【2巻発売中】TSしたから隠れてダンジョンに潜ってた僕がアイドルたちに身バレして有名配信者になる話。~ヘッドショットロリがダンジョンの秘密に迫る配信~   作:あずももも

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720話 【悲報・ハルちゃん、何かを理解する】

「じゃ、くっころさんたちをよろしくお願いしますね。くっころさん、迷惑かけちゃだめですよ」

 

「叱っていただける……!!」

『『ギィー……』』

 

なぜかとっても嬉しそうなくっころさん、なぜか悲しい目を向けてくるドラゴンさんたち。

 

彼女たちを預けた僕は、今度こそ姉さんの元へと急ぐ。

 

……こうやって人を預けるの、ちょっと前にダンジョンで拾った子供たちを預けて回ったあのときと似てる気がするな。

 

僕、なんだか毎回こういうことをしている気がする。

拾ったら責任を持たなきゃいけないのは分かってるけども、ずっと移動してばっかりだからそれができないんだ。

 

「早く帰りたい――――なっ、と」

 

「ひゃん」

 

ぐんっ――――世界が後ろへ逃げていく。

光が前から後ろへ降り注いでいく。

 

胸元のノーネームさんがぎゅむっと押しつけられてくる感覚。

 

体感で表面積が増えてる気がする……けど僕と同じく女神な体ならぺちゃんこになることはなさそうだから良いよね。

 

【見えない】

【何も見えない】

【未来が見えない】

【過去が見えない】

【草】

 

【これが……ワープか……】

【すごいよー】

【すごいけどほんと速すぎて周囲が見えねぇ】

 

【ただでさえちょっとおかしい幼女女神なハルちゃんが加速度的におかしな性能を獲得していく】

 

【前からでは?】

【前からだな】

【幼女疑惑の無言配信の時点でちょっとおかしな所業が見え隠れていたのを忘れたの?】

【最初期から「なぁにこれぇ……」が合い言葉だったのを忘れたのか?】

【もうだめだ……】

【草】

 

【ハルちゃんはね、動くたびに隠してたり獲得した新機能をお披露目してくれるんだよ】

 

飛ぶ。

 

跳ぶ。

 

昇る。

 

降りる。

 

流れる。

 

切り裂く。

 

「………………………………」

 

体感の時間が引き延ばされていく。

 

しばらく新鮮な感覚に浸っていた僕だけども、なんだか以前にも何度も経験した感覚だって気がつく。

 

それはなんだっけ?

 

んー?

 

……あ、そうだ。

 

狙撃スキルがある程度高くなってからの、放った矢とか銃弾に僕自身が入り込んで目標まで飛んでいくのを眺める、あの感覚。

 

「そんなはずはないのに」僕自身が矢の先端や銃弾の弾頭から、ほんの数秒から十数秒のあいだ周囲を見渡しながらモンスターのコアへ到達する、あの感覚。

 

一体化。

 

同化。

 

そんな感覚。

 

「不思議だなぁ……」

 

まるで僕の肉体を置いて僕の意識が飛んでいくよう。

普段はともかく、今は僕自身が飛んでいるのにね。

 

【!?】

【こわいよー】

【視聴者が怯えている】

【なにが不思議なの、ハルちゃん……】

 

【ハルちゃんが何かを見つけようとしている】

【なにげないつぶやきだからこその恐怖よ】

【おろろろろろろ】

【確実にとんでもないことになりそう】

 

……ん?

 

僕自身が飛んでいる?

 

「あ、そっか」

 

僕は、至った。

 

――遠距離スキルって、最終的には僕自身が――――――

 

 

 

 

「ねえねえあなた! 見て見て! すごいわハルくん! あれ、あれ!」

 

「……すげぇっつうかやべぇだろあれ……いくらアルの複製体に入ってるとはいえ、『死』にもしないのに位階を数段飛ばしで登ってんだよ……『数百階層』の輪廻をひとっ飛びとか……俺でもちょっと引くわ……」

 

「ときどき居たじゃない、そういう子! どんな種族でも!」

「速度がやべぇんだよバカ」

 

 

 

 

『……ごめんね、みんな』

 

僕は、俯瞰している。

 

光に近い速度でまっすぐに飛んでいく弾――たとえるならレールガンとかレーザービームみたいに、なににも邪魔されずにひたすら直線に飛んでいく僕自身の「先」を。

 

『……当初の計画よりは魔王自体はずいぶんと弱体化できた。……あの追加の魔力でも、そうすぐには回復できない。魔王が本来の力を取り戻すには、早くてもさらに数千年――ふふっ。お母さんたちが稼いでくれた時間と同じくらいを稼げたって考えたら、がんばったほうかな……私』

 

姉さんが、散りかけている。

 

『お母さん、お父さん……褒めてくれるかな』

 

種族は違っても、やっぱり見た目相応の子供な姉さんのつぶやきが蒸発していく。

 

『……私たち自身には死後の世界なんてものも輪廻なんてものもない。……ノームたちが生きているあいだだけ、彼らが繰り返し産まれて死ぬのを繰り返すあいだだけは、残り続けるけど』

 

姉さんが、エネルギーの塊をぶつけられて分解していく。

 

すぐに撃たないといけない。

 

けれども間に合わない。

 

それは困る。

 

それは嫌だ。

 

手が届かないのは、絶対に嫌だ。

 

ならどうする?

 

おじゃるさんは、体の中のほとんどの魔力に加えて新しい玉から魔力を飲み込みながら吐き出し続けている。

 

姉さんを確実に屠るため限界まで周囲そのものを巻き込んで――「ブラックホール」を起こそうとしている。

 

くっころさんがやけくそでやってきた、あれ。

あれがきっと、ドラゴンさんたちの切り札なんだ。

 

サイズと強さの違い、あとは性格とかいろいろの違いはあっても2人とも自称魔王さんだし、憎いはずの神族ってのの僕みたいなのをお嫁さんにしようとしてくる。

 

行動原理――パターン、ルーチンは同じ。

 

種族としての共通点。

 

「そう作られた/プログラミングされた」根元。

 

――くっころさんのときは、気絶してる僕をノーネームさんとイスさんが助けてくれた。

 

けども今は2人とも魔力を使い果たしている。

 

頼れない。

 

なら、今度こそ僕がしないといけない。

 

でも、どうやって?

 

「どれだけ速く動いても到達できない座標へ、それでも今すぐに到達する」には――――――

 

「あ。分かった」

 

――僕の中で、何かが消費される。

 

「ほし」

 

「にこ」

 

「がんば」

 

ぽつり。

 

ノーネームさんが、なにかをつぶやく。

 

【ひぇっ】

【じょばばばば】

【何!? 何を理解したのハルちゃん!?】

 

【ノーネームちゃんも変な鳴き声を上げている】

【ばっか、ノーネームちゃんはいつでも鳴き声をあげてるだろ】

【そうだったわ……】

【草】

 

「その力」は、僕の魂に眠っていた何か。

 

とても大切なもの。

 

けれども僕はそれを消費して――――――

 

「――――――ノーネームさん、姉さんが邪魔なのでどけてください」

 

「んっ!」

 

――――――途中の空間を飛び越えて、姉さんの元へたどり着き……普段使わないところがすっごく疲れたけども、「間に合わせた」んだ。

 




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