【2巻発売中】TSしたから隠れてダンジョンに潜ってた僕がアイドルたちに身バレして有名配信者になる話。~ヘッドショットロリがダンジョンの秘密に迫る配信~   作:あずももも

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715話 肩慣らしをしよう

僕は、迷ってるうちに邪魔だからってしまっちゃってた光の弓矢を両手に取り出す。

 

「じゃ、ちょっと行って――ノーネームさん?」

 

「や」

 

ぎゅっ。

 

戦場へ羽ばたこうとした僕へ、ノーネームさんが抱きついてくる。

 

「戻ってきたら――」

 

「また、きえちゃ、や」

 

じっと見上げてくる幼い顔。

その表情は、無表情なのに――まるで泣きそうで。

 

【ノーネームちゃん……】

【ハルちゃんが消えたトラウマか】

【あー】

【女神パワーかなにかで無事は分かっていても、突然居なくなったら不安だっただろうしなぁ】

【ハルちゃん? 妹は大事にしなよ?】

 

「……もう、しょうがないですねぇノーネームさんは。小さくなれますか?」

 

「んっ」

 

ぽんっ。

 

コミカルな効果音とともにお人形さんサイズになった彼女が――彼女と同じサイズの配信機材を抱えてぱたぱたと飛んでくる。

 

重くないのかな。

いや、でも楽しそうだからいいのかな。

 

「邪魔にならないところにくっついててくださいね。振り落としたらごめんなさい――でも」

 

 

【♥】

 

 

ぴとり――もそもそ。

 

「……胸元……いや、いいんだけど……落ちません?」

 

 

【♥】

 

 

「まぁいいや……じゃ、くっころさんにドラゴンさんたち。ちょっと行ってきますね」

 

そうして僕は――――――

 

「わ」

 

 

【!?】

 

 

――――――びゅんっ。

 

ちょっと羽で推力を得ただけのつもりが、1回羽ばたいただけで周囲の光景が押し流されてびっくり。

 

「……父さん、やりすぎだよこれは……」

 

【おろろろろろ】

【画面がバグってる】

【なぁにこれぇ……】

【SF作品でワープしてる画面みたい】

【そうか……これが超加速……】

 

【ノーネームちゃん、煩悩で胸元に潜ったらしいけど、正解じゃね? 肩とか頭の上に乗っかってたら速すぎて振り落とされてそうだし】

 

 

【yes】

 

 

【!?】

【草】

【ノーネームちゃん! えっちな気持ちでそうやってるのはみんな知ってるからね!】

 

きぃぃぃん。

 

僕たちは空間を切り裂いて、すごい速さで移動している。

 

「……最短距離で行こうとすると、ちょうど艦隊戦してるところを突っ切ることになりそう」

 

けども、ここには空気なんてないから空気抵抗もなく、僕たちはただ高速で光速に迫りながら移動するだけ。

 

……息ができるのとか声が聞こえるのとかは、きっと魔力のおかげなんだろう。

そうでも思っておかないと、映画とかで息ができないシーンを観てるだけでもこっちが苦しくなるみたいなことになりそうだし。

 

 

【回避?】

 

 

「……いや、なぜか戦力比が1対10とかになってるみたい。通るついでに加勢しようと思います。肩慣らしもしないとですし」

 

ものすごい数のドラゴンさんたちが、小規模の戦艦さんたちを追い回している場面が目の前に。

 

勝敗が決しても、最後の1艦まで敵を引きつけて少しでも削る――そうでもしないといけないほどの戦局なのかな。

 

【あの……】

【それ……】

【アルちゃんが脳筋で殴り合いしてるからなの……】

【流れ弾で吹っ飛んじゃったうちの味方が被害受けたとこか……】

【ないないされてるとはいえ悲惨すぎる】

【草】

【笑っちゃいけないんだけど笑っちゃうんだよなぁ】

【ノーネームちゃんが助けてくれてるとはいえ大惨事なのになぁ】

 

「じゃ。たくさんお酒飲んだし、父さんに治してもらったし」

 

しゅいんっ。

 

羽が増えたからか姿勢制御が楽になった気のする新発見に感動しつつ、僕は光の矢をつがえ、弓を引き絞る。

 

「どう見ても救助依頼出してるだろう人たちを救出しながら通り過ぎよっか。なるべく目立たずに」

 

 

 

 

艦隊最後尾の戦艦がブレスの弾幕に引っかかり、機関に引火して大爆発――を起こしかけた瞬間に、女神の「ないない」で転送される。

 

「ないない」――神族最後の純血個体の固有魔法。

 

すべての生命を救出することに特化した、女神の恩寵。

 

『……第715次戦力の残存艦艇、戦艦級30に巡洋艦級5000ほど……対して敵は戦艦級に相当するドラゴンだけで500頭です。殿は我ら駆逐艦隊が務めます――どうか退避を。人類のために』

 

『済まない……魔王のブレスを察知できなかった私たちの責任だ』

 

【問題ありません】

【当機を中心とした機械の体が大半を引き受けます――有機の方々はご心配なく。無機物の我々は数万年程度女神様にnai-naiされたとて、同期すれば只の休眠状態と変わりません】

 

【ですのでnai-nai後の未来で有機の方々との婚活をセッティングしてくだされば喜んで突撃して参ります】

 

『……承知した。全艦、これより――――――!?』

 

一筋の、まばゆい金の糸。

 

最初は、そう見えた。

 

『なんだ今の魔力は!?』

『分かりません……魔王と交戦中の女神アル様のものではないようですが』

 

『あの光は、光属性の……まさか神族の方が』

『しかし、たったの一撃だけでは……』

 

あまりに薄いように見える、天から垂らされた糸。

 

ただしそれは一切に動揺することなく真っ直ぐに敵へと向かっていき、

 

『! 敵、全個体が急速回頭! 膨大な魔力――いえ、神力を計測しています……!』

 

『……あれが、神族の方々の御力か』

 

人々にとってそれは――地獄へもたらされた、空を割って流れてくる希望の光となった。

 

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