすごい!』

『僕……投げるのとか下手だったはずなのになぁ』

 

 

『うん! ……あ、宝箱! 見て、奥に!』

 

『あ、そうだるるちゃん。ゲームとかでは宝箱を開けようとすると――――――』

 

『ほ?』

『――きゃああああ!?』

 

 

 

 

 

――――――ぐしゃっ。

 

僕は最後に何かを聞いた気がして

 

 

 

 

 

 

 

 

『いたい……』

 

『いたい……』

 

『けど、生きてる……』

 

『はる?』

 

『はるが、守ってくれたんだね』

『ありが、』

 

『………………………………』

 

『………………………………』

 

『……はる』

 

『息、してないよ』

 

『首が、変な方向に』

 

『               』

 

『――――――あああああああああああああああああ――……!?』

 

『あぁぁぁぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛――――――!!!』

 

『あ゛――――――――――――!!!!』

 

『るるの』

 

『わたしのせいで』

 

『はるが』

 

『……………………あぁぁぁぁぁぁぁぁ――――……』

 

 

――僕の目の前には、大きな岩。

 

たぶん上から降ってきたんだろうそれは、「何か/◆◆◆◆/僕/知らないもの/知ってるもの/別たれたもの/腐った肉塊」を押し潰している。

 

 

 

『……おねえちゃん……だれ……?』

 

 

【治癒魔法】

 

【ゴメンネ】

 

【治癒】

 

【治癒】

 

【治癒】

 

【治癒】

 

 

『……痛く、ない……じくじく、しない……つめ、戻ってる……』

 

 

『……あー、僕もそういえばごはん、全然食べてなかったなぁ。……ちょっと、1袋だけ分けてもらっても……良いですか? なんだか今日は梅干しの気分なんです』

 

『……それは、楽しみです。僕も、すっごくぺこぺこなんですよ。一緒に食べましょう』

 

 

『……神様だったら、なんで』

 

『……ううん』

 

 

『……優しい神様。そうなれるよう、がんばりますね』

 

『……別れる前に、言わないと。一緒に住んでた家に戻るって約束、破っちゃってごめん、って』

 

『だから、行きます。ここじゃない、どこかに。……約束は、破ってしまうけれど』

 

 

 

 

『……先生から聞いてるから良いわよ』

 

『そっか』

 

るるさんのことで一瞬表情が――気まずくなった僕は、その後にはすぐに、その直前まで読んでた本の内容を反芻するモードに入っていた。

 

『……息子さんの脳――無意識の領域が、彼の心を守るために記憶、認識を「都合良く」改竄しているようで、やはりダンジョン関係は認識できていませんね』

 

『改竄……』

 

『自己防衛本能のようなものです。思い出すだけで心を傷つける記憶を、心へ近づけまいとする、ね』

 

『――お母様たってのご希望で彼へもひととおり説明しましたが、ダンジョン関係は、無意識でそうせざるを得ないほどのトラウマのはずです――「人」が抱えきれない重責を、息子さんは……中学生で背負っているということです。ご自宅でも思い出させることは、可能な限りにお控えください』

 

『彼が「自然」に思い出すまで――日夜ニュースで「ダンジョン」が連呼されているこんなご時世では難しいとは思いますが、それでもできる限りにダンジョンやモンスターの情報からは遠ざけて、医学でも魔法でも不可能な「心の治療」を。ご家族と静かに何でもない日を過ごすという大切な日常を送ることによって、大怪我が時間経過で治るように、ゆっくりと。何十日、何百日――何千日かかるかは分かりませんが、いつの日か時間が解決してくれると信じて』

 

『……分かりました。うちの子は、本の虫ですから――ええ。「本さえ手元にたくさんあれば」大丈夫です。この子、賢いくせに単純なので』

 

『――春海? 誕生日に欲しがってた読書用タブレット、帰りに買ってあげようか。あと、haruzonポイントも同じくらい』

 

『え、ほんと? あれ、高いよ?』

 

『いいのいいの。――だって、あの日は』

 

顔を上げた僕が見えていなかった母さんの顔は――涙でぐちょぐちょになっていた。

 

『あんたの、2回目の「誕生日」なんだから』

 

『?』

 

そのとき――僕は、なにも理解していなかった。

 

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