【2巻発売中】TSしたから隠れてダンジョンに潜ってた僕がアイドルたちに身バレして有名配信者になる話。~ヘッドショットロリがダンジョンの秘密に迫る配信~ 作:あずももも
「……なるほど。気配察知――ハルの、得意分野だね。私も気づかなかったよ。……無粋な輩に」
「むぅ……」
「えんざん、まけた」
【は?】
【え、何何?】
【降参するところだった魔王にハルちゃんが突然】
【矢が飛んでってもうダメって思ったら】
【全部、おじゃるの真上にふわって浮いてって……】
【天井にできてた、裂け目へ……?】
【これは……】
【演算?】
【負けたって】
【え、てことは】
――――――――ぎぎぎぎぎぎ。
矢が命中した「誰か」は悶えながら「外」で落下していく。
けれども、
『――――――――魔王様』
「外から追いかけてきた彼ら」は――――まだまだ、居る。
『遅くなりまして、申し訳ございませぬ』
『ですが』
地面の底から語りかけてくるような、低い声。
それが、僕たちを覆い隠す。
ばり。
ばりばりばりばり。
裂け目が、巨大な爪で引き裂かれていく。
『魔王軍、王直属、近衛』
『女神の妨害を突破せり』
ぎょろり。
巨大な目が――――爬虫類の目が、空に浮いている。
『先ずは、魔力を』
『お戯れにも、程度がございます』
『本体で、よもやそこまで傷つかれて……喪われたら、どうなさる』
――――そこからおじゃるさんへ向けて一直線に流れ込む、魔力。
【9%】
【32%】
【64%】
【96%】
【弱体化――――解除】
【150000%】
【660000000%】
おじゃるさんの傷が、完全に修復される。
人の姿のまま――けれども頭にはツノが、背中には羽が。
おしりには尻尾が――立派なそれらが、復活している。
『魔王様は、世界の覇者でございます』
『我ら全ての竜種の王でございます』
『お戯れは……終いでございます』
『只今、この空間ごと王城へと転移中でございます』
『待機しておりました者共も、総出でお待ち申し上げております』
「………………………………」
すっくと立ち上がった、おじゃるさん。
彼女は、僕を見ながら、丸めていた体を開いていく。
【速報・魔王、降参する】
【朗報・和睦の気配はあった】
【悲報・でも……時間切れ】
【そんな……】
【どうして】
【あとちょっとだったのに】
【いや、もう届いてた 届いてたんだよ】
【でも……魔王の手下たちも、届いちゃった】
【ああ……】
【そうだった 時間は、魔王の味方だったんだ……】
ばりばりばりばり。
天井が、まるで薄い紙みたいに引き裂かれていく。
「まりょく」
「もうむり」
――――――――ぱりんっ。
僕たちを囲んでいた「ダンジョンの天井」が、砕け散る。
「……そんな」
「嘘……」
「……魔王さん」
座り込む、るるさんたち。
火傷を押さえるのも忘れて呆然としているえみさんに、目を伏せる九島さん。
「……アレク。治癒を」
「……はい」
「リリ」
「はい」
ぽうっ。
少し離れたところでは、かつての子供たちがお互いを――強い力ではないけども癒やしの力で、少しずつ痛みを取り除いている。
それだけが、この場で安心できること。
ただ、それだけだ。
「――――――――朕が。朕が……これを、頼んだか」
『申し訳ございませぬ』
『ですが』
『幾ら現存する神族との遊戯とは言え』
『語られようとしておりました言葉は』
『到底許されるものでは、ございません』
『我ら魔族の悲願をお忘れになされませぬよう』
『神々を、その被造物を根絶する』
『そう、幼き頃より繰り返しお教えしてきました』
『魔王様は、我ら全ての王なのでございます』
『その者共を飼育なさる程度ならば問題はございません――が』
『先ほどの言葉は、綴られませぬよう』
【……こいつらか】
【ああ】
【おかしいとは思ってたんだ おじゃる、あんまりにも幼いから】
【だよな】
【数千歳 アルちゃんたちもそれくらいだから、神様とかの上位存在にとってはたいした年月じゃないのかもしれない】
【だから、幼いこと自体は問題じゃない】
【でも】
【もし】
【そんなおじゃるへ】
【吹き込んだ輩が居たら】
【アルちゃんノームちゃん、ノーネームちゃんハルちゃん?、おじゃる――その上の世代の戦い】
【遺恨は残ったはずだけど、魔族が勝った】
【なのに、世界を制覇するために執拗に追い続けた】
【それは】
【誰の、せい?】
「………………………………」
おじゃるさんの目は、僕の目を見つめるまま。
彼女の顔は、僕へ何も感情も情報も伝えてこない。
「……そうだね。君たち魔族としては、そうなるよね」
すとん、と床に腰を下ろした姉さんが、目を閉じて息を吐く。
「時間切れ。それも敗北の条件だ。――リングから、下ろされる時間だよ」
【アルちゃん……】
【おじゃる……】
【いいやつではあるけど、魔王なんだよな】
【立場が1番上でも、背負っているものが】
【ああ……】
【分かっちゃうんだ おじゃるを知ったからこそ、理解できちゃうんだよ】
【こんなことなら知りたくなかったよ 今から俺たちを殺しにくるだろう敵 少なくともその王様だけは、本気で矛を収めようとしてくれてたって】
【あと、数秒あればって】
【ハルちゃんですら間に合わなかったんだ……どの道……】
【これが、結末か】
【ハルちゃんがインターセプトしてくれようとしたけど】
【魔王軍の本拠地?へ連れて行かれてるんだ……もう、だめか】