【2巻発売中】TSしたから隠れてダンジョンに潜ってた僕がアイドルたちに身バレして有名配信者になる話。~ヘッドショットロリがダンジョンの秘密に迫る配信~   作:あずももも

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719話 なんとか、間に合った

「このっ……! ほんっとしつこい! 私は早くハルの無事を確認したいの!」

 

『貴様を逃せば次もまた人間どもを纏め上げて脅威となる……ここで断つ』

「あーもうっ! こんなことしてるから味方にも被害が出てるのに……!」

 

魔力と神力が衝突のたびに数万キロも飛び散る頂上決戦。

 

孤独な2柱の頂点の、存在を削り合う死闘。

 

龍と女神の戦いは両者の存在を半減させる不毛な戦いとなるも、終端へと進みつつあった。

 

「だ、だけど、そっちがその気なら都合がいいね! なにしろ君はハルのおかげでかなり削れている!」

 

『――――――それはどうでおじゃろうか』

「!?」

 

仮面が剥がれかけているどころかハルとくっころの前では砕け散っていた魔王――その後方数万キロへ、突如として転移魔法の渦が広がる。

 

そこから出でるは、膨大な魔力を秘めた球体。

 

――ハルが突っ込んでしまったそれよりも、遙かに強大な力を――世界そのものを潰して純粋なエネルギーに変換した「魂」そのものである存在だった。

 

「……魔王……お前……!」

 

『我が本体で出てきたのは、決して勝利を確信し油断したからではない。――世界の大半を手中に収めたからこその秘術があった故。人間どもでさえ識っているだろう? ――「ブラックホール」と呼ぶ、反転した力を』

 

当初からはずいぶんと小さくなった魔王――だが、その後方からは魔王を元のサイズに回復できるだけの量だろう魔力が接近している。

 

それを見て青ざめ――――――とっさの判断で距離を取ろうとしたアルへ、

 

『――やはり幼体! 人間のように悪知恵は働こうとも永く生きるドラゴンの知恵には勝てぬ!』

 

「くっ……そぉぉぉ……!」

 

魔力を補給するはずだと読んでいたアルの思惑は完全に外れ、魔王が彼女へ急接近。

 

アルが退避のための転移をキャンセルして迎撃しようと手を挙げた時点で、詰め寄っていた魔王の開いた口からは星の光が覗く。

 

「……ああ」

 

数十分、それとも数時間。

 

これから永遠に続くと覚悟していた戦闘が、最後の最後で、しかもまだ充分に時間を稼げ、魔王を弱体化させられたはずの戦いが、不意を突かれたとはいえ自分の判断ミスであっけなく終わる。

 

「……ごめんね、みんな」

 

アルは、その碧い瞳を見開いたあとに閉じる。

 

逃げることも防ぐことも敵わない、ゼロ距離からの最大出力でのブレス。

 

――彼女は、最期を悟った。

 

「――ノーム。ごめん、あとをお願い。ノーネーム……あまり話せなかったけど、君が生まれてくれたことも嬉しかった」

 

憤怒の形相で戦い続けた女神の幼い顔は、わずかに微笑む。

 

「みんなは2人の言う通りにして。あの子たちなら、君たち全員を助けられなくとも……」

 

目尻に涙を浮かべながら、女神は消えた後の作戦を指示する。

指示は指示でも撤退と敗北――滅ぼされるまでの徹底抗戦のそれを。

 

「けど……うん」

 

わずかに開いたまぶたが重めな瞳には、魔王の全力が映る。

 

「――これでも。これでも、当初の計画よりは魔王自体はずいぶんと弱体化できた。……あの追加の魔力でも、そうすぐには回復できない。魔王が本来の力を取り戻すには、早くてもさらに数千年――ふふっ。お母さんたちが稼いでくれた時間と同じくらいを稼げたって考えたら、がんばったほうかな……私」

 

空間が軋む。

 

それはハルが放ったあの一撃のごとく、あまりの膨大な力により空間そのものが悲鳴を上げる声。

 

「魔王、君自身もその攻撃で相当ダメージを受けるよ? ……うん、でもそうだね。私が君の立場ならそうするし、そうした。敵を確実に――私を確実に排除できるんなら、次の数千年は安心して過ごせる。部下に征服を進めさせられる」

 

超濃度の魔力で、アルの輝く金髪が先から崩れていく。

 

「お母さん、お父さん……褒めてくれるかな」

 

乱れて割れる空間で、アルのまばゆい羽がちぎれていく。

 

「ま、私たちが創造した生命体のための魂リサイクルシステムなんだ、私たち自身には死後の世界なんてものも輪廻なんてものもない。……ノームたちが生きているあいだだけ、彼らが繰り返し産まれて死ぬのを繰り返すあいだだけは、残り続けるけど」

 

アルの身につけていた衣が、裂けていく。

 

「……でも」

 

最後に薄く目を開いて微笑んだ彼女は、笑った。

 

「………………………………楽しかったよ」

 

そう口にしたアルは、そのまま目を閉じて無へと帰――――――

 

「――――――ノーネームさん、姉さんが邪魔なのでどけてください」

 

「んっ!」

 

【草】

【草】

【ひでぇ】

【ようやく見えるようになったと思った第一声がひどすぎて草】

【ハルちゃん……どうして……】

 

――――ふわり。

 

星の光と熱で融解する寸前だった女神の体が、そっと抱きしめられる。

黒き羽が愛おしそうに、けれども確かに金の女神を覆う。

 

「………………………………、え」

 

「おまた」

 

驚いた女神が目を見開くと、彼女を抱きかかえて引き寄せているのは黒い髪に紅い目の――彼女の「弟を産みだした双子」のノーネームの顔。

 

【軽ぅい!】

【草】

【ノーネームちゃんノーネームちゃん、いくらなんでも「おまた」は……】

【女の子なんだから慎みなさい!】

【でもハルちゃんなら言いそう】

【ならいいや】

【草】

【アルちゃん、ぼろぼろでよくもまあ……】

 

アルの顔を映すように浮遊している、人の造り出した装置――配信機材。

 

それを経由して届いてくる、人々の――――――無数の声。

 

「ひとまず撃ちますので、ノーネームさんは姉さんを全力で護ってくださいね」

 

「――――――は、はる……?」

 

アルがノーネームと機材から目を離した先に居たのは――――

 

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