【2巻発売中】TSしたから隠れてダンジョンに潜ってた僕がアイドルたちに身バレして有名配信者になる話。~ヘッドショットロリがダンジョンの秘密に迫る配信~   作:あずももも

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800話 届いた刃と、届かせる矢

「………………………………――――――えーいっ!」

 

るるさんが。

 

僕と無言で意思疎通をした彼女が。

 

体を全部使って、全力で――――――――ぶん投げた。

 

『――――――オォォォォォォォォォォ……!』

 

彼女の、とっておきの相棒を。

 

「――――――――――――――――――!?」

 

けれども、おじゃるさんは魔王さん。

 

ノーネームさんたちに弱められていても、なお最強の生物。

 

だから、反応できる。

 

自分へ向かって回転しながら飛んでくる、刃物へ。

 

「くっ……!」

 

それを、驚きながらもとっさに脚に力を込めて――

 

「おじゃるさんの、回避の癖。姉さんやみんなと、さんざん見せてもらいました」

 

――右斜め後ろへと飛び退いた、座標。

 

だから「このまま」じゃ、るるさんの鎌さんは当たらない。

 

でも。

 

――――――――ちゅいんっ。

 

『オ゛っ!?♥』

 

1本だけ真上へ曲射しておいた矢が――――「その回避地点」へ、振ってきて、さっきやったみたいに鎌さんの刃を弾いて。

 

その刃は回転しながら方向を変え――――――――おじゃるさんの胸元を、

 

「――――――――づぁっ!?」

 

――――深々とえぐった。

 

びしゅっと飛び散る鮮血。

 

これまでとは違って、真っ赤な血が大量に吹き出ている。

 

その衝撃で明確によろけて――膝をつきそうになるも、踏ん張る魔王さん。

 

けれども、

 

 

【魔王】

 

【HP:18%】

 

 

――ぴこん。

 

「ふぅ」

 

とっさの、ことだったけど。

 

「………………………………っ!」

 

こくり。

 

遠くで、肩で息をしながら――親指を掲げていたるるさんへ、僕はうなずいた。

 

「――――まおう」

 

「えいちぴぃ」

「じゅっぱーせんとだい」

 

ノーネームさんたちが、僕の真横で左右から告げる。

 

僕の想像以上の――クリティカルヒットをしたダメージが、致命傷だと告げている。

 

【おおおお】

【おおおおおおお】

【すげぇ】

【なんだ今の】

【いたそう】

【すっごく血が出てる】

 

「……貴様ら……」

 

びしゃ、びしゃ。

 

おじゃるさんの胸元から――人間ならとっくに倒れているはずの生命力が流れ落ちる。

 

――――からん、からん。

 

『オォォォォ……』

 

「……うん、がんばったね」

 

武器を使い果たしたるるさんが、おじゃるさんの後ろへ落ちた鎌さんへ声をかける。

 

『オォォォォ……』

 

「うん。すごかったよ」

 

『ォォ…………』

 

「……かっこ、よかったよ」

 

『ォ…………』

 

『  』

 

るるさんが、静かに座って……「彼」を抱きしめる。

そして彼は――全力を出し切って、満足そうに目を閉じた。

 

【えっ】

【あ……】

【呪いの鎌……さん……?】

【え、そんな】

【るるちゃんに投げてもらってハルちゃんに撃ち抜いてもらったんだ  本望だろうよ】

 

 

【HP:】

 

【17%】

 

 

ぴこん。

 

魔王さんへは、致命傷が入った。

 

「……胸元。心臓のある場所にあった、大きなコア」

 

完全に、砕けてはいない。

けれども――彼女の最大の急所が、半壊以上になっている。

 

「……魔王。確かに私たちは君の急所を見られるから、別の場所にしても無駄ではあるけれど……」

 

姉さんが、構えを完全に解いた。

 

勝負は……決した。

そう、体で言っている。

 

「――――――――ふん」

 

両手で胸を押さえ、袖が深紅に染まるおじゃるさんは――真っ青な顔で、けれども笑う。

 

「世界の支配者たる王が、そのような小細工を弄するとでも?」

 

「……そうだね。うん。君は――正真正銘、この世界の王だよ」

 

「王者は王者として、戦う」

「うん。君は、王様だよ」

 

【魔王……】

【畜生、かっこいいじゃねぇか】

【強いからこそ……か】

【本当、これで降参して……】

 

びしゃっ、びしゃっ。

 

血が、彼女の脚を赤く染める。

 

【血が】

【足元が血だまりどころか血の池に】

【はよ降参して】

【くしまさぁんに治してもらって】

【くしまさぁんのこと好きでしょ? だから早く】

 

「――――――――ああ」

 

 

【HP:】

 

 

「良かろう」

 

びしゃっ、びしゃっ。

 

血が、服から染みて脇を染める。

 

 

【14%】

 

 

「朕は」

 

 

【13%】

 

 

びしゃっ、びしゃっ。

 

おじゃるさんは、静かに目を閉じる。

 

 

「――――――――神々と勇者どもに、敗れた」

 

 

【12%】

 

 

びしゃっ、びしゃっ。

 

そして。

 

 

「認めよう」

 

 

【11%】

 

 

「朕の――――――――」

 

「………………………………」

 

僕は、見た。

 

僕は、知った。

 

僕は、怒った。

 

だから――――――――僕は、残ってる矢を急いで。

 

かちゃん、かちゃん。

 

慌てすぎて何本も取り落としたけれども、そのうちの数本をつがえた。

 

「――――――――ハルちゃん!?」

「ハルさん!?」

「魔王さん、今、軽度でも治癒を――ハルさん!?」

 

みんなの声が聞こえる。

 

けれども、僕は弦と矢を掴んだ指を――――――――

 

【!?】

【ハルちゃん!?】

【待って】

【魔王ちゃん、降参って】

【やめて】

【なんで急に】

【降参だってば】

 

――――――――ひゅんっ。

 

矢の、飛んだ先。

 

そこにはおじゃるさんが居て、

 

【あああああ】

【あああああああ】

【やめてぇぇぇぇぇ】

【降参してる相手に】

【ハルちゃん!?】

【どうして……】

 

「……ふ。お前になら殺されようと――――」

 

『――――――――GUAAAAAAAA!?』

 

「………………………………、は?」

 

おじゃるさんの、真後ろ。

 

鎌さんを抱えた、るるさんの真上。

 

そこに――――――――開こうとしていた、裂け目。

 

慌てていたけれども、ちゃんと狙った矢たちは……確実に、その隙間を貫通した手応えがあった。

 

「ふむ」

 

やっぱり普段の練習。

 

地道な、何千何万回の練習がこういうときに役に立つんだね。

 

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