【2巻発売中】TSしたから隠れてダンジョンに潜ってた僕がアイドルたちに身バレして有名配信者になる話。~ヘッドショットロリがダンジョンの秘密に迫る配信~ 作:あずももも
るるさん、えみさん、九島さんにリリさん。
彼女たちが来てくれたときより……だいぶアクロバティックに現れた、褐色の肌に映える長い黒髪を腰のあたりで結っている2人。
アリスさんと、アレクくん。
「――ようやっとアル様――じゃなかった、ハル様と会えたけど話は後だ。アレク」
「はい、姉さん」
小さいころもそっくりだった2人は――後ろ姿どころか声までそっくりで。
しゃがんだままに持っていた弓を、弦と弓本体で体を挟むように背負い込んだ2人は――すばやい猫のように前へと飛び跳ねる。
その左右に跳ねたその両手には、
「ぬぐっ!?」
「魔王とやり合えるなんてなぁ!」
「人間の、意地……見せます!」
――――――ひゅぱんっ。
4本の、短い刃。
短剣。
それを両手に構え、まったくおんなじタイミングでまったくおんなじ角度と距離へとバックステップで、おじゃるさんへ一太刀を浴びせる。
そしてまた息を合わせ、おじゃるさんへ突撃していく。
……そうだ。
褐色の姉弟は、かつて……こうやって突撃して懐に飛び込む戦法を得意としていたんだ。
危険だから本当はやめてほしかったけど、姉弟揃って好き好んでいた戦い方を。
【!?!?】
【女の子が2人!?】
【まいすたー姉御☆「いえ、違うわ 2人とも同じ動きをしているけど良く見ると重心が違うし脚の長さも骨格も違う それによく見て、左の子は肩幅が広めで肩甲骨と鎖骨がたくましいし、その代わりに腰が狭くって右の子はしなやかな筋肉が多いわ あと髪の毛と襟で見えづらいけど首の太さと喉仏もはっきりと違う 声もそっくりだけど、左の子の方がほんの少し低い声が出ているわ だから男の娘と女の子よ」】
【えっ……】
【は?】
【えぇ……】
【うわぁ……】
【すぺしゃりすと姉御☆「え?」】
【でまかせだとは思うが……】
【ほんの10秒程度でその書き込みは……】
【え?】
【ちょっと……】
【その……】
【ぶっちゃけ……】
【キモい……】
【ひどい!?】
【ひどくないと思いますが】
【始原もドン引きしています】
【こんなのと一緒にしないでほしいと願います】
【せめて今ポップした性別詐欺なあの2人と同類な方が幸せです】
【ひどい!!】
【草】
【荒ぶる姉御】
【久しぶりに見たわ気持ち悪い姉御】
【姉御ォ!】
【しゃあない……元・ショタが出てきたんだからな……】
【ていうか……ゑ? マジであの子、男なの?】
【※姉御】
【ちょっと水浴びてくる……】
【草】
【姉御=ショタだもんな!】
【「ショタみがある」からとかなんとか適当なこと抜かして本物の女神様をショタと言い張って興奮してる変態が騒いでるんだ、本当に男なんだろ】
【じゃあ、この子たち……】
【ああ】
【そっか 子供たちの中に居たもんな】
【リリちゃんが来たんだから、当然来るよな】
【ノーネームちゃんとも、ずっと一緒だったんだもんな】
【ハルちゃんの戦いに、追いついてきたんだね】
「「――――――はっ!」」
ぎぃぃんっ――――――おじゃるさんの両脇から、左右から、まったく同時に同じ角度で2本ずつの刃が襲う。
当然のように2人の速度に反応できてるおじゃるさん――そして左右の腕で同時に攻撃を受けて逸らしている。
――2人の攻撃でも、肌へのダメージは通っていない。
けれども、ガードをするっていうことはダメージ自体は通っているということ。
なによりも、おじゃるさんが2人の速度に警戒を示している。
そんな魔王さんの反応に不適な笑みを浮かべている――あれはアリスさんだ。
「……かてぇなぁ、魔王さんよ!」
「歯ごたえはありそうですね、姉さん」
「きしゃまらぁ……!」
ぎぃんっ。
刃を支えに左右へ――やっぱり同じくらいの距離をひらりと舞う2人。
「けど……俺たち、リリと同じくらいには強いぜ?」
「ええ。だって私たち、一緒に戦ってきたんですから」
「あら、どうでしょう? 私の方が少しだけ強いかもしれませんよ?」
「――じゃあ」
「ええ」
「そうですね」
リリさんの左右へと着地した2人が、リリさんと肩を並べる。
「誰が1番削れるか、勝負しませんか?」
「――――――きしゃまらぁ!!」
――――ごうっ。
自分を侮られたと思ったらしい魔王さんが、何度目かの炎を口元へたぎらせる。
「ちょこまかと煩わしい……ならばまとめて焼き払って――――――」
ぼうっ――――――おじゃるさんの口から、これまでで1番に太いブレスが放たれようとして、僕がその口元へ弾丸を送り届けようとした瞬間に、
「――――――アイス、ジャベリン」
――――――ばしゃり。
「んなっ!?」
その口元へは僕の弾の代わりに――大量の水が、おじゃるさん自身を飲み込むような矢となって叩き込まれる。
「けへっ、けへっ! ……な、なんじゃ……!?」
ずぶぬれになって、怒っていたことを忘れた顔をしているおじゃるさん。
その炎は――少なくとも今は、完全に消えている。
「おう、魔王さんよぉ。――――こっちにきたばっかの俺たちが動くって思ったろ?」
「あなたは、怒りを覚えると広範囲のブレスで解決しがち――配信で、見ていました。だから」
「……火は、水に弱い。ですから、待っていました」
――――とんっ。
いつの間にかにリリさんの隣が1人分、空いていて――そこには。
「……ビビさん」
リリさんを、少しだけ大人びさせた姿。
透き通る長い銀髪はリリさんのそれよりも毛先が丸くなっていて、服装はまるで――
「ソレイユ王国――いえ、受け入れてくださったみなさまと作り上げた、新生ソレイユ王国、その初代女王を務めさせていただいております――――ヴィヴィアンと申します」
小さいころの面影を残しながらも立派に育った――ちょっと前までは子供だった子が、もうひとり。
リリさんとおんなじお辞儀を――その膨らんだドレスの裾を持ち上げて、カーテシーっていうのを優雅にしていた。