【2巻発売中】TSしたから隠れてダンジョンに潜ってた僕がアイドルたちに身バレして有名配信者になる話。~ヘッドショットロリがダンジョンの秘密に迫る配信~ 作:あずももも
『魔王様』
『最早そのような醜悪な姿である必要はございませぬ』
『早く、誇り高き我ら竜種――その始祖の、魔の王としての姿へお戻りくださいませ』
『戯れにも、程がございます』
「………………………………」
おじゃるさん。
1秒おきに魔力が膨れ上がっていって――背丈も、その姿になったばかりのように高くなっていて。
今は人間の形を取ってるけれども、その中身は最低でも大陸のサイズ――や、もう天体の一部って質量へと膨らんでいっていて。
『我らの象徴として、勇ましくお美しい姿へ』
『神々の被造物である人間は、神々の玩具。神々そのものならともかく、その見てくれを似せているだけで――中身は下等な虫けらと大差なく、神々を模倣した言葉と手だけを使う存在でございます』
『劣等種族のことなど、疾くお忘れくださいませ』
『玩具に影響されないようにと、あれ程お教えしてきましたのに……事が片付きましたら、少しばかりの御勉強を……』
『魔王様の箱庭の星も、ご自身で滅ぼさせるべきかと。虫籠の中に毒が満ちていたご様子で……』
『手間は掛かろうとも、1匹ずつ潰させたなら……』
彼女へ語りかける、ドラゴンさんたち。
けれど。
「………………………………」
彼女は……僕を見ているだけ。
彼女を育ててきただろう大人じゃなく、出会ったばかりの僕を。
【ドラゴンの……始祖】
【数千年前の大戦の生き残りとか言ってたか】
【ドラゴンたちの中では血統的にも、王か】
【当然だよな ただでさえ由緒正しき王様で、しかも仇敵を滅ぼして世界制覇目前の王様なんだ ハルちゃんたちとの約束なんて、魔王個人ならともかく種族全体で見ちゃったら】
【だけど、翻訳魔法?のおかげで分かったな】
【ああ】
【先代――自分より年上の王族が、ことごとくに神々と戦って討ち死に 残ったのは、判断基準もおぼろげな幼い王女】
【正確には雌雄同体で、気分で性別を変えられるっぽいから】
【ショタよ!!!】
【黙りゃ!!】
【ふぁっ!?】
【草】
【草】
【「黙りゃ」はおなか痛いからやめて】
【シリアスさんはかよわいの!!】
【姉御は静かにしてもろて?】
【で、そんな、たった1人の王族になったおじゃるは】
【教育係を始め、城の大人連中から】
【「英才教育」を受けたと ……普通に人間の社会、現代社会でも起きることが、ドラゴンの中でも起きたか】
【人種とか階級とか 俺たちの世界でも普通にあるから文句は言えないが】
【でも おじゃるは、知ったよ】
【ああ】
【ハルちゃんと、触れ合ってな】
【前にも言ってたんだ 気まぐれとはいっても今のおじゃるの姿の元になった女王さまの居る星を、滅ぼさずにいるって】
【そうだったね】
【やっぱり、元は……】
「……はる」
「きいて」
くいくい、くいくい。
僕の両袖を、黒い翼たちが引っ張ってくる。
「いまは」
「かてない」
「……そうですね」
僕は、弓をゆっくりと床に下ろした。
「僕たちは、満身創痍。おじゃるさんは回復して、外にはたくさんのドラゴンさんたちです。僕だって、今は弓を引いて腕が疲れたし……矢の残りも、もう」
「ん」
「つよかった」
こくこく。
黒髪が、ふわふわと揺れる。
「でも、僕たちは精いっぱいに戦いました。できる限りを尽くして」
「ん、ん」
「がんばった」
【ぶわっ】
【ハルちゃん……】
【なかないで】
【ハルちゃん自身は……穏やかな目をしてるけど】
【そうだよ、がんばったんだよ】
【みんな、がんばったよな】
『もう間もなく、魔王様の統べる城へ』
『我らが、原始の巣へ』
『始原となる星へ』
『我ら種族、その誕生の地へと帰還致します』
『神々と戦い没した我らが祖先の慰霊碑へ』
『少し前に入った連絡に寄りますと……何でも、人間どもと結託した一部の魔族が反乱しているとのことでございます』
『ですがご安心を……彼奴は我ら最強のドラゴンではございませぬ』
『首謀者は淫魔族だとか精霊族だとか……何れにしても脅威たり得ません』
『そこの人間どもと同じく、盛大な式典で余興として嬲り殺しに致しましょう』
『現在、者共が遊技場にて締め上げているとのことです』
『首謀者のみを生け捕りにするよう命じておりまする。多少のやんちゃはございましょうが――何。世界を手中に収めたならば、魔族に至らない魔物は用済み……彼奴らに始末させましょう』
『忌々しき、黒髪の女神たち。その者らの力は、最早皆無――人間どもの魂を、ようやくに食らえるのでございます』
『さぞ美味でございましょう』
たくさんの声が、同時に降ってくる。
たくさんの思惑が、たくさんの欲望が。
――――――けれど。
「………………………………りゃ」
ぽつり。
おじゃるさんが、口を開く。
『魔王様の知らぬ味を、これからは永遠に――――――――』
「……黙りゃ」
ぽつり。
彼女が、「否」と言う。
『恐怖におののく魂は、それはそれはもう絶品でございます』
「黙りゃ」
『ご堪能いただけるで――――――――』
おじゃるさんが、僕から目を外す。
そして――――――――
「――――――――朕の言葉を、無視したな」
ごうっ。
おじゃるさんが、ブレスを吐いた。
それは、これまでとは違う威力で――僕たちは、なんにも見えなくなった。