【2巻発売中】TSしたから隠れてダンジョンに潜ってた僕がアイドルたちに身バレして有名配信者になる話。~ヘッドショットロリがダンジョンの秘密に迫る配信~ 作:あずももも
「――――――朕の元へ残ってくれた、全ての者に次ぐ」
おじゃるさんの声が、マイクを使ったみたいにぼわぼわしている。
無線とかで仲間の人たちへ語りかけている――そんな感じなんだろう。
「朕は、これより反逆者共を処分する。……安心せよ、巣の中の本体までは手を出さぬ。ほんの千年程度、巣穴で頭を冷やさせるだけよ」
【巣穴?】
【ドラゴンたちの本体っての、その中にまとめてあるっぽい?】
【なるほど】
【共同墓地ならぬ共同巣穴なのか】
【しかし1000年はやべー気がするが】
【時間感覚が違うんだろ なにしろ数千歳(推定)なはずのおじゃるが幼いんだし】
【でも、人間で言えば心臓とか脳をどっかにしまって肉体を遠隔でろろろろろろろろ】
【草】
【表現が生々しくて草】
【SFチックに言えばバックアップを取っといてある程度で良いだろ草】
【リモートってことでいいんじゃね?】
【だからいくらでもリポップできるとか、宇宙空間での戦闘中にさらりと言ってたしな】
【けど、粛清はしないんだな】
【ああ……】
【殺しはしないってだけでとんでもなく優しいよな】
【おじゃるの本質なのかもな 本来の、本質って】
【でも……1割の軍で9割を……とか、できるの……?】
【おじゃるが極端に強い可能性も 仮にも魔王様だし】
【あー】
【あー】
【本体ごと出現したときは星サイズだったしなぁ】
【あのとき、おじゃるだけサイズ感バグってたし】
【魔力を時間経過で補充すれば1人でも充分戦えそうか】
【あるいは、強がり 無理って分かってても……王様としての誇りで……】
【おじゃる……】
【そうであってほしくはないが……もしそうなら……】
【おじゃる それでもな、圧倒的劣勢でも支持してくれる奴らは……少数派でも、居るんだぞ】
【なんなら、ついさっきまで敵対してた俺たちだって】
【ああ】
【ハルちゃんがついてるんだぞ その時点で……絶対に、勝てるよ】
「……無理強いはせぬ。これが、朕の我が儘ということは理解しておる。神々への恨みがある者も多いであろう――なにより、以降は同胞から追われる形となる。数では、負けておる」
静かに、けれどもしっかりした声が響く。
「去る者は去れ。……朕は負けるつもりはないが、負けたならば同胞に食い殺されるやもしれぬ戦い。素直に『魔王軍』へ、行け」
【おじゃる……】
【優しすぎる】
【100%が10%だもん、そりゃあなぁ】
【それでも一言、こう言ってくれるのって優しいと思うんだよ】
【だからこそハルちゃんを好きになったのかもな】
【うん、きっと】
――――ぴこん。
黒髪の上の文字列が、跳ねる。
【:】
【11%】
【15%】
【16%】
【:】
【魔王残存戦力】
【18%】
【20%】
【21%】
【23%】
【24%】
「ん」
「おちついた」
「このくらい」
「みたい」
「……そうか」
おじゃるさんの声が、通常のものに戻る。
「………………………………そうか……」
その声が、ちょっと震えている。
けども、僕たちは気づかないことにするんだ。
【おおおおお】
【おおおおおおおお】
【一気に増えた】
【おじゃるの演説が響いたか】
【一気に24%――4分の1くらいにまで】
【戦力差が1対9から1対3にまで縮まったか】
【すげぇ……】
【戦場全体の勢力的には3倍にまで膨れ上がったな】
【「逃げたければ逃げてもいい」って言ってくれる女王様だぞ? 離反したり中立から味方にもなりたくなるじゃないか】
【そもそもドラゴンたちの王様だからな】
【人望……ドラゴン望?はあったんだな】
【あるいは……「今」生まれたのかもな】
【みんな、見て聞いているんだ……この戦いを、この声を】
【そっか ドラゴンも……魔族も メンタリティーは俺たちと……】
【対話ができるんだもん、種族は違っても……きっと】
【多少は思考回路も違うだろうけど、近いんだろうな】
【だな】
【体のサイズとか形こそ違っても、話し合えてケンカして仲直り アルちゃんが言ったようなことができるんなら……それはもう……】
「……皆の者の意思は、分かった」
かつっ。
「ゆえに――朕は、朕の目指す戦いを続けよう」
かつっ。
おじゃるさんが、再びにぼわっとした声で語りかけながら、僕たちの方へ足を進めてくる。
「朕は……『朕の魔王軍』は、神族――及び人間を、対等な相手とみなし」
かつっ、かつっ。
足音と一緒に、しゃらんしゃらんって、頭の飾りが揺れる。
「ハル、アル」
「はい」
「うん」
それに合わせ、姉さんが僕たちの元へ並ぶ。
「ノーネーム、ノーム」
「ん」
「なに」
2人も、返事する。
――――――かつっ。
背が高くっておしりがおっきくってお胸がはだけていて、両肩がわきの下まで見えていて。
近くに来ても熱くはないけれどもごうごうと燃えている髪の毛、頭の立派なツノ、両脇にはごつい羽にちらりと覗く尻尾。
「……それに」
ふいっと頭を回した彼女が、遠くから見守っているみんなを眺めて。
「チホ。……他の者の名は、後で聞こう」
「…………ええ。そうしてください。きっと、みんな……喜びます。おじゃる……さん」
小さい、けれども通る声でのお返事が、九島さんから返ってくる。
――こんなにも嬉しそうな顔、するんだって笑みを浮かべながら。