【2巻発売中】TSしたから隠れてダンジョンに潜ってた僕がアイドルたちに身バレして有名配信者になる話。~ヘッドショットロリがダンジョンの秘密に迫る配信~ 作:あずももも
「――――――のう。ハル」
おじゃるさんが何度目かに、振り返る。
ぼくの目を、しっかりと見てくる。
「朕は、この瞬間を持って宣言する」
「はい」
今までのどの言葉よりも、ずっと優しく――けれども、力強い声で。
「人間ども――いや。神々の被造物たちよ。全ての種族よ。――――――聞け」
【はい】
【うん】
【聞くよ】
【いろいろ抱えてる世界も多いだろうけど】
【きっとその人たちも、聞いてる】
「朕は――我が魔王軍は」
「はい」
ひとつの、間。
息を吐いて吸って。
「貴様ら女神や人間への全面侵攻を――この瞬間より、停止する」
ひとつ。
「魔王軍の王命――勅命を、我が全ての部下へ発する」
ふたつ。
「魔王たる朕の言葉を、聞け」
みっつ。
ひとつひとつ、噛みしめるように……はっきりと。
「今、この瞬間を持って――我が軍は、先の戦いよりの、神々への復讐を停止した。侵攻中の全世界での戦闘も停止し、独断での攻略は朕への反逆と見なす」
魔王さんが。
魔族の王――彼ら風に言えば、魔族と魔物の王様。
いちばんえらい人が、全世界が見ている前で、宣言した。
「……はい。確かに、聞きました」
僕は、ぽつりと。
けれどもちゃんとその言葉へ――彼女へ確実に届くように、応えた。
「――――私たち神族が4柱、現存する神族全員が聞き届けた。魔王による停戦宣言を」
ゆっくりと立ち上がった姉さんが……魔王さんのブレスが収まり、空白のできた天井の先の空へ向かって声を上げる。
「……君たちの王が、これを正式に口にした。それ以上の戦闘行為は無意味だ――今すぐに私たちを、人々を戦闘から解放せよ! これはかつての支配者たる神族、その末裔としての要請である!」
こんな声、出せたんだ――そう思うような、遠くまで通るようなかっこいい声で。
【おお】
【かっこいい】
【美しい……】
【事実上の女王様だもんな アルちゃん様】
【これは魔王と対になる存在の風格】
【ハルちゃんパパとかママの状態は分からんけど、少なくとも姿を現せる状況にはない ――なら、その子供の中で1番年上で、1番面倒見で】
【1番戦ってきた子が……神々の、トップだよな】
【速報・停戦】
【まさか、本当に……】
【数千年の時を経て、漸くに】
【これは嘘ではないか】
【女神による配信です 嘘でも欺瞞情報でも……ありません】
【私たちの、悲願が】
【我が種族も、絶滅を目前に……だが】
【止まった】
【止まって、くれた】
【滅び去った種族も……末裔は女神により救われるも、一生隠れ潜む生涯かと思われたが】
【ありがとう】
【ありがとう】
【他の世界、他の種族の人たち……】
【人間でも、リリちゃんとこみたいに滅ぼされたところはたくさんある】
【でも】
【それは、今】
【止まったんだ】
【先ずは、矛を収めて そのあとのことは……ゆっくり話し合おう だって、もう敵同士じゃなくなったんだから】
『――――――魔王様がご乱心なされた!』
『未だ庇護を必要とされている幼き魔王様が、敵に拐かされた! 魔王軍全体としての正常な決定ではない!』
おじゃるさんのブレスが散った空間から、叫び声。
『だが既に勅命が発せられた……従うべきでは?』
『放逐されたのは近衛だけ。我らはそうではない』
『ならばどうする?』
『神々の被造物を喰らい切るまで、後少しだったというに……!』
『……もう良いだろう。復讐にも、当に飽きていた』
『我らは、魔王様の命だからと戦っていた。ゆえに、魔王様の命により戦いを終えるべきだ』
『貴様ら! 恥を知れ!』
『龍としての誇りはないのか! 支配種族としての使命はどうなる!』
『……まずは従い、折を見れば良いだろう。再びに教え諭して差し上げるのだ』
『だが、むざむざと……我らが至高の種族が世界を取る寸前だと言うのに』
空で、動揺が広がる。
おじゃるさんの言葉を聞いて静かに頭を垂れるドラゴンさん。
近くの仲間と話し込んでいるドラゴンさん。
『許せん……許せん。神々が、こんなところで』
『我らから安寧を奪い取ろうと』
『醜悪な人間どもを最後の1匹までという夢が』
――明確に敵意を向けている、ドラゴンさん。
「朕は、今まで見逃してきた。朕を守護せし貴様ら城の者が……前線で、無駄な行為を繰り返すのを。朕の命令せし効率的な侵攻計画から逸脱し、征服地を抱え込もうと。何をしようと――朕は、許してきた。朕らの先代よりの悲願と聞いてきたゆえ」
あたたかい魔力。
一気にじゃなく、僕たちへゆっくりと……傷つけないように、少しずつ、あたたかく。
僕たちは、おじゃるさんそのものを分け与えられている。
――――――ぶわっ。
姉さんの、ノーネームさんの……ノームさんの翼が、背中から生える。
くるり、と、それぞれの輪っかが頭の上に浮かび上がる。
「……体が軽くなった。いや、元に戻ったんだね」
「ん」
「かいじょ、まりょくたりなくて」
「むりむり」
「でも、いま、できた」
【おお】
【!!!!】
【生えた!?】
【魔力が……】
【まさか、おじゃるから】
【ノーネームちゃんたちのよわよわにする魔法が解けて、魔力まで……】
【アルちゃんの顔色も良くなって、ケガも治っていってる……!】
体が、ふわりとする感覚。
僕は、「また」――――人間から女神に「戻る」んだ。