【2巻発売中】TSしたから隠れてダンジョンに潜ってた僕がアイドルたちに身バレして有名配信者になる話。~ヘッドショットロリがダンジョンの秘密に迫る配信~ 作:あずももも
――――――ごうっ。
「ブレス」。
そう呼ぶには、あまりにも強い光が――光の弓矢とかジャッジメントに近い力が、おじゃるさんから放出される。
けれども。
「きゃっ!?」
「ブレス――――あ、あら……?」
「……熱く、ない……?」
おじゃるさんと近くで戦って何回もその熱に触れたからか、とっさに身構えるえみさんたち。
けれども。
『ぐあああああ!?』
『ま、魔王様……!?』
『何故! 何故、人間どもを守り、我らへ……!?』
『どうか癇癪を――――がぁぁぁぁ!?』
『不味い……魔王様には誰も――――――』
ごうっ、ごうっ。
それから数度の、極太のブレスが空へ放たれる。
「……おじゃるさん」
けれど、僕たちはまぶしいだけで熱くも――ダメージを負うことも、ない。
「ひはかい、おぶじぇくと」
「とけるいりょく」
「でも」
「だいじょぶ」
「ばりあ」
「つよい」
光に照らされ、目を細めている2人が言う。
……本当だ。
僕たちを、この「ダンジョン」そのものを守るような力が――バリアが、張られているんだ。
僕たちへ、僕たちを支えている足元へ。
僕たちへは熱すら感じさせない――放つブレスを完全に打ち消すような力が。
【回復して強くなった魔王が、ハルちゃんたちへじゃなく……味方のはずのドラゴンたちへ、ブレスを……】
【それに、バリアって】
【魔王が……守った?】
【ああ】
【ハルちゃんたちを】
【くしまさぁんたちまで包んで、全員を】
【こんなかっこいい「黙りゃ」って、あるんだな】
【痺れる声だったね】
【本気で怒ってる声 おじゃる……】
「――――――朕は、決めた」
静かに。
「決めたのだ」
けれど、強く。
「朕は、知った。ゆえに、ここで止まると」
しゃらんっ。
「そう決めた。王である朕が、そう、口にした」
頭の上の飾りが、輝いている。
「そう、決めている。それを、貴様らは聞いたはずだ」
おじゃるさんが、彼らに向けて両腕を広げる。
「――――さて。王である朕へ逆らう貴様ら」
姉さんが、穏やかな顔を浮かべている。
おじゃるさんを見て……笑っている。
「逆臣は、粛清せねばならぬ。――それに」
おじゃるさんが……僕を見て、言う。
「――朕の話を聞き、言葉を交わし。朕をたしなめ、引き止めてくれる存在は……此所に居る。これまでに出会えなかった、相手が。ゆえに――貴様らは、要らぬ」
【魔王……】
【お前、まさか】
【途中からは迷ってたもんな 戦い続けるかどうかって】
「人間は、塵芥だと聞いていた。神々に模倣され、神々の思考を真似するだけの能しか無い生物だと。だが――そうでは、なかったぞ」
ちらり。
おじゃるさんの瞳が、るるさんたちを眺める。
【きっと、決戦を始めたあたりで決めていたんだ だって、戦う条件が……あんまりにも優しかったから】
【負けてもハルちゃんたちは いや、きっと……本来するはずだった人類の全滅まで行く前に……って】
【ああ】
【そうだな】
【降参したんだもんな 邪魔されかけたからハルちゃんの矢で邪魔されちゃったけど、負けを認めて】
「朕へ忠言をくれる、信頼できる存在が――戦いで知った相手が、居る」
おじゃるさんの静かに燃える瞳がみんなをひとりひとり見て回って――ふたたびに僕を、見る。
「――――友が、居る」
おじゃるさんの黄色に燃える瞳が、僕を見ている。
「朕にとって、初めての。貴様らのように都合の良いことだけを吹き込み、一度も拳を向け合わない輩ではなく……止めようとしてくれる、友が。女神にも、人間にも」
「――――――……………………」
一瞬、息が止まった。
――――――「友達」。
僕が……おじゃるさんの、友達。
あのおじゃるさんが、あのわがままな子が。
【きょとんってしてるハルちゃん】
【美しい……】
【これが、友情か】
【ああ】
「……だから、言ったでしょ? 拳で、語り合うんだよ。喧嘩をしたら、あとは仲直りするだけなんだ」
ぽつり。
姉さんが、すごく嬉しそうにつぶやく。
【アルちゃん様の言うとおりだったな】
【さすアル】
【本当にな】
【ケンカは、しないといけないんだよな】
【じゃないと、分かり合えないこともあるから】
【手遅れになることもあるけど……それでも】
【女神様は、やっぱり女神様なんだね】
【全力で殴り合って、語り合って そうだよな】
【同じ土俵で、お互いに加減をしつつも全力で戦えば】
【それはもう、友達なんだ】
【女神と、魔王が ……人間が、友達……か】
【だってハルちゃんだよ?】
【そうだな】
【会う人みんなを堕として回る悪女 でも、みんなハルちゃんを好きになって優しくなるんだ】
「――――――したがって」
きゅいんきゅいんきゅいんっ。
おじゃるさんの前に、いくつもの魔法陣が出現する。
それらは……これまで見たことがないくらいに濃密な魔力を抱え込んでいて。
「貴様らは――――もう不要じゃ。我が軍から、放逐する。これは魔王軍総帥であり魔王そのものである、朕の決定。逆らうならば、掛かってこい」
――――ごうっ。
世界が、炎に包まれた。
けれど、僕たちはなんともない。
なんなら――――
「……これは」
「魔力……」
「ん」
「あたたかい」
【おお……】
【ぶわっ】
【泣くのはまだ早いぞ】
【敵、しかも魔王から回復を……】
ふわり、ふわりと。
僕たちの体の中に、枯渇していた何かが流れ込んでくる。
……おじゃるさんのあったかさが、僕たちの中に満ちていくんだ。