【2巻発売中】TSしたから隠れてダンジョンに潜ってた僕がアイドルたちに身バレして有名配信者になる話。~ヘッドショットロリがダンジョンの秘密に迫る配信~   作:あずももも

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710話 【悲報・アルちゃん、ぶち切れて自分から戦場を崩壊させる】

『お前……ハル、お前……魔の頂点を目の前にして、酒盛りってお前……』

 

父さんがおろおろしている。

なにかあったんだろうか。

 

「だって魔力切れになってましたし。どうせ観戦してるしかないですし……それでなんかできないかなって思ってたら、お酒飲んで仲良くなったドラゴンさんたちにおじゃるさんの大切な玉をもらったので、それでちょっと手を出してみたらこうなってたみたいですね。魔力をちょっとでも補給できないかなーって」

 

そのせいで僕、はじけ飛んじゃったみたいだけどね。

あの玉、そんなにすごいものだったんだね。

 

『……ねぇ貴方? ハルくんの魂……どう見ても人間でしかないのよ? 菩薩でもなくって涅槃に行ったこともないのに、ああいう子たちと同じくらい私たちに耐性があるの。宇宙を丸めた魔力の塊でも怖がらずに』

 

『……おう。逸材だな。じゃなきゃアルですら助けられなかったとも言うな。ここまで肝が据わった人間の魂は見たこたねぇ……』

 

よく分からないけども、僕は褒められたらしい。

 

ニュー母さんからはともかく、父さんから褒められると嬉しくなるね。

 

『むぅーっ』

 

『……これっぽっちも動じてないんなら話は早ぇ。この先からアルんとこ戻って助けてやってくれ。――アイツ、1人でも人間を多く残そうと自滅での相打ちを目論んで魔王と殴り合ってやがるんだよ』

 

「む」

 

姉さんが、死ぬつもりで。

それはダメだ。

 

僕の肉親上の姉は居ないけども、新しい肉体の新しい肉親としての姉は姉さんなんだ。

 

「………………………………」

 

僕は、さっき父さんが投げてた魔法陣の先に空いた、ぽっかりと黒い穴を眺める。

「高密度な世界のここがまぶしすぎるだけ」で、きっとあの先は普通の――みんなが戦ってる場所なんだろう穴を。

 

「ふーっ……」

 

僕は、静かに息を吐く。

 

家の中で警戒を完全に解いて、索敵スキルも隠ぺいスキルもオフにしてのんびりしていた天国から、僕の家の外という戦場を意識する。

 

僕は――行かなきゃ。

 

みんなのところへ。

 

――最後にはるるさんのところに帰るって約束を果たす、ために。

 

あ、でも、本物の――第1の母さんのとこにもいい加減顔出せって言われてるんだっけ。

 

………………………………。

 

ま、そっちはそのうちにね。

 

『今のお前さんは、その肉体の魔力が完全に回復した状態だ。……魂に予備の「星」が入ってんのはアルの仕業だろうが、それを使わずともかなり行けるぜ――なにしろ俺の魔力も追加で注ぎ込んであるからな』

 

『娘の肉体の息子に注ぎ込んだ父――あいだぁ!? ぶったわね!?』

 

「つまり?」

 

うるさい方の母さんは無視する。

僕たち父子は、無言の連携を取ったんだ。

 

『――酒をかっ食らって俺のつまみ漁って腹いっぱいになって丸1日ぐっすり寝て元気になったその体で、お前の最も得意な戦い方で魔王を倒してきてくれ。お前の、無茶してる姉と一緒にな。ここの、前なら破裂していた濃度の魔力もたんまりと腹に溜まってるはずだ――存分に戦えるぞ』

 

「分かりました」

 

――――――――しゅいんっ。

 

羽に力を入れると、みなぎってくる力。

 

頭の上の輪っかさんもくるくると回っている。

 

両手には、光る弓と矢。

 

持ち物がなくっても、この体の魔力だけで戦える手段。

 

「じゃ、行ってきます」

 

僕は、ぽっかりと空いた穴に向かって突っ込んだ。

 

 

 

 

『………………………………』

『………………………………』

 

『落ち着いたら子作り、すっか。ハルのこと見てたら久々に子供が欲しくなったわ。まー、早くて数百年とかだろうけどな、同胞達が復活し始めるのも』

 

『アルちゃん、気まずい顔してきそうよ?』

『アイツも神族代表――つまりは大人だ。大丈夫だろ』

 

『ノームちゃんは……普通にかわいがってくれそうね』

『だな。むしろ姉になれて数百年は離れなさそうだ』

 

『……あ。そういえば、あの子。ノーネームって子のこと、ハルくんに言い損ねたわ!』

 

『大丈夫だろ。なにしろあの末息子は動じないことに関しては、あの世界で最も得意な男だからな』

 

 

 

 

「――――ハルの仇ぃぃぃぃぃぃ!!」

 

『ぐふぅぅぅぅ!!』

 

魔力の籠もった真空に、轟音がほとばしる。

 

それはアルが――少し大きくなった状態のハルと寸分も変わらない「まだまだぎりぎり幼女」が、天体サイズの魔王を殴りつけた音。

それはまるでゾウ――いや、ティラノサウルスをネズミどころか極小の昆虫が殴りつけ、最大の生物は盛大にひしゃげ、体育館の端から端へと吹っ飛ぶ――ようなあり得ない出来事。

 

しかしそれは、魔力という超常のの力で実現している。

 

数千年前の「唯一」の生き残り同士の純粋な存在としての殴り合いが、世界を轟かす。

 

『GIII――――!?』

 

『そこ! 女神様の付近は巻き込まれるぞ! 全艦距離を取れ!』

 

その衝撃波で、魔王を守ろうと近づいてきていたドラゴンたちが爆発四散。

 

ついでにそのドラゴンたちを追っていた数十の戦艦たちも動揺し、複数の船で亀裂が生じかけている。

 

【悲報・アルちゃん、ブチ切れ】

 

【そらそうよ……】

【アルちゃんはね……ハルちゃんをそこまで知らないからね】

【ああ……】

 

【どんなときでも気の抜けた無表情でくぴくぴ酒飲んでるくせにしぶといハルちゃんが、あんなギャグで死ぬはずないってこともね】

 

【草】

【草】

【それはそうなんだけど……ねぇ?】

【アルちゃんは真面目な子っぽいし、その前で妹が「じゅっ」しちゃったら冷静さもねぇ……】

 

【かわいそう】

 

【誰が?】

【ハルちゃん以外が】

【それな】

【草】

 

【ノーネームちゃんも冷静だし大丈夫だとは思う  けど、アルちゃんがぶち切れ散らかして戦いがめちゃめちゃなの……お願いハルちゃん、早く戻ってきて……お酒はさっき奉納してきたから……】

 




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