【2巻発売中】TSしたから隠れてダンジョンに潜ってた僕がアイドルたちに身バレして有名配信者になる話。~ヘッドショットロリがダンジョンの秘密に迫る配信~ 作:あずももも
――――――ぎぃんっ。
「きゃあっ!?」
突然の声にスコープから顔を上げると、おじゃるさんへ斬りかかった態勢のまま弾かれ、後ろへ吹き飛ばされているリリさんの姿。
「リリ!?」
「ふん、余所見をしておる場合か? 彼奴よりも弱い人間よ」
きぃんっ――――――えみさんが構えている剣が、おじゃるさんの手のひらに押されている。
【やべぇ】
【リリちゃんが】
【人類最強が吹っ飛ばされたとか】
【急に何が】
「レベルが上がると生物としての強度も上がっていく。魔王はノームたちのおかげで弱体化しているけれど、それでもレベル100相当の肉体強度に筋力……そこへ流せる魔力による強化。――――――しっ」
「ふっ……被造物たちの世話も、大変じゃのう? 貴様本来の戦いもできずに」
えみさんへ体重を乗せようとしたおじゃるさんへ詰め寄った姉さんのおかげで、レベル的に1対1じゃすぐに崩れる均衡は解消。
「助かりました!」
「ううん、君たちはがんばっているよ。ええと……幼い個体への繁殖欲が強い子」
「『人間』と呼んでもらった方がずっといいです!!!」
【草】
【草】
【悲報・えみちゃん、繁殖欲が強い】
【つまり:えっち】
【えっち】
【えっち】
【ふぅ……】
【えみちゃんはえっちなのか】
【そうでないとでも?】
【あのおっぱいでえっちじゃないってのは無理でしょ】
【てかやっぱアルちゃんの認識よ】
【まぁえみちゃんだし……】
「リリさん、こちらへ」
「ええ……一時離脱します」
腕と脚を痛めたらしいリリさんが、離脱してくる。
それでもおじゃるさんは、一貫して強者の態度を崩さない。
この場面が配信されているのも、おじゃるさん自身のプライドもあるんだろう――おかげで、撤退してくる九島さんとえみさんのことも眺めるだけで追撃はしてきていない。
もし、ここへブレスを思いっきり吹きかけられたら。
そういう警戒はしているけれど、彼女はしてこない。
「じゃが、貴様らも手詰まりのようじゃのう? 神族の長女、アル……貴様では朕は倒し切れぬと見た」
「……私は、どちらかというと後方支援なんだよ」
「なるほどのう。じゃが、拳は好きじゃろ?」
――――――ばしんっ。
姉さんとおじゃるさんの間で、大きな炎が燃えさかる。
【アルちゃんの方が弱いのか】
【あれで後方支援……?】
【アルちゃんの中ではそうなんだろうよ】
【あー】
【自分のことをまだ弱いと思っているタイプの猛者か】
【適性が低いとかかなぁ】
【性格的には前衛がぴったりっぽいんだが】
【でも実際、ミラクルで起きたクリーンヒット以外全部防がれてるしな】
【魔王が最優先で防ぐ程度には脅威だし動きも制限されるけど、削り切れるほどじゃないと】
【魔王よりもレベルがちょい……いや、10とか20とか低いのかもなぁ】
【もはやレベルのインフレがやべーから感覚が分からんがそうなんだろう】
【レベル10と20、30の人が模擬戦やるとする どうなると思う?】
【あー】
【あー】
【なるほど】
【レベルが0と1でもかなりの差が出るからな……無論ダンジョン限定だけど】
【ここみたいにダンジョンそのものな場だと……】
「……この分では、朕の方が余力を残して勝利じゃな。だが安心せよ、女神。貴様らは朕の情けにより――――」
姉さんがぐぬぬって悔しそうな顔をしたのが嬉しかったのか、戦いが終わっていないのに勝利宣言をしようと笑顔で僕の目を見てくるおじゃるさん。
だけど、
「――――――なら、遠慮は要らないな?」
「!?」
【!?】
【!?】
【ふぁっ!?】
【だ、誰!?】
【あ、あれ 転移魔法の渦……】
ひゅんひゅんっ。
黒い魔力が籠もった――強弓からの矢が、おじゃるさんの袖を破く。
アル姉さんの拳を防ぎながら僕へと顔を逸らした、その真後ろから。
「何奴じゃ!」
にゅっと出てくる、弓の上側。
「援軍だ。さっき『いくらでも来い』っつってたからな」
「もっと早く来たかったですけど……邪魔が、多くって」
黒い渦――ノーネームさんたちのそれから、結構高いところから躍り出て落ちてきて……しゅたっと、片膝と片手をついて、かっこよく着地したのは。
長い黒髪を後ろでまとめ、白地に赤の縫い目のある――神社とかに居そうな服装の。
けれどもダンジョンで戦いやすくしているんだろう、丈はふとももぎりぎりで、今みたいにしゃがみ込んでこっちにおしり向けてるとけっこう際どくって、そのふとももは2人ともそろってタイツで覆っている姿の。
確か、女の子と男の子のそっくりさんの。
「…………アリスと、アレク……」
見覚えのある褐色肌が肩口からまぶしい――姉弟の、小さいころと同じく瓜二つの姿に育った姿だった。