【2巻発売中】TSしたから隠れてダンジョンに潜ってた僕がアイドルたちに身バレして有名配信者になる話。~ヘッドショットロリがダンジョンの秘密に迫る配信~ 作:あずももも
「しっ!」
「ぬぅ……!」
ばっ、ばっ、しゅっ――ざざっ。
姉さんの立て続けの攻撃……拳と脚を駆使しての攻防。
姉さんは何かの演舞とかに出られそうな素早い動きで攻め、それをおじゃるさんは体の強さ任せで受けたり受け流したり距離を取ったりしている。
けれど、この中で1番レベルの高いだろう2人の肉弾戦が続いているもんだから、2人とも体のあちこちにすり傷や切り傷を作っていて痛々しく見える。
【はやい】
【つよい】
【アルちゃん、いろんな格闘技使ってるな】
【見たことないけどだいたいやってることはわかる】
【同じ人間の構造していればだいたい同じ動きになるからなぁ肉弾戦】
【女神様とか魔王とかな2人ともが人間に堕ちたおかげで限定された動きになってるからね】
【なるほど】
「破ぁ!」
「ぬぐぅ!?」
数十秒続いた攻防の結果は、おじゃるさんの回避が追いつかないところへ刺さった、姉さんの拳――いや、人差し指から小指までを真っ直ぐに突き出した痛そうなのが、おじゃるさんのわき腹を思いっ切り押すやつ。
【痛そう】
【わき腹は痛い】
【けどようやくまともなダメージが】
【おじゃるも相当削れてきてるからな】
【それでも強いんだよなぁ……】
「ぬ……!」
「やっぱりレベル差とか種族差って厳しいなぁ……でも、一撃は加えたよ」
すごく痛そうにわき腹を押さえ、けれども目をぎらぎらさせて姉さんを見据えるおじゃるさん。
ダメージを与えた――コアを1つ破壊してるね――アル姉さんも、けれども肩で息をしているし、疲労の色は濃い。
だから、
「神族、アル……貴様――――――」
たぁんっ。
「ぎゃんっ!?」
じゃきっ。
あと……2発か。
【草】
【草】
【そして何度目かのハルちゃん】
【華麗なインターセプト】
【それが狙撃兵の流儀だからね】
【スナイパーハルちゃん、容赦がない】
【表情ひとつ変えないハルちゃんは完全にプロの傭兵そのものだね】
「そうだよハル。戦場では人質を取ったりしない限りはヴァーリトゥード……砂での目つぶしでもなんでも、見せた隙を叩くんだ。隙を見せた方が悪い」
「ぬぐぅ……ハルぅ……」
なぜか姉さんが誇らしげに僕へ語りかける。
そんな姉さんと僕を、涙ぐみながら見てくるおじゃるさん。
や、僕はただ隙があったから狙撃しただけなんだけど……まぁいいや。
【どや顔アルちゃん】
【草】
【かわいい】
【やったのはハルちゃんなのに】
【妹煩悩なお姉ちゃんだからね】
【あ、ハルちゃんの眉間にシワが】
【草】
【草】
【どや顔に見えたけど普通に嫌だったと見える】
【嫌だったかー】
【草】
【ハルちゃん、嫌がってるときは眉毛だけが動くんだよね】
【猫かわいがりされてるときの、いつものだね】
「やぁーっ!」
「……やらせぬ!」
わき腹に姉さんの突き、加えて首すじへ僕の弾丸を受けてもなお、たたらを踏んでいるところへ切りつけてきたリリさんの剣を横へ飛びながら片手から炎を――ブレスを放つおじゃるさん。
【やっぱ動きが速いわ魔王】
【魔王だし】
【一方でリリちゃんのかけ声は毎回力が抜ける】
【かわいいから……】
【かわいいんだよなぁ悔しいことに】
【地球最強の美少女剣士だからね】
「――もう何度目ですのに、学習しない方ですね」
「きしゃま……!」
ばしゃっ。
その炎がリリさんへ到達する前に、ビビさんの放った水――鉄砲水が、おじゃるさんの攻撃を打ち消す。
【こっちも速い】
【さすがは姉妹、連携は完璧だな】
【切り込むリリちゃんと、リリちゃんへの反撃でブレスが使われるならガードできるビビちゃん】
【炎と水って属性を最大限利用してる姉妹】
「はぁっ!」
「ぬぐっ……」
前髪がちりちりと焦げても気にしないリリさんが、その勢いのままでおじゃるさんのガードした前腕を横薙ぎに。
飛び散る血潮。
ついでに裂けて舞う、おじゃるさんの派手な着物の袖。
【おお】
【今回は入ったか】
【さっきのアルちゃんから流れが来てる】
【さすがの魔王も囲まれた状態での連戦は疲れるか】
【HPもMPもかなり消耗してるはずだしな】
【なにより、力任せ or 部下任せだったはずの戦闘を、しかもたった1人で囲まれた状態で 圧倒的強者だったからこその隙が、ここにあるんだ】
「アレク!」
「はいっ!」
ビビさんとのお話が終わってから、もう10分は続いている、全力での戦い。
お互いに疲労が見えてきているものの、それでも姉弟の素早さは随一。
遠くから覗いているスコープだと追い切れない速度の2人が、おじゃるさんを中心に鏡写しのように――まったくおんなじ動きで、低い姿勢で忍び寄る。
【はやい】
【リリちゃんより動きが俊敏な2人】
【でも、今回も……いや、今回こそ】
「貴様らの攻撃は――――――」
「そうか――よっ!」
「えいっ!」
「な――――」
【!?】
【ふぁっ!?】
【投げた!?】
【決めにきたか】
【あ、なるほど】
――――――ざくざくっ。
これまでは短刀の双剣を両手に構えての二撃離脱だった2人は、けれども今回はそのうち片方ずつをおじゃるさんの顔へ向けて投擲。
それをとっさに両腕でガードし、両腕の手の甲へ剣が刺さったところへ残りの1本ずつが、おじゃるさんの胴を裂く。
相談したわけでもないのに、息を合わせて同時に同じことを。
2人はやっぱり、姉弟なんだ。
「………………………………」
あと、少し。
あともう少し、ダメージを与えてコアを破壊していけば。
今のおじゃるさんなら、きっと降参してくれる。
弾は、あと2つ。
だから僕は、片手をきちゃない袋さんの中へ突っ込み、その後に使えそうなものをまさぐり続けるんだ。