【2巻発売中】TSしたから隠れてダンジョンに潜ってた僕がアイドルたちに身バレして有名配信者になる話。~ヘッドショットロリがダンジョンの秘密に迫る配信~   作:あずももも

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700話 僕が思い出した過去

結構前のことを結構クリアに思い出してたら、なぜか僕の片手には電子書籍リーダーがあった。

 

「………………………………」

 

中学のときからずっと使っていて――さすがに新しいのには性能的にも容量的にも読みやすさ的にも負けるし、普段は新しいのに浮気をしてる。

 

けども僕の自信として物持ちが良いもんだから、すっかり型落ちもいいところだけど新しいやつと充電ついでに交代で使っている、本が何百冊も入る僕の「宝物」が。

 

通学でも学校でも会社でも、ダンジョンに潜ってるときも――るるさんたちが僕のベッドまで押し寄せてるときも、隙あらば開いて読んでいる、誕生日プレゼントが。

 

「………………………………」

 

 

『……みなさん。先生は、ここに居る君たち生徒だけでも、あの日を生き延びてくれたことが……とても、嬉しいです』

 

『残念ながら……「比較的被害の少なかった」地域から通ううちの学校でも、半数近い生徒はいまだに「行方不明」です。……私は、彼らが全員、今でもどこかで無事だと信じています』

 

『ですが、この中にも――とてもつらい思いをした人はたくさん居るでしょう。ですので、できるだけ「ダンジョン」関係の話題は……少なくとも来年度までは……』

 

 

『……春海君は思慮深くて好奇心旺盛で……』

 

『ですが、導入された「モンスター来襲」の避難訓練では……』

 

 

『えー、みなさんも無事、あの日を乗り越えて大学生となったわけですが……』

 

 

『今どきの大学生なのに、遊びもせず大学と家の往復……それ以外は全部本にかじりついて』

 

『僕にとって本を読むのは遊ぶのと同じことだよ?』

 

『そうじゃないの。……はぁ、良いわ。そういう子だもの』

 

母さんが盛大なため息をつく。

 

呆れられているとも言う。

その方がいろいろと楽だから、結構わざとそう見られるようにしてきたところがあるのは内緒だ。

 

『春海? あんた、就活はどうするの?』

 

『適当に良さそうなとこエントリーしたよ。僕みたいな体力モヤシで地味で目立たない男でも採用してくれそうなとこに。もちろん残業なしで。あ、通勤時間次第ではひとり暮らしするからね』

 

これで生活に最低限必要な時間以外は、全部読書に浸れる。

そういう目論見だった。

 

『……「今流行りの副業」は、やらないのかい?』

 

『いや別に。読書ってすっごくコスパってのが良い趣味だし』

 

『………………………………』

 

『……そう』

 

 

『――そういや征矢君って「ダンジョン潜り」してたっけ?』

 

『………………………………』

 

『ダメですよ先輩、彼、休息時間の読書中には本気でなにも聞いてないので』

 

『無視してるわけじゃなく、連絡事項なら普通に反応してくれるんですけどねぇ』

『悪いやつじゃないんです。ただ本以外に興味がないだけで』

 

『もったいないなぁ……適性さえあれば、その集中力を活かしてそこそこまでは行ける気がするんだけどなぁ、征矢君。だって彼、昇進をしたがらないだけで上層部からはベタ褒めされるくらい仕事できるし。彼も俺たちのパーティーに入れたら、仕事帰りの副業が捗るのになぁ』

 

『ダンジョンの中では普段の鍛え方とかは関係するけどレベルとスキルでいくらでも……ですし、彼みたいな完全なインドアでも結構行けそうですよね』

 

『休日は数冊とか本を読むって言うし、魔法職とか? あれ、頭良くないと難しいとか言いますし』

『それとも戦闘――は、近接職はイメージ湧かないなぁ』

 

『あ、そうだ! ――――――「遠距離職」で、遠くから敵を狙撃してパーティー守るっていうのがぴったりじゃないですかね?』

 

『魔法、弓矢、銃……うん、彼らしいね』

 

『コスパを考えてスリングショットも密かな人気らしいよ?』

 

『石をパチンコみたいに投げる、あれ? 配信映えしないから人気なくない? ただの石ころだし……』

 

 

『――――――これが、ダンジョン……ゲートか』

 

『こんなのが流行ってたんだ。ゲームじゃなく』

『……なんで僕、これまで全然気づかなかったんだろう』

 

『………………………………』

 

『……ちょっと胃がきりきりする。緊張してるのかな、僕』

 

 

 

 

『ふむ』

 

『遠くからちくちく投げれば怪我とかしないし、なにより楽な遠距離職』

 

『僕に攻撃魔法の適性はない……か』

 

『銃は弾が高いし、弓矢は結構体力が必要』

『なら――石ころかな。うん、そこら中に転がってるし』

 

『ふむ……これは実に良い感じの形をしてる石ころ……いや、石さんだ』

 

『君に決めたよ』

 

 

 

 

『……なんか、普通に会社よりも稼げてる……いやまぁ、体力や魔力、武器と防具っていう元手がないし、なによりソロで稼ぎはひとりじめだし』

 

『ふむ』

 

『でも健康保険は会社勤めな方が……いや、平日の普通の時間も潜ってれば、そんなの関係ないくらい儲かりそう?』

 

『………………………………』

 

『よし、なにかあったら会社辞めよっと。それまでは、本の値段とお酒の――普通のランクのなら値段を気にしなくて良い儲けが出る、すばらしい副業をやってよっと』

 

『ダンジョンって……いいなぁ』

『居心地も良いし、週末は1日中潜ってよっかな』

 

『じめじめしてるのって、いいよね』

 

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