【2巻発売中】TSしたから隠れてダンジョンに潜ってた僕がアイドルたちに身バレして有名配信者になる話。~ヘッドショットロリがダンジョンの秘密に迫る配信~ 作:あずももも
「――怒ったでおじゃ!」
「あ、やり過ぎちゃった? ごめんね?」
「許すと思うでか! ――ハルを手籠めにしようとしている不届き者でなくば朕の炎は防げまい! その髪ごと燃えてしまえ!」
ごうっ――――――再びにおじゃるさんがブレスを吐こうとしている。
「リリさん」
「きゅう」
「どいてくださいリリさん。僕、今は力ないんです」
「きゅう」
「ん……あ、髪の毛が」
なんとかもぞもぞ動いてたらリリさんの後ろ髪に包まれた視界。
「みえない」
困った、なんにも見えない。
なんにも動けないしなんにも見えない。
「みえ?」
「みえ」
近くで2人の気配。
……ノーネームさんとノームさん……2人仲良くしゃがんで僕のこと眺めてるくらいなら、手を貸してよ……。
【草】
【かわいい】
【不思議そうにのぞき込んでて草】
【てか助けてあげないのか2人とも】
【興味深そうな顔しててかわいいね】
【ハルちゃんの顔がリリちゃんの髪の毛で隠れてるのが不思議なんだね】
【神族にとって、この光景のなにかしらが観察したいものなんだろう……たぶん】
ぼぉっ。
銀色のすだれの隙間からオレンジの光がほとばしる。
……強くなってるらしいるるさんなら大丈夫だとは思うけど。
「もー! しょうがない――――――あっ」
【え?】
【あっ】
【ん?】
【ブレスの中に渦が】
【あっ】
【タイミング悪すぎて草】
【え、大丈夫!? いやマジで】
ぼおっ。
なにか――いや、その射線上に現れた誰かが、炎に包まれている。
「――リリさん……ノーネームさんノームさんっ! 今すぐ引っ張りあげて! 姉さんはあの人助けて! リリさん、起きて……どいてください!」
「ちょっ……!? ノームたち、座標間違えちゃった!? いくら魔王が弱っているとはいえ、あれじゃ人間は炭になっちゃうよ!?」
まさかの光景でフリーズしちゃったのは姉さんもらしい。
僕とほとんど同時に叫ぶと駆け出し――おじゃるさんへと拳を振り上げる。
あ、なるほど、火に包まれた誰かじゃなくておじゃるさんを止めるんだね。
「ふっ……これで朕を畏れただろうよ。小癪な人間どもが」
「お前、よくも……!」
「ふっ……女神よ、弱くなったな? ――朕は調子が出てきたぞ!」
優しい姉さんは怒り狂い、ぶんぶんと左右の拳を繰り返し踏み込みながら突き出す――けれども魔王さんはひょいひょいと避ける。
「……ぷは。リリさん、重いんだから」
結局助けてもくれなかったノーネームさんたちをほっといて、僕は立ち上がってぽてぽてと走り出す。
「るるさん!」
「あー……えっとぉ……」
目の前で現れたばかりの誰か――人が燃えているのに、なぜか困った顔をして立ち尽くしている彼女。
……ああ、そっか。
普通の人は、燃えているものには手を出せない。
るるさんだって攻撃魔法、得意な方じゃないんだ。
「水系の魔法……リリさん!」
「あへぇ」
「だめだ、リリさんは使えない」
【草】
【草】
【草】
【「リリさんは使えない」で草】
【直球な感想だね】
【ハルちゃんがリリちゃんを見捨てた!?】
【そらそうよ……】
【え、でもあの人……】
【もう……】
【こ……こんな流れで人死にとか】
【リストバンドが光ってない……転移魔法作動してないのか……】
【緊急離脱装置って……確か、即死とかだと……】
【なんか怖い……見たくない……】
【ハルちゃん、お願い……ここからどうにかしてギャグ展開にして……】
なんとかたどり着いた先。
人の形に燃えるナニカ――いや、確かに勢いよく燃えてはいるんだけども……助けを求めて激しく動いたりはしていない?
それに、
「……? あれ。これ、外側だけ燃えてる……?」
だよね?
いや、なんかこう、炎の周り方的に。
「えー……っとぉ……ね? ハルちゃん……? これはね……」
そばまで来たるるさんが、ものすっごく複雑そうな表情をしている。
「――――――んはぁっ!」
ぶちぶちっ。
【!?】
【!?】
【なんかえっちな声が聞こえた!】
【草】
【悲報・シリアス】
【もうさっきので在庫尽きたらしいよ、シリアスさん】
【機会損失だぞシリアスさん!!】
【シリアスはないない前の戦闘で、もう充分だから……】
「燃えているナニカ」を引きちぎり、中から人の声と姿。
ひらひらと舞う、燃えながらもその反対側は真っ白なちりぢりの布きれ。
これはまるで、
「……あ、これ……包帯……?」
「うん、そう……ちほちゃんが巻いてた、特別なやつで……」
「幼女からの炎! かぐわしいブレス! あんっ……ふぅ……ちほのせいでその熱さをじかに感じ取れなかったのが残念だったけど、これはこれで……!」
――その人は、両手を広げて空を仰ぎ見て――おじゃるさんの方を見た。
その人――――――えみさんが。
……え?
えみさん?
もしかして、君……ヘンタイさんこじらせたあまり、火を克服したの……?
………………………………。
……ヘンタイさんだったとしても、突き抜けたらすごいんだね。