【2巻発売中】TSしたから隠れてダンジョンに潜ってた僕がアイドルたちに身バレして有名配信者になる話。~ヘッドショットロリがダンジョンの秘密に迫る配信~ 作:あずももも
「……のーねーむ」
「のーむ」
「……憶えた。ノーネームに、ノーム」
目を閉じて、口の中で転がして。
「ノーネーム、ノーム」
「なに」
「んぅ」
再度――今度は、名前で話しかける。
「時空魔法で、調べられるか。――朕の軍勢が、どの程度離反したのかを。配信とやらであまねく世界を観測しているその力なら、朕の元へ報告が来る前に分かるのではないか」
「ん」
「ちょっとまつ」
目を閉じ、頭の上に高速でぴこぴこぴこぴこ。
目を凝らしてみるけども、どうやら文字は文字でも僕が知らない文字らしい。
いくら翻訳スキル的なもので言葉とか文字が分かっても、さすがに無理な領域のものなのかもね。
「……まおう。んぅ」
「おじゃる」
「……おじゃる。それが、朕の名か……そうか」
目を開けた2人から呼びかけられた魔王さんが、
「――――――これは、こそばゆい……のう」
頬を、赤らめていた。
【 】
【 】
【 】
【 】
【 】
【朗報・おじゃる、かわいい】
【速報・「おじゃる」(ハルちゃん命名)、マジで魔王の名前になる】
【悲報・不意打ちの尊さで避難所の皆様が心臓をやられて集団転移】
【草】
【草】
【心が弱すぎる】
【だってこの流れだもん】
【ああ……】
【表情が乙女なんよ】
【かわいい】
【乙女っていうか……そうだな 誰とも仲良くなれなかった、小学生の子 そんな顔してるよ】
【年相応の顔になってきたな……魔王 いや、おじゃる】
【友情、そして溶けた心 誰だってやられるわ、こんなん】
「……じゅっぱーせんと」
ぽつり。
その言葉で、ふにゃっとしていたおじゃるさんの顔が硬くなる。
「……そうか。全軍の、そこまでが……」
「んぅ」
「ごめん」
黒髪の子たちが、おじゃるさんの顔を見られずに、
「……のこってる、のが」
――――ぴこん。
【積極的魔王残留戦力:10%】
頭を、ふりふり。
すごく気まずい顔をしている。
「………………………………」
おじゃるさんの顔が……笑顔のまま、凍る。
【10%!?】
【てことは9割が離反……?】
【実質ほぼ全軍じゃねぇか】
【えぇ……】
【そこまでするぅ??】
【ウッソだろお前ら おじゃるに従ってる魔王軍なんだろ……?】
【考えてもみろ ドラゴンは最初から支配種族の頂点で、もうじき世界制覇の夢を叶えるところで、人間なんか虫けら扱いしていて、そいつらにそそのかされた女神様と手を取ろうとしているんだぞ 自分たちの王様が、急に心変わりして】
【あー】
【そうだよなぁ……魔族が天下取る寸前なんだもんなぁ】
【悲願とか言ってたもんなぁ】
【数千年……下手したらその前からずっとの因縁への終止符なはずだし】
【種族抜きにしても……まぁ世界制覇目前で止まる理由はないか】
【人間社会でも、古代からえんえん世界制覇を巡る戦いばかりだったもんな】
【それらが止まったのは、どれも敵対勢力が強すぎたからか自壊したから そういう理由がなければ……なぁ】
【ノーネームノームちゃんのダンジョン魔法で何とかぎりっぎり対等に持ち込めただけで、数と質じゃ桁が何個あっても足りないレベルで劣勢なんだもんなぁ……女神様におんぶ抱っこな人間勢力】
【んな限定された戦場で、ドラゴンたちの大切な幼い王女(女王?)が、言いくるめられただけ 大半にとっては本当に「ご乱心」だもんな】
【国益に反するどころじゃないやらかし そら家臣総出で引き止めるために離反するわ】
【さっきの言葉を聞いてる限りは、魔王を利用しつつも力尽くで引き剥がして魔王させ続ける気配はある……でもなぁ】
「……ほとんどは」
「まおう」
「んぅ」
「おじゃる、とめようとしてるだけ」
「でも……」
【なるほど】
【やっぱりか】
【とりあえず、魔王が見捨てられたわけじゃないと】
【土壇場で止めようって言ってる魔王を止めようとしてるだけか】
【ひと安心……でいいのか?】
【王位争いとかないのかは不安だが……】
「……良い。そのような顔をするな、お前たち。ノーム、ノーネームよ」
「「んぅ」」
硬いし、冷たい――けれども、優しい声。
おじゃるさんは、気づかいまでできるようになっている。
これが……成長、なのかな。
「……ハルやアルにやられた……いや、大半がハルか。お前に削られた魔力までは当分回復せぬ」
「……ごめんなさい?」
「良いのだ。ハル、お前が朕を止めてくれた」
謝ってみたけど、小さく微笑むおじゃるさん。
【止めて「くれた」……】
【不思議そうな顔でお顔をかしげてるハルちゃん】
【ハルちゃんはそのままでいいんだよ】
【それな】
【そんなハルちゃんだからこそ……想いが、届いたんだ】
「あのまま何も知らず、人間を滅ぼし――神族であるお前たちを狭い籠に閉じ込めた先には、このような想いも感情も、無かった。じゃから、配下をほとんどに喪おうとも」
おじゃるさんの眉が、へんにゃり。
「朕は……今の方が、ずっと良い。そう、思う」
けれど――――――へんにゃりした分、お口が笑っていた。